平成30年6月18日に文部科学省のホームページ(新着情報)に、第3期教育振興基本計画が掲載されました。
概要だけでは、どうも高等教育に関してどのように書かれているかが掴みにくい部分があるので、下記についてまとめました。なお一部参考にリンクを引用文献に入れたり、重要だと思う箇所を太字もしくは下線をこちらで引いています。
(全てを掲載している訳ではありませんので、上記リンクの本文もご確認下さい)
Ⅱ.教育をめぐる現状と課題
1.これまでの取組の成果
P4-5
○ 大学等の高等教育段階においては,学生の主体的な学修活動を後押しする学修環境整備や,「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の三つの方針(以下「三つの方針」という。)の策定・公表,全学的な教学システムの構築など,大学教育の質的転換に向けた取組が進展するとともに,所得連動返還型奨学金制度・給付型奨学金制度の創設など,学生の経済的支援の充実に向けた取組を進めてきている。
2.社会の現状や2030年以降の変化等を踏まえ、取り組むべき課題
(2)教育をめぐる状況変化
P9
○ 大学生の学修時間については,過去の調査と比較しても改善されておら
ず,海外の大学と比較しても短いとの指摘※がある。※「大学生の学習実態に関する調査研究(平成 28 年 3 月)」(国立教育政策研究所)よれば,大学1年生の週当たりの授業に関連した自律的学習時間は,0 時間が 12.0%,1 時間から 5 時間が 58.4%,6 時間から 10 時間が 19.5%である。この数値は過去の調査と比較しても改善されておらず,海外の大学と比較しても学修時間が短いとの指摘がある。
P12
(高等教育を取り巻く状況変化と課題)
○ 少子化が進む中においても,いわゆる 18 歳時進学率の上昇により,大学の学士課程の学生数は増加している。学士課程への進学率は5割を超え,専門学校等を含む高等教育機関全体への進学率は8割を超えるなど,進学率が上昇し,多様な学生が入学するようになっている。
○ 前述のように大学生の学修時間が短いなどの課題も踏まえ,大学教育の質の保証のための各大学の取組を進める必要がある。こうした大学教育改革を高校教育改革,大学入学者選抜改革と一体的に行っていくことで,初等中等教育と高等教育の一貫した改革を実現することが重要である。
○ また,今後 18 歳人口が大幅に減少し,高等教育全体の規模にも影響することが予想される中,特に,地方においては小規模な大学が多く,経営悪化により地方における高等教育機会の確保が困難になるおそれがある。このため,経営力の強化など,教育研究の基盤強化に向けた高等教育のシステム改革に取り組むことが急務であり,今後の高等教育の構造の在り方について考える必要がある。
○ さらに,グローバル化による人材の流動性が高まり人材獲得競争が激しさを増す中,我が国の高等教育機関の国際的な評価の向上及び教育・研究環境の国際化,学生の双方向交流などの推進が求められている。○ 超スマート社会(Society 5.0)においては,労働市場の構造や職業そのものが抜本的に変わることが予測されるなか,個人の観点からも,社会全体としての労働生産性の向上や人材需要への対応等の観点からも,社会人が学び直すことの重要性が高まっている。産業界からは,より高度かつ実践的・創造的な職業教育や,成長分野等で必要とされる人材養成の強化も期待されており,高等教育機関全体としてその期待に応えていくための機能強化を図ることが重要となっている。特に,新たな産業の創出など,AI・
IoT・ビッグデータ等の産業構造改革を促す情報技術等を基盤とした人材育成が求められる中で,数理・データサイエンス教育の重要性・必要性は分野を超えて高まっている。
○ また,超スマート社会(Society 5.0)においては,知の力を持って挑戦し,人類社会に貢献する高度専門人材である知のプロフェッショナルを育成することの重要性が高まっており,最先端の情報技術を生み出し,それを実践的に活用することができる人材や,現場レベルの改善・革新を牽引し,高付加価値のモノやサービスを生み出すことができる人材等を育成する大学院教育の改革等が求められている。
