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実務家教員になりたいと考える、優れた実務経験を持つ人に知っていただきたい事

第 198 回通常国会で「大学等における修学の支援に関する法律」が可決されました。一部では高等教育無償化法と報道され、誤解を生む内容となっておりますが、詳細は別で調べてみて下さい。

さて、この法律の内容、つまり学生が支援を受けられるようになるには大学側に要件があります。

・ 実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学の場合、124単位)の1割以上、配置されていること
・ 法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること
・ 厳格かつ適正な成績管理を実施・公表していること
・ 財務諸表等の情報・教育活動に係る情報を開示している

これを見ると、各大学では実務経験のある教員が必要になり、これから各大学で募集が行われ、実務家教員になれるチャンスが増えたと思う事もあるかもしれません。でもまずは大学職員として知っておいていただきたい事があります。

なお本内容は、筆者や聞いた話で構成されておりますので、全ての大学に当てはまるとは限りません。

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直属の部下はいない

殆どの大学には貴方の直属の部下はいません。以前、数十名の部下がいた人が教員になった際に、かなりのギャップがあったと言っておられました。

もちろん教育支援や研究支援、総務関連など様々な手続きなどは然るべき部署や担当者がおります。例えば授業に必要なプリントを、期日までに講師室に依頼すれば印刷をします。

ただ、たまに実務家教員の方で、大学事務局が自分の部下と勘違いしている人もおりまして、先に教室にいって機材のセットアップをして欲しいとか、様々な依頼をする方がいますが、そういうのは原則お断りされます。

もし企業等で部下に命ずるのと同様に「あれやって欲しい、これやって欲しい」という場合はポケットマネーで秘書を雇う事も検討が必要です。

 

大学教員は一国の主かと思いきや、サラリーマンの事もある

大学教員になったから、自分は一国一城の主と想像している実務家の方がいらっしゃいいます。ただ大学は組織であるという点は忘れないでいただきたいです。また自分が学生の頃のイメージと今の大学は全く違います。

 

実務家教員だからといって、論文を書く事は避けられない

大学によっては、年間1本以上の論文といったオブリゲーションがあります。実務家教員だからといって、このオブリゲーションが課せられる事もあります。また大学の人事制度等によっては、論文や単著が求められるケースもあります。

たまに業績があるとおっしゃる方の研究業績書を見ると、自分が話をした記録(雑誌の対談記事)だったり、ちょっと論文だろうかと思うもの、大学の設置等の審査に出したらスパ~んとはねられるだろうなと思うものが論文の所にあったりします。

 

科目は原則15回、自分で教える事が求められる。

15回の授業の中で何回も外から人を読んで講演を聞く授業を行う事がありました。ここで大学として問題となったのは、15回の授業のうち、殆どの回で人を呼んで話をしてもらうのは、授業を教えるのではなく、単なるコーディネーターではないかという事です。

 

そもそも実務経験だけでは中々教員にはなりにくい

実務経験が〇年以上あるから、大学教員としての資格は満たしているだろうと、優れた実務経験を持っている人は考えるかもしれません。

学士のみで大学教員になれたのは少し前の話で、今は修士以上は求めていますし、きちんと論文、特に単著がある事を求めています。雑誌の連載がn回あるといっても、それは業績としてカウントしない事もあります。

原則、応募のスタートは修士以上、さらに論文等を書いている事からです。

 

修学の支援に関する法律に基づく実務経験の教員は既に沢山いる

今回の法令で、大学に求められているのは実務経験のある教員で、実務経験はn年以上とか、実務から離れてn年以内とかといった条件がありません。

つまり、既に大学の教員や非常勤の先生で実務経験が少しでもあって、科目と関連があれば該当します。そうすると124単位の1割どころか、もっと上の数字がたたき出されます。

現時点では、この法律の観点からいって、かなりの大学が実務家教員をすぐには必要としていないのではないでしょうか