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文部科学省中教審2040年グランドデザイン答申の「地域連携プラットフォーム(仮称)」の課題

2018年に生まれた子どもたちが、小学校・中学校・高等学校から大学へ進学し、大学を卒業する年で「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」が公表されました。

 

今回の答申の略称は「2040答申」か「府ランドデザイン答申」もしくは「グラデザ答申」といったのになるのでしょうか。

 

さて、今回の答申は実は目新しい事はありません。ただ地方の大学で働く立場としては「地域連携プラットフォーム(仮称)」に引っかかるものがあります。

 

答申で言われている「地域で描く(高等教育の)将来像」

「地域連携プラットフォーム(仮称)」はこの答申の中では何回も登場します。例えばリカレント教育の文脈の中で

「地域連携プラットフォーム(仮称)」や「大学等連携推進法人(仮称)」などの仕
組みも活用しつつ、複数の高等教育機関が連携してリカレント・プログラムを提供することも併せて推進すべきである。

 ガバナンスの文脈の中で

学外の教員や実務家など多様な人的資源を活用し、多様な年齢層の多様なニーズを持つ学生を受け入れていくためには、高等教育機関は、他の機関や、関係する産業界、地方公共団体などと連携し、必要とされる教育研究分野、求人の状況、教員や学生の相互交流などについて、恒常的に意思疎通を図るような体制として「地域連携プラットフォーム(仮称)」を構築することが必要である。

またガバナンスの具体的な方策として、「複数の高等教育機関、産業界、地方公共団体との恒常的な連携体制の構築」の中で

地域における高等教育のグランドデザインの策定をはじめ、地域の高等教育に積極的に関わるという観点から、複数の高等教育機関と地方公共団体、産業界等とが恒常的に連携を行うための体制として「地域連携プラットフォーム(仮称)」の構築を進めるとともに、「地域連携プラットフォーム(仮称)」において議論すべき事項等について、国による「ガイドライン」を策定する。

これをまとめると次のような事が「地域連携プラットフォーム(仮称)」に求められています。

・地域でリカレント教育の推進
・地域で学外の教員などの資源を活用し、教育研究のみならず、就職や相互交流につて恒常的推進する
・大学のみならず、地方公共団体や産業界と連携を行う事
 
ただ、これを見ると平成29年度から登場している私立大学等改革総合支援事業のプラットフォームと殆ど変わっていません。
 

私立大学等改革総合支援事業のタイプ5のプラットフォーム

平成30年度の私立大学等改革総合支援事業のプラットフォームは、構成要件として、例えば次が挙げられています。

  • 複数の法人が設置する2つ以上の大学等で構成
  • 特定の地域の大学の総数の内、75%以上の大学が参加
  • 特定の地域の地方団体が1つ以上参画している
  • 取りまとめ(幹事校)は、特定の地域内に所在する大学

 

プラットフォームはスタートアップ型と発展型の区分に分かれていますが、スタートアップ型をみると、例えば次の事が求められて=設問として点数化されています。

  • 特手の地域の自治体と産業界が参加するプラットフォームの意思決定体制の整備
  • プラットフォームの大学等と特定の地域の自治体と包括連携協定の締結と協議
  • 特定の産業界との間で包括連携協定の締結
  • プラットフォームの大学間で定期的な協議
  • プラットフォームの中長期計画策定・実施の体制整備
  • 自治体からの支援
  • 産業界からの支援
  • 特定の地域の高等教育の現状及び課題について分析し、公表
  • 学術分野マップの作成・公表
  • 特定の地域の高等教育のビジョン・目標を公表
  • 中長期計画の策定とロードマップの策定
  • 教育政策や教育のあり方の協議
  • 単位互換の取組の実施
  • 共同でFDやSDといった研修を企画
  • 地域課題のための共同研究
  • 施設・設備の共同利用
  • 共同で学生募集活動
  • 共同の公開講座の企画・実施
  • 社会人のためのキャリア形成のためのプログラム
  • 就職促進の取組み
  • 地域のリスクマネジメント
  • 大学事務の共同実施

これらを見ると既にリカレント教育にも含まれる公開講座や社会人向けのプログラム、また共同の就職やFDやSDなどの交流、地方自治体や産業界との連携が既に提示されています。グランドデザイン答申で指摘されていても、実は私立大学等改革総合支援事業のタイプ5では既に設問として掲載されているものが殆どであることが分かります。

 

地域連携プラットフォーム(仮称)」の課題

私立大学等改革総合支援事業では既に昨年度からプラットフォーム構築、もしくは既存の大学コンソーシアムを活かして、取り組みを進めている地域もあるでしょう。

<参考>

平成29年度プラットフォーム選定校

ただ今回の答申には、プラットフォームのいくつかの懸念や課題を鑑みて、いくつか気になる点や課題があるなと考えています。

産業形態が一極集中型から遠隔分散型へと転換する想定の中では、地方における高い能力を持った人材の育成に期待がかかっている。これは教育界だけの課題ではなく、産業界を含めた地方そのものの発展とも密接に関連する課題である。そういう意味では、高等教育の将来像を国が示すだけではなく、それぞれの地域において、高等教育機関が産業界や地方公共団体を巻き込んで、それぞれの将来像となる地域の高等教育のグランドデザインが議論されるべき時代を迎えていると考えられる。

まず高等教育機関が産業界や地方公共団体を巻き込むとあります。高等教育機関とあるからには、特定の地域にある複数の大学と解釈していいと思いますが、そもそも募集活動が厳しい地域で一緒に仲良くやりましょうなんて絵空事・夢物語ですよ。

みんな、自分たちは何とか生き残れるように必死です。そこで「みんなで手を取り合って、自治体や産業界と将来どうするか考えようね」と言っても、目先の学生の確保や経営の健全化が最優先です。

 

また地方公共団体や産業界を巻き込むといっても、先方も何かメリットがないと動きません。

「文部科学省がプラットフォームを作れと言っているので協力してくれませんか?」といっても、産業界からしたら「うちは文部科学省と関係ありません。また弊社の何の益になりますか?」と言うでしょう。

地方公共団体だって、税金で運営されている以上は説明責任がありますし、プラットフォームに参画する事によってどのようなメリットがあるかを予め明示しておかないといけないでしょう。

また連携で何かをやるというのは、それぞれの利益代表者が交渉するので、最初はかなり大変です。例えば共同のリカレント教育といっても、どこが主となるのか、負担はどうするかなどを決めるだけでも一苦労でしょう。

 

プラットフォーム自体には大学の連携統合という裏目的もあるかもしれません。でも、大学間の連携をするだけでも現場はかなり大変です。もし今後、答申に基づいてプラットフォームを進めるのあれば、地方公共団体や産業界にはどのような益があるかも国は示す必要があります。それも地域の高等教育機関で考える事と任せたら、単なる緩やかな大学連携で終わってしまう可能性は高いかなと思います。 (そもそも大学連携でさえ、ある事業の緩やかな強制力を持たせて学内で事業を進めるといった事ぐらいにしかならないかなと思っています)