Ⅳ.今後の教育政策に関する基本的な方針
1.夢と志を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する
P22-23
(問題発見・解決能力の修得)
○ 高等教育段階においては,新たな知識・技能を修得するだけではなく,学んだ知識・技能を実践・応用する力,さらには,自ら問題の発見・解決に取り組む力を育成することが特に重要である。このことを通じて,自主的・自律的に考え,また,多様な他者と協働しながら,新たなモノやサービスを生み出すなど,社会に新たな価値を創造し,より豊かな社会を形成することのできる人材を育成することが重要である。
○ 近年,大学進学率の上昇に伴い多様な学生が入学してくる中で,大学教育の質の確保が問題となっており,各大学においては「三つの方針」を実質的なものにするとともに,それに基づく体系的・組織的な教育の充実を図る必要がある。その際,単なる授業改善にとどまらず,卒業後の出口も十分に意識しながら,大学として体系的で組織的な教育活動の展開,問題の発見・解決に向けた学生の能動的・主体的な学修を促す取組の充実,教員と学生の対話に基づいた教育の推進,学修成果の可視化や PDCA サイクルによるカリキュラム・マネジメントの確立等に取り組むことが必要である。
○ 特に,大学教育を通じて「学生が何を身に付けたか」という観点を一層重視するとともに,いかなる評価の基準や方法に基づいて,個々の学生の学修成果の把握・評価を行い,大学として卒業を認定・学位を授与したかについて,社会に対して説明責任を果たすことが求められる。
○ また,高等教育機関が経済社会の急速な変化に対応した教育を提供するための教員の多様性・流動性の向上や,学生が必要に応じ多様な高等教育機関で多様な科目を受講したり,機関間の移動を円滑に行ったりするなどの流動性の向上に向けた方策の検討,さらに,各機関の資源を有効に活用し,効果的・効率的に教育の質を高めていくため,各機関が有している資源を共有しながら教育研究を行う方法等についても検討を行う必要がある。(社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成)
○ 変化が激しく将来が展望しにくい状況において,社会的・職業的自立を実現するためには,一人一人が自己の生き方や働き方について考えを深め,職業生活や日常生活に必要な知識や技能,技術を主体的に身に付けることが一層重要となる。
○ このため,幼児教育から高等教育までの各学校段階において体系的・系統的なキャリア教育を推進するとともに,高等学校段階以降においては,地域や産業界との連携の下,職業において求められる知識や技能,技術に関する教育の充実を図り,今後の社会的・職業的自立の基盤となる基礎的・汎用的能力や,生涯にわたり必要な学習を通じて新たな知識や技能,技術を身に付け,自らの職業人生を切り拓ひらいていく原動力を育成することが重要である。
○ その際,特に高等教育段階においては,今後の成長分野で必要とされる人材の育成や,多様な課題に対応し,解決を図るための実践的・創造的な職業能力の育成についても重視する必要がある。とりわけ,新たに創設された専門職大学・専門職短期大学の制度の活用により,高等教育における専門的な職業教育体系の充実を図ることが求められる。同時に,今後実現を目指す超スマート社会(Society 5.0)においては,人文科学,社会科学,自然科学の分野の枠を超えた協働の中からこそ新たな価値が創出され,人々に豊かさをもたらす源泉となり,職業の在り方にも大きな影響を与えると考えられるところであり,職業教育においても今後こうした分野横断的な視点をより重視することが重要である。
2.社会の持続的な発展を牽引するための多様な力を育成する
(グローバルに活躍する人材の育成)
P24
