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福祉系大学は定員割れに陥っているのか

東京福祉大学で多くの留学生の所在がつかめないという事が話題になりました。これを受けて、文部科学省から大学や高等専門学校へ向けて「外国人留学生の適切な受入れ及び在籍管理等について(通知)」が4月1日付でも出されています。

またこの話題については、大学ジャーナリストの石渡氏から記事が出ており、関連の記事の中で一番分かりやすい記事でした。

news.yahoo.co.jp

さて、この東京福祉大学のニュースについて1つ気になったものがあります。

blogos.com

ほっとプラス代表理事の藤田氏によるこの記事ですが、「社会福祉系大学、学部の乱立」や「社会福祉系大学、学部の統廃合」などの見出しが出ています。この記事で気になる主張として、次があります。

  • 全国各地の新設の社会福祉系大学、学部が養成課程の経営、運営に苦しんでいる
  • 社会福祉系大学の人気がなく、定員割れに陥っている大学や学部が多い
  • 介護福祉士養成課程の大学、学部、専門学校は壊滅的な状況

また「福祉を名前に入れて、そこを主軸に大学運営してきた新設校は大学経営が成り立ちにくく、必死に学生を集めなければ利潤を得られなくなることが容易に予想される」ともあります。

では実際に福祉系大学は定員割れになって苦しんでいるのでしょうか?今回はこの点をクエスチョンとして、2018年度の各大学が情報公開している学生数等の数値をもとに定員割れになっているかどうかを見てみます。

 

福祉系大学と今回用いたデータ

福祉系大学(あるいは福祉大学)と言っても、中々定義が難しく、社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士を取れる学部・学科があればいいのか、大学の学部学科構成の軸が(大学全体の収容定員の中で福祉系学部学科が占める割合が大きければ)福祉系大学といっていいのか、そのあたりは曖昧です。

Wikipediaには「福祉大学」の定義がありますが、この定義は今回は横においておきます。本記事では福祉系大学を福祉系大学経営者協議会に加盟している大学とします。今回はこの加盟大学のデータを見てみます。

用いたデータ

今回使用したデータは、収容定員の充足率と入学定員の充足率です。なお入学定員は、編入や通信等については除きました。

データは各大学の情報公開から引っ張ってきていますが、一部足りない情報については大学ポートレートを用いて補完しました。

なお、日本社会福祉事業大学だけは(2019年4月14日時点で)「入学者数、収容定員、卒業(修了)者数、進学者数、就職者数」は2017年5月1日時点までのデータが公開されており、2018年のデータが公開されていない為、2017年のデータを使っています。

また示すのは大学全体の収容定員充足率と入学定員充足率です。収容定員充足率は大学全体の収容定員と学生数(編入等含む)、入学定員充足率は入学定員とその年に入学した学生です。なお1年次(生)としないのは留年等があった場合、入学者数=1年次数とならない場合が考えられるためです。

また福祉系の学部学科の充足率まで示せればいいのですが、福祉系学部といっても「看護と福祉」という組み合わせがあったりと、福祉単科ではない学部同士を単純に比較は出来ないと思いますので今回は大学全体の数字のみを比較対象とします。

