中央教育審議会が平成26年12月に出した「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)(中教審第177号)」から、高校や大学は高大接続改革をどうしようかと試行錯誤しながら、もしくは試行錯誤すらどうしようかと考えている所もあるでしょう。
一方、私立等改革総合支援事業では、高大連携についての取組の実施の有無が問われています。例えば、①合同授業や出前授業、②高校や教育委員会と定期的な協議、③教職員の人事交流や合同研修が挙げられます。
高校と大学は高大接続改革と同時に高大連携も引き続き行っています。本記事では現状の高大連携について整理を試みます。
高大接続改革と高大連携
まずは高大接続改革と高大連携について、定義について整理をします。
高大接続改革
高大接続改革は「高等学校教育、大学教育及びそれらを接続する大学入学者選抜の抜本的な改革」です。詳細は高大接続答申にありますが、今回は答申を受けて策定された計画について見ていきます。
新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)(中教審第177号):文部科学省
さて、答申を受けた高大接続改革実行プランには高大接続改革について大きく4つの項目を示しています。
●各大学の個別選抜の改革
・個別選抜改革を推進するための法令改正
・大学入学者選抜実施要項の見直し
・アドミッション・ポリシーの明確化
・認証評価等の推進
・財政措置●高等学校基礎学力テスト(仮称)および大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の実施
●高等学校教育の改革
●大学教育改革
<上記の関連リンク>
高大連携
高大連携についてですが、高大接続改革が審議される以前、平成17年度の「大学への早期入学及び高等学校・大学間の接続の改善に関する協議会」の報告書「報告書 -一人一人の個性を伸ばす教育を目指して-」を見てみます。
この報告書では「 高等学校と大学との接続における一人一人の能力を伸ばすための連携」の為に、連携強化の在り方が示されています。いくつか報告書から抜粋してみます。
・高等学校教員と大学教員の相互理解を促進していくためには、高等学校教員と大学教員の交流・連携ネットワークが様々な形で構築されることが重要である。
・高大連携を効果的に進めていくためには、高等学校教員・大学教員が随時適切な情報等を入手していくことが重要であることに鑑み、高等学校教員を対象とした各種研修、大学教員を対象としたFD(ファカルティ・ディベロップメント)のプログラムに、それぞれ大学教員・高等学校教員の参加を得ながら、最新の高大連携に関連した内容を加えること等も効果的と考えられる。
・個々の高等学校と大学との連携を仲介する機能を果たす組織についての検討も重要である。これらの組織の存在は、連携の強化にあたり効果的と考えられ、例えば地域における大学コンソーシアム等の組織が、これらの機能を果たしていくことも期待される。
・双方向の連携を構築することにより、高等学校側は大学レベルの教育研究資源の提供を受けることができる一方、大学側も初年次(1年次)教育を進める上で高等学校側の知見の提供を受けることができる。
高大連携では、ネットワークを構築し、例えば相互の研修会の参加などが考えられます。この高大連携の成果として、高校側のメリットは大学側の教育研究資源の活用、大学側のメリットは教育を進める上での高校側の知見が得られるそうです。
大学側のメリットは綺麗に書いてあるなと思いますが、このような報告書に書けないものとして、高校生の早期囲い込みや大学を知ってもらう広報的な一面がある大学もあるでしょう。
では生徒としてはどうなのかというと、この報告書にあるように個人の能力を伸ばす高大連携とする必要があるでしょうし、さらには自身のキャリアに資するものであるといいと思います。
なお、本報告書には高大連携を進めるうえでの留意点も掲載されています。特に高校生の単位認定について詳細に記載されています。
高大連携の取組事例~県などのHPから~
「大学への早期入学及び高等学校・大学間の接続の改善に関する協議会」の報告書「報告書 -一人一人の個性を伸ばす教育を目指して-」に高大接続改革の事例が掲載されています。
ただ平成18年度までと10年以上前の事例となっていますので、最近の事例のリンクを取りまとめました。今回、まとめたのは都道府県のHP(もしくはリンクされている)高大接続の事例が掲載されているページです。都道府県によっては高大連携ではなく、地域連携や大学連携として掲載しているケースもあります。
※地域連携の場合は、地域連携事例集の一部分のみに高大連携が掲載
なお、高大連携の計画書や評価書などは省略し、事例等を掲載しているリンクとしています。また都道府県のHPではなく、地域のコンソーシアムのHPに掲載されている場合は、同様に取り扱いました。
都道府県のHPから見る高大連携事例
各都道府県のHPの事例を見て、まとめるとこんな事例が見られました。
- 高校の大学見学受入れ
- 高校への出張授業
- 単位付与型の講義の実施や科目等履修生度※当該生徒が高校卒業後に大学に入学した場合に、その単位を卒業単位として認定
- 大学の公開講座の高校生への開放(高校生の受講料を一般参加者より安く設定)
- 県の高校(例:学校長協会)との連絡会議の実施
- 高校の教員との懇談会
- 高校生向けの教育プログラムの実施
- 高校生対象のコンクールの開催
- 大学設備の貸出(例えば実験装置やスポーツ施設など)
- 大学図書館の利用
- 大学生による学習支援や各種指導
教職員の派遣、大学の講座や授業を受講、施設や器具等の貸出、学生による高校生への指導といったものが殆どです。
各都道府県のHPのリンク
ここから各都道府県の高大連携等の該当ページのリンクです。少し調査しても、該当のページが見つからなかった都道府県は入れていません。 近年の事例が分かるもののみリンクをしています。
また県のHPでなくとも、「地名 高大連携」で検索すると、各大学の高大連携のページがヒットしますが、あまりにページ数が多いので今回は除いています。
全ての都道府県で、高大連携や大学・連携で検索してみましたが見やすいのは千葉県の事例集、また愛知県のHPも特色がある紹介ですね。
東北
岩手県
秋田県
宮城県
福島県
大学等高等教育機関との連携・協力事業について掲載しました。 - 福島県ホームページ
関東
茨城県
神奈川県
千葉県
埼玉県
中部地方
新潟県(事例は掲載なし)
富山県
http://www.pref.toyama.jp/cms_pfile/00017848/01005043.pdf
静岡県(公益社団法人ふじのくに地域・大学コンソーシアム)
http://www.fujinokuni-consortium.or.jp/introduction/course01/course01_4/
愛知県
岐阜県(ネットワーク大学コンソーシアム岐阜)
滋賀県
http://www.pref.shiga.lg.jp/b/sigaku_daigaku/files/daigakurenkei_h28.pdf
京都府
大阪府
兵庫県
中国地方
広島県
四国地方
香川県
九州地方
佐賀県(2019.6.28日下記リンク切れ確認)
平成29年度 継続・育成型高大連携活動「医療人へのとびら」を開催します / 教育委員会TOP / 佐賀県
長崎県
鹿児島県
(いずれのHPは2018年11月3~5日に参照)