○ このため,初等中等教育から高等教育の各段階に応じた国際化に取り組む高等学校・大学等への支援や英語をはじめとする外国語教育の強化に努めるとともに,豊かな教養や論理的思考力,我が国の伝統や文化への深い理解,世界の多様な文化の中で自他の違いを尊重し合いつつ,コミュニケーションを通じて,ともに問題を発見し解決する能力,困難を乗り越える強い精神力等を育むための教育の充実を図ることが必要である。
(大学院教育の改革等を通じたイノベーションを牽引する人材の育成)
P25
○ 大学院においては,我が国の発展を担う主役として,高度な専門的知識と倫理観を基礎に自ら考え行動し,新たな知を創り出し,その知から新たな価値を生み出して,既存の様々な枠を超えてグローバルに活躍できる人材を,社会と協働して育成していくことが重要である。
○ また,Ⅲで述べたような 2030 年以降の社会を展望すると,技術革新や社会・制度の変革などを通じて新たな価値を創造し,社会におけるイノベーションを牽引する人材の育成が一層重要となる。
○ こうした状況を踏まえ,今後の大学院教育においては,これまでの改革の取組を進めつつ,各分野における専門的知識に加えて,文理の枠を超えた分野横断的な知識の習得,幅広い視野で課題を捉え,様々な技術や情報を使いこなして解決に導く力の育成などを行うことが重要になる。
3.生涯学び,活躍できる環境を整える
(職業に必要な知識やスキルを生涯を通じて身に付けるための社会人の学び
直しの推進)
P27
○ 人生 100 年を見据えたライフサイクルの中では,若年期に身に付けた知識や技能のみでもって,生き抜くことは不可能となる。長い人生を生きるためには,生涯を通して知識と時代の変化に応じたスキルの獲得に投資できるよう「いつでも,どこでも,何度でも学べる環境」をつくることが重要である。
○ こうした学びの継続・学び直しを進めていくためには,社会に開かれた高等教育を実現していくことが必要である。大学における公開講座の受講者数は,近年増加傾向にあるものの,大学・専修学校における社会人受講者の割合は1割程度にとどまっており,教育を提供する側において,社会のニーズに合った教育内容・方法への改善を図ることに加え,教育を受ける側,受講生を送り出す側の観点からも,生涯を通じた学びを推進する環境を整備していく必要がある。~略~
○ さらに,産業構造が急速に変化する中,学士課程や修士課程を修了した社会人が,大学院という最先端の研究活動が行われる場で,自らの能力をさらに向上させて博士号を取得するなど,国際的にも競争力ある人材へ向けた学び直しを促進していくことも重要となってくる。
5.教育政策推進のための基盤を整備する
(ICT の利活用のための基盤の整備)
P31
○ 大学教育については,学生が主体的に学修するアクティブ・ラーニングへの展開を図るなど,教育の質向上の観点とともに,グローバルに進展している教育研究のオープン化に対応し,大学の知を広く国内外に発信する観点からも ICT の利活用を推進することが求められる。
(教育研究の基盤強化に向けた高等教育のシステム改革)
P32-34
○ 本格的な人口減少社会において,一人一人の実りある生涯と我が国の持続的な成長・発展を実現するためには,高等教育機関の基盤的な教育と研究とが,両輪となり機能を発揮することで,人材育成と知的創造活動やイノベーション創造の中核として一層重要な役割を果たすことが求められる。また,地方創生の実現の観点からも,高等教育の果たす役割は大きい。このため,経済社会の要請に応え,高等教育機関が求められる役割を真に果たすことができるよう,評価に基づく資源の再配分を進めつつ,各機関の役割・機能の強化や教育研究の質の一層の向上を図るとともに,地域における高等教育の機会の確保を図っていく必要がある。