福祉系大学の収容定員充足率と入学定員充足率

ここでは設立順と大学規模で実際に福祉系大学は定員割れはしているのかどうかを表にしたのを見てみます。

設立年順の収容定員充足率と入学定員充足率

福祉系大学の収容定員充足率と入学定員充足率を一覧にまとめました。なお、分かりやすいように設立年の若い順から並べています。

  設立年 収容定員充足率 入学定員充足率
静岡福祉大学 2003 0.77 0.75
群馬医療福祉大学 2002 1.04 0.99
田園調布学園大学 2001 0.90 1.02
静岡英和学院大学 2001 0.64 0.67
大阪人間科学大学 2000 0.67 0.87
金城大学 1999 0.94 0.99
長崎国際大学 1999 1.05 1.10
広島国際大学 1997 0.98 1.00
関西福祉科学大学 1996 0.97 0.91
関西福祉大学 1996 1.03 1.03
国際医療福祉大学 1994 1.04 1.02
兵庫大学 1994 0.71 0.76
聖隷クリストファー大学 1991 0.97 0.99
文京学院大学 1990 1.00 1.10
北海道医療大学 1974 0.98 0.96
徳山大学 1971 0.94 1.06
長野大学 1966 1.05 1.11
中部学院大学 1966 0.90 1.07
淑徳大学 1965 1.01 1.06
ルーテル学院大学 1964 0.87 1.00
北星学園大学 1962 1.16 1.14
東北福祉大学 1962 1.14 1.16
日本社会事業大学 1958 1.30 1.21
熊本学園大学 1954 0.94 1.05
日本福祉大学 1953 0.94 1.05
同朋大学 1950 0.93 1.02


これらを見ると2000年あたりが充足率の境目の印象があります。

なお、私個人としては近年の入学定員超過の厳格化の影響で収容定員は1倍を切るのは当然であるとも思います。(入学定員が1倍であるとすると、退学や除籍がどうしても数パーセントはあるとみられます。そうすると大学全体の学生数が収容定員以下になり、収容定員充足率は1倍以下になる事は往々にしてあるでしょう)

そして、さすが日本社会福祉事業大学は収容定員充足率が1.3倍となっていて強気ですね。

大学規模別の収容定員充足率と入学定員充足率

次は大学規模別の収容定員充足率と入学定員充足率です。今回対象としている大学は、中規模大学や小規模大学が殆どです。

  収容定員充足率 入学定員充足率 収容定員
国際医療福祉大学 1.04 1.02 7,240
日本福祉大学 0.94 1.05 5,760
熊本学園大学 0.94 1.05 5,330
東北福祉大学 1.14 1.16 5,200
文京学院大学 1.00 1.10 4,970
淑徳大学 1.01 1.06 4,665
広島国際大学 0.98 1.00 4,170
北星学園大学 1.16 1.14 3,350
北海道医療大学 0.98 0.96 3,310
関西福祉科学大学 0.97 0.91 2,570
長崎国際大学 1.05 1.10 2,160
大阪人間科学大学 0.67 0.87 2,060
兵庫大学 0.71 0.76 1,694
中部学院大学 0.90 1.07 1,650
聖隷クリストファー大学 0.97 0.99 1,430
長野大学 1.05 1.11 1,410
金城大学 0.94 0.99 1,340
日本社会事業大学 1.30 1.21 1,320
田園調布学園大学 0.90 1.02 1,200
関西福祉大学 1.03 1.03 1,155
徳山大学 0.94 1.06 1,120
同朋大学 0.93 1.02 1,060
静岡英和学院大学 0.64 0.67 1,020
静岡福祉大学 0.77 0.75 950
群馬医療福祉大学 1.04 0.99 930
ルーテル学院大学 0.87 1.00 400

こちらも概観すると収容定員2,000人あたりが定員充足率の境目でしょうか。もちろん公立大学になった長野大学や関西福祉大学のように充足している大学もあります。

福祉系大学の状況について

福祉系大学の充足率を算出する前はもっと多くの大学の充足率は悪いと考えていましたが、実際はそうでもないなという印象が強いです。大学によって学部構成が違いますし、学費も違うので、この数字(学生数)になったら経営が厳しいというラインは大学によって異なります。

それでも(今回の定義とした福祉系大学限定の話ですが)「日本の福祉系大学は人気がなく、定員割れに陥っている大学が多い」とは決して言えないとも感じます。

なお介護福祉士養成大学連絡協議会の加盟大学の情報をもとに介護福祉士課程の充足率を調べようと思いましたが、①専攻やコースだと公開情報では、各コース等の充足率を出しにくい、②大学の場合、取れる資格が介護福祉士だけではなく、保育士などもあるため、単純に介護福祉士の考察は出来ないといった理由から見送りました。(ただ短大の介護福祉士課程は、いくつかの短大の状況を聞いていますがかなり苦戦したようです)