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大学の実務家教員の育成プログラムに思う「淡い期待と予想」

2018年、実務家教員の議論や話題がかなり出てきています。

特にリカレント教育や学費無償化の議論の中で実務家教員のキーワードが見られています。

 <過去関連記事>

www.daigaku23.com

また、2040 年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申(案))でも実務家教員について触れられています。

質の高い実務家教員を確保するため、実務家教員の育成プログラムを開発・実施するとともに、修了者の情報にかかる共有の在り方を検討する。 

社会のニーズを踏まえた教育を幅広く展開させることができるよう、実務経験を有する者の大学教育への参画を促すため、専任教員として実務家教員を配置することができる旨を、大学設置基準上、確認的に規定する。

実務家教員の育成プログラムの開発と実施という文言がありましたので、文部科学省の教育関係共同利用拠点の1つに組み込まれるのではないかと考えておりました。

<参考>

教育関係共同利用拠点制度について:文部科学省

教育関係共同利用拠点の認定について :文部科学省

ただ今年度、学校法人先端教育機構が実務家教員の育成プログラムを準備していると公表しています。

 

実務家教員の育成プログラムについて

学校法人先端教育機構では、実務家教員が強く求められている事に合わせて、実務家教員養成課程とリクルーティングを行うそうです。これは「2040 年に向けた高等教育のグランドデザイン」を受けたものでしょう。

www.sentankyo.ac.jp

実務家教員養成課程の概要

この養成課程は、現在募集しているものは、対象を「大学、専門学校、各種学校等の教員を目指す者」とし、週1日2コマ×15週で2019年4月から始まるそうです。

養成課程のシラバスを見ると、教員調書の書き方、研究方法、教育方法、制度論や制度理解について行うとの事です。

身分は「研修員」とのことですが、その在籍料、つまり講義料は285,000円。これ税抜なので、税金入れると307,800円…。印象として凄い高い。いや、職を得られると考えたら安いものなのでしょうか。

募集人員は80名なので、ちょっとしたお金が動きますね。

そして公募要領の最後にはこんな文章があります。

(1)所定の課程を修了した者には、修了証書を授与する。
(2)本課程を修了した者全員が教員に就任するものを保証するものではない。

当然ですが、就職保証は出来ないですよね。あとおそらく実務家教員の求人はテニュアで定年までの採用でなくて、殆どが任期付だと推察しています。

 ※このプログラム等について凄いなと思うのが、2018年11月13日で「実務家教員」でGoogle検索するとリスティング広告が出ます。受講料の中でどれぐらい広告費を見込んでいるのでしょう。

学校・大学と実務家教員とのマッチングサービス

www.sentankyo.ac.jp

ここでは、実務家教員のマッチングサービスも検討しているそうです。

サイトには次のように説明されています。

全国の大学・大学院等の教育機関の、実務家教員や研究者教員の求人情報に特化したサービスを準備中です。
現在、教員の公募情報は各教育機関のホームページに掲載されていますが、教員にとってその情報へのアクセスは容易ではなく、日々の情報に埋もれてしまいます。

 えっとJREC-IN Portalではダメでしょうか?まあ実務家教員に特化したサービスはもしかしたら供給はあるかもしれません。(需要は分かりません)

 

実務家教員養成課程は有効か?

本学には実務を経験した教員は、教育(教職)系の学科をはじめ、人文社会学系の教育研究組織に実務家教員はたくさんいらっしゃいます。

また私が大学設置業務や人事なども見る中で思うのは、本学は実務家教員であっても、近年は修士以上の学位は求めていますし、教育研究業績書で論文や文書の実績をかなり重要視しています。

実務が長いからといって、単に働いているだけの経験ではよほど特殊な仕事でない限り教員として採用はしていません。

 

仮に企業での実務が30年ある、業績は実務のみという人から実務家教員として応募したいと言われた場合、専任の教授の採用ではなく、就職支援センターに配属して相談業務に従事する傍ら、兼任としてキャリアに関する科目を数科目持ってもらうといった感じになるだろうなと思っています。

大学設置基準に専任の実務家教員を入れろとあれば、大学は特任で採用するでしょう。でも教育課程の〇割は実務家教員が担当という文言であれば、今いる教員で実務経験が一定以上ある人を実務家教員とみなして、それで「本学の科目の〇割は実務家教員が担当しています」とするだろうなと容易に想像できます。

 

この育成プログラムは厳しい一言に言い換えると実務家教員の「就活塾」みたいという印象です。ただ注目すべきプログラムでもありますので次年度以降のプログラムにどれぐらいの人が集まるかは注目ですね。