○ これまで,国立大学については,「国立大学経営力戦略」(平成 27 年6月)に基づき,自己改革に積極的に取り組む大学に対する運営費交付金の重点配分等による大学改革の加速化や,世界最高水準の教育研究活動を目指した大学運営を行うこととする「指定国立大学法人制度」の創設,国立大学法人が保有する資産の有効活用のための規制緩和等を進めてきた。また,公立大学についても,公立大学法人の制度化により,自主自律的な環境の下で魅力ある教育研究を展開できるための予算・人事等の規制緩和,社会貢献の拡大等を進めてきた。私立大学についても,学校法人のガバナンス,財政基盤の在り方及び経営困難な状況への対応,私学助成を通じた自らの特色を生かした改革の促進をはじめ,私立大学等の振興に関する総合的な検討を実施し,社会の要請と期待に応えるため,私学助成を通じ,多様な特色の発揮と質的充実に向けた取組や,改革を進めるためのメリハリある資金配分等を進めていくことが求められる。こうした国公私立大学の教育研究の向上につながる改革や取組を,引き続き進めていく必要がある。
○ 高等教育全体としては,各高等教育機関がそれぞれの位置付けや期待される役割・機能を十分に踏まえた教育や研究を展開し,学修者の多様な需要に応えるとともに,特に,①新たな価値創出の基盤となる創造的な教育研究の高度化,②社会の変化,地域や産業界の多様な要請を踏まえた実践的な教育の充実の二つの機能の充実を目指すことが重要となる。
○ 特に,各機関の使命や社会のニーズを真に踏まえた高等教育の実現や,地域における高等教育機関の教育機能の維持・向上のためには,既存の学部・学科等の構成や教育課程の見直しを促進するための方策はもとより,高等教育機関間,さらには高等教育機関と地方公共団体・産業界との連携の強化に関する方策も含め,地域における質の高い高等教育機会を確保するための抜本的な構造改革の在り方について検討することが必要である。
○ その際,今後の高等教育全体の規模や分野別・産業別の人材育成の需要の状況についても十分に考慮するとともに,国公私の設置者別の役割分担の在り方や,国公私の設置者の枠を超えた連携・統合の可能性についても検討を行うことが必要である。
○ さらに,高等教育のユニバーサル・アクセスを進める上で,障害のある学生や社会人など多様な学生のより積極的な受入れに取り組むことや,学生や社会等の多様なニーズにこれまで以上に的確に対応したきめ細やかな学生相談やメンタルヘルス対策,修学・就職指導,キャリア形成支援などの学生支援の推進に取り組むことなどにより,生涯を通じた人材育成の場としての大学の機能を高めることが求められる。
○ あわせて,変化への対応や価値の創造等を実現するための学修の質の向上に向けた制度等の在り方について,設置基準,設置審査,認証評価,情報公開の在り方を含め,総合的かつ抜本的に検討することが必要である。特に,認証評価制度においては,評価における社会との関係強化,評価の効率化,国立大学法人評価や設置計画履行状況等調査など他の質保証制度との連携等についても改善を進める必要がある。その際,評価の国際化の状況にも留意しつつ,検討することが重要である。○ また,厳しい財政状況の中,各機関においては,人件費や研究費等を確保するため,多様な収入源を確保し,財政基盤の確立を図るなど,大学等の経営力の強化についても検討することが必要である。
○ 大学院は,高度な専門的知識を基礎に自ら考え行動する人材の育成や,新たな知・価値を創造し,グローバルに活躍する人材の育成という意味から,我が国の未来を牽引する重要な役割を担っており,その在り方についてもさらに検討を行い,取組の充実を図ることが必要である。
Ⅴ.今後の教育政策の遂行に当たって特に留意すべき視点
1.客観的な根拠を重視した教育政策の推進
P43
○ 高等教育段階においては,教育の質を保証し,大学等に進学する学生が,組織的・体系的な質の高い教育を受けられるようにするための大学改革を徹底するとともに,大学教育の成果指標の開発と情報公開の推進,教育研究の質的向上のための条件整備を進めることが重要である。大学の教育研究条件の向上に向け,国立大学法人運営費交付金や私学助成について,大学改革や教育研究の質の向上のためのメリハリを強化し,適切な措置を図りつつ,多元的な財政基盤の確立を進める必要がある。
