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「今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理(案)」について私学職員の立場からのまとめ

12月15日に開催された大学分科会及び将来構想部会の合同会議の配布資料が12月19日に文部科学省のホームページで公開されました。

大学分科会(第139回)・将来構想部会(第9期~)(第10回)合同会議 配付資料:文部科学省

今回の資料は、個人としては資料1-4の高等教育の将来像に関する都道府県基礎データが、あまり縁のない都道府県の状況や大学の立地を知る事が出来て、非常に面白いです。ただ本題としては、資料1-1にある「今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理(案)」ではないかと思います。

 

まず将来構想部会の役割ですが、本部会の1回目の会議資料を見るとこのように記載されています。

今後の高等教育機関全体の機能・役割、振興策の基本方針について審議を行う。

 つまり、この論点整理が今回の将来構想部会が行わなければならなかったものと言えるでしょう。

 

既に、様々なニュースでこの論点整理の内容について報道されてはいますが、改めてこの論点について、私が気になったところを中心にまとめていきたいと思います。

(なお、地方中小規模私学の一職員の視点であるとふまえていただきたいと思います)

また一部のみのピックアップですので、詳細は上記リンクから資料をご覧下さい。

 

①教育研究組織の新たな方法(学部学科横断のプログラム編成)

横断とつけると、既に同様のプログラムを開設している大学がありますね。どちらかというと、各学部の科目を組み合わせて、横串で新たな学位プログラムを構築するイメージかと思います。(その場合は既に指摘されていますが、学生の定員枠や教員の貼り付けの問題があります)

 

②大学間の統合や吸収

今まで大学統合をする事例はいくつもありました。例えば下記です。

www.christiantoday.co.jp

その場合は大学統合ではなく、学校法人といった視点からで、大学の設置届出だけではなく、寄付行為についても知見を必要とし、さらに統合までの議論や相談などに費やす時間がかなり必要であると認識しています。

今回は、①多様な連携・統合方策はないか?、②設置者の変更が学部学科単位で出来ないか?、③早期の経営判断の支援と指導助言といった観点が挙げられています。

 

③様々な学生

今までは学生の多様化といっても、イメージとして、知識・能力等が多様であるといったものが強かった気がしますが、様々な年代・国といった多様化といったものが今後のキーワードになるかと思います。

特に今回の報告ではリカレント教育について触れられています。リカレント教育というと短期のプログラムとして履修証明プログラムがあります。

大学等の履修証明制度について:文部科学省

履修証明プログラムは、私立大学等改革総合支援事業のタイプ2の地域連携の項目にもなってもいます。この履修証明プログラムについては例えば「文部科学時報 2008.10」の第2特集「大学等の「履修証明制度」が創設されました」が分かりやすく参考になります。ただリカレント教育というのであれば、「職業実践力育成プログラム(BP)認定制度」のほうが非常に分かりやすくはありますね(しかも条件によっては、専門実践教育訓練給付金が支給されますし)

職業実践力育成プログラム(BP)認定制度について:文部科学省

 一意見ですが、リカレント教育で履修証明プログラムの構築は、大学としての教育研究成果の還元という意味では分かるのですが、経営的には小規模大学はそれを持続的に発展し維持していく余裕はないのではと感じています(特に人員の部分ですね)

 

④小規模学科の設置基準改正

短期大学の文脈からの議論ですが、短期大学の位置づけや機能・役割をふまえ、小規模な学科でも適切な運営ができるように選任教員数と校舎面積について、小規模の学科を想定した設置基準の改正を行うとの事です。

※大学は設置基準第3条~第6条によって「教育研究上の基本組織」で学部・学科・課程などがありますが、短期大学は第3条で学科のみが記載されています。

例えば大学の財務状況を見る時は、人件費が50%、教育研究費30%かなと見ています(この人件費の割合が極端に高いと経営が厳しいかなとか、教育研究費が20%だと何に使っているのか?それとも貯め込んでいるのかと思う訳です)大学経営にとって人件費はかなり高いわけです。ただいくつか検索してみると、他業界との人件費率の比較をするとそんな事もないのではと感じる事もあります。

 

例えば中小企業のみですが、下記の資料参照となります。

www.tkc.jp

 

なお、当日の別添資料にさらに詳細が記載されています。この部会の議論そのものは、大学としての在り方や教育の視点からはいかがなものかという意見があるでしょう。

しかし、このような論点整理は近い将来制度化される可能性は高いですし、政策誘導として補助金と結びつくことも充分考えられます。

教育と経営を結ぶ役割を担うには、まずそのものが何を意味していて、どういう議論がされているかを踏まえておく必要があると感じています。大学職員だからこそ、「それは教育研究の姿ではない」ではなく、組織が存続するために納得はしなくても理解はしておくことは不可欠ではないかと思っています。