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大学の授業の外注化の議論と論点

桜美林大学で授業外注化に関するニュースが流れてきました。この英語科目の外注化については、他のブログでだいぶ前から触れられている所ですが、最近はよくこのような話を聞くようになりました。

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それでは授業外注化は何が問題なのでしょうか?もしくは大学は何故、外注化を進めたいのでしょうか。ニュースで出てくるのは、労働者側からの記事が多いですが、単に雇用の話だけではありません。そこで提起という意味でいくつか論点を書いてみました。

なお、同業者のブロガーの方は10年以上前に触れており、この議論はずっと続いている事が分かります。 

high190.hatenablog.com

大学の授業の原則

大学は、大学設置基準において次のように定められています。

 (教育課程の編成方針)

第十九条 大学は、当該大学、学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする。

当然ですが、大学が学部等の教育目標達成のためには科目を体系的に置き、自らが授業科目を開設するのが原則です。

そして今回の英語の外注化の議論は、大学の正課内の授業を外注化することにあります。

またこの議論に関して、平成28年1月20日に「大学等における英語授業の外部化に関する質問主意書」が出され、次の質問がされています。(下記一部抜粋)

大学の英語教育において、形の上では大学の専任教員が英語の授業を受け持ち、シラバスを作成し、授業を行い、単位を付与しているが、実際には、当該教員は授業を行っておらず、大学と業者との請負契約により、大学の非常勤講師でもない業者から派遣された外国人が英語の授業を行い、英語の単位付与が行われている例がみられる。

またこの質問に関する該当する答弁としては下記になります。

一般論としては、大学が単位を授与するために開設する授業科目の授業については、学長に統督された当該授業科目を担当する教員(以下「担当教員」という。)が実施することが原則であり、大学が担当教員以外の者を活用する場合には、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)、労働者派遣法等の関係法令の規定に則して実施されることが求められる。

非常勤教員であれば、学長に統督されていると判断できますが、企業が英語の授業の運営を請け負った場合は学長に総督されているとは言えない、また学長が指揮命令をすることは出来ないと考えられるわけです。

 

大学の英語の外注化に関する労働者側の立場

この英語科目の外注化については、労働者側から雇い止めや解雇についての訴えがニュースやサイトなどで目にする事があります。

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大学の英語科目や情報科目などは、大学の専任教員より非常勤教員の割合が大きい大学が殆どです。そこで英語科目が企業に外注化されるということは、非常勤教員が授業科目を担当しない可能性があります。

この辺りは、大学が説明責任を果たしていないとかありますが、雇用というのは重大な問題であり、大学側も真摯な対応は必要です。

 

大学側の教育と経営

英語の外注化は経営的判断、人件費抑制からが理由であると主張する意見も目にします。値段自体はどちらが安いかは分かりませんが、人件費で処理するのか、教育経費で処理するのかといった違いはあるでしょう。

また大学として英語科目をどのように考えるかといった観点もこの問題を考えるうえで必要です。

近年、大学の英語科目でよく課題として聞くのは、教員によって到達目標や授業内容がバラバラであるということです。

例えば、1年生の前期の必修となる英語の授業で、プレイスメントテストを行って英語の実力で英語の授業クラスを分けているところはよくあります。これは大学としてクラス別に成績評価をどう考えるかといった課題がありますが、それよりも英語の授業がコミュニケーションを軸としたもの、英米文学を軸としたものなど、教員によって授業内容が異なるといった例を聞きます。授業内容が異なっていてもいいという考えもありますが、大学としては示している教育目標や各方針と合っているかは精査しなければなりません。

ただ1年次の英語科目は大学側がクラス指定をするケースもあり、授業内容が大きく異なると、学生によってはGPAなどに不利益が出る可能性も否定できません。 

大学の共通教養教育

最近は〇〇スタンダードや〇〇大学教養というように大学共通の教養教育を整理し、行っていく大学が見受けられます。この点も踏まえると、実力別に英語クラス分けをしていても、英語をマネジメント出来る方策が必要と考えているのかもしれません。

おそらく英語の外注化は英語のマネジメントをするのに最短ルートなのかもしれません。ただしこれは大学教育として最適解かどうかは別問題ではあります。