○ また,大学において国際競争力のある質の高い研究成果が生み出され,我が国の成長を支える質の高い人材が育成されるよう,大学改革を進める中で,大学の研究体制の強化,若手研究者の安定的雇用の確保を図るとともに,大学院修了後のキャリアパスの明確化や構築に関する取組をさらに促した上で,優秀な博士課程学生に対しては,支援を図る必要がある。
○ 加えて,人生 100 年を見据えたライフサイクルの中で,社会人が生涯を通じて学び職業に必要な能力を身に付けることができるよう,様々なニーズに対応できる社会に開かれた高等教育を実現していくためのリカレント教育の環境整備が必要である。
○ 大学施設は,創造性豊かな人材養成,独創的・先端的な学術研究の推進など大学等の使命を果たす基盤として重要な役割を担うものであり,多様で質の高い教育研究を展開できるよう,改修等の施設整備を計画的・重点的に進めることが重要である。
第2部 今後5年間の教育政策の目標と施策群
P56
<主として高等教育段階>
目標(4)問題発見・解決能力の修得
学生に幅広い知識と教養,主体的に変化に対応しつつ学んだ知識・技能を実践・応用する力,更には自ら問題の発見・解決に取り組む力を育成する。(測定指標)
・学修時間の充実等,学生の学修に対する取組・態度の改善○ 高大接続改革の着実な推進
・ 学力の3要素を確実に育み,多面的・総合的な評価を行うため,高等学校教育・大学入学者選抜・大学教育の一体的な改革を進めることとし,高等学校教育改革を推進するとともに,大学入学者選抜改革として「大学入学共通テスト」の平成 32(2020)年度からの実施に向けた検討を着実に進め,個別大学の入学者選抜においても,学力の3要素の多面的・総合的な評価への改善を促す。また,各大学の策定する三つの方針を踏まえた大学教育改革を促進し,これらの三つの方針に関することを共通評価項目として,平成 30(2018)年度からの認証評価に反映する。○ 学生本位の視点に立った教育の実現
・ 「学位プログラムを中心とした大学制度」への転換を含めた教育課程の改善や教育の質的転換を実質化するため,教員一人あたり学生数(ST 比)などの教育環境の水準の改善を図るとともに,課題解決型学習(PBL)による課題解決型教育などの教育内容の改善,大学ポートレートなどを通じた高等教育関係の情報の公開を推進する。
・ 各大学が三つの方針に照らして,個々の学生が修得した知識及び能力の状況や,学生の学修に係る意識及び行動を把握し,教育研究活動等の適切かつ効果的な運営に生かすことができるよう,必要な情報の把握や公表の在り方を検討する。
○ 教員・学生の流動性の向上
・ 経済社会の急速な変化に対応した教育を提供するため,企業等の高等教育機関以外との人事交流などを通じた教員の多様性や流動性の向上,学生が所属する高等教育機関以外での学修や高等教育機関間の転学,都市部と地方の大学生同士の交流などを通じた学生の流動性の向上に向け,必要な施策を講じる。
○ 教育の質向上と効果的な運営のための高等教育機関間の連携強化
・ 各高等教育機関の資源を有効に活用し,効果的・効率的に教育の質を高めていくため,e-ラーニング等を活用したり,地域でコンソーシアムを形成したりするなど,他機関等と連携した教育課程編成等を推進する。
P58
<生涯の各段階>
目標(5)社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成
自主及び自律の精神を養うとともに,職業及び生活との関連を重視し,勤労を重んずる態度を養い,社会的・職業的自立の基盤となる基礎的・汎用的能力を育成する。~略~
○ 高等教育機関における実践的な職業教育の推進
・ 理論にも裏付けられた高度な実践力を強みとして,専門業務を牽引することができ,かつ,変化に対応しつつ,新たなモノやサービスを創り出すことができる専門職業人の養成を図るよう,新たな高等教育機関である専門職大学及び専門職短期大学並びに大学・短期大学の専門職学科について,平成 31(2019)年度からの制度施行に向け,必要な準備を進める。
・ 大学や専門学校等における産業界と連携した実践的な教育を進めるため,「職業実践力育成プログラム」や「職業実践専門課程」の認定制度の活用を促進する。
P61
2.社会の持続的な発展を牽引するための多様な力を育成する
目標(7)グローバルに活躍する人材の育成
伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度や,豊かな語学力・コミュニケーション能力,主体性・積極性,異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野でグローバルに活躍できる人材を育成する。~略~
○ 国際化に向けた先進的な取組を行う高等学校・高等専門学校・大学等への支援
・ 国内外において,グローバルな視点を持って活躍することを目的として,語学力とともに,幅広い教養や問題解決力等の国際的素養の育成などのグローバル化に対応した先進的な取組を行う高等学校を支援する。
・ グローバル化に対応した素養・能力を育み,国際的に通用する大学入学資格を取得できる国際バカロレアの普及と認定校等の増加に向け,導入に係る支援,情報提供の体制の構築や大学における活用促進等に戦略的に取り組む。
・ アジアをはじめとする世界の学生市場を見据え,国際通用性の高い教育組織・環境を備え,国際競争力を有する拠点大学等を形成するため,英語での授業の実施,外国人や海外で学位を取得した若手の積極採用などに取り組む大学や,高等教育の質の保証に関する国際的な連携に向け取り組む大学,海外への拠点展開やキャンパスの多様性促進に取り組む高等専門学校や大学等への重点的な支援を行う。
P63-P65(P63記載分のみ引用)
目標(8)大学院教育の改革等を通じたイノベーションを牽引する人材の育成
高度な専門的知識と倫理観を基礎に自ら考え行動し,新たな知を創り出し,その知から新たな価値を生み出す創造性を有して,既存の様々な枠を超えて活躍できる,イノベーションを牽引する人材を育成する。(測定指標)
・修士課程修了者の博士課程への進学率の増加
(参考指標)
・大学発ベンチャーの設立数
・産学協働による情報技術人材の育成状況○ 大学院教育改革の推進
・ 平成 28(2016)年3月に策定された第3次大学院教育振興施策要綱等に基づき,大学院教育改革を,引き続き推進する。
・ 博士課程を有する大学において,博士号取得者の質を保証するための取組を実施するとともに,産業界との協働による教育プログラムの開発,教職員が社会の多様な場で経験を積む機会の充実,企業等の研究者・技術者等に対する博士課程教育の充実などの取組を推進する。
・ また,優秀な学生,社会人を国内外から引き付けるため,大学院生に対する多様な経済的支援を充実する。さらに,世界最高水準の教育力と研究力を備え,異分野の一体的教育や我が国が強い分野の最先端の教育を推進する卓越した大学院の形成を支援する。
・ 大学院の機能の強化に向けた取組について,社会人学生の受入れ,他の機関と連携した教育の高度化などの観点から,具体的な方策の検討を進め,必要な対応を行うとともに,大学院修了後のキャリアパスの明確化や構築に関する取組等をさらに促す。○ 若手研究者・科学技術イノベーションを担う多様な人材の育成・活躍促進
・ 第5期科学技術基本計画に基づき,若手研究者のキャリアパスの明確化,キャリアの段階に応じて高い能力と意欲を最大限発揮できる環境の整備,若手研究者に対する研究費支援等の取組を推進する。特に,優れた若手研究者に対しては,安定したポストに就きながら独立した自由な研究環境の下で活躍できる制度を推進する。また,科学技術イノベーションを担う多様な人材について,産学官協働によるキャリアパスの確立と人材の育成・確保のための取組を推進する。
P71-72
目標(12)職業に必要な知識やスキルを生涯を通じて身に付けるための社会人の学び直しの推進
刻々と変化する社会に対応し,職業に関して必要な知識やスキルを身に付けて,「学び」と「労働」の循環につなげることができるよう,社会人が大学等で学べる環境の整備を推進する。(測定指標)
・大学・専門学校等での社会人受講者数を 100 万人にする○ 教育機関における産業界と連携した実践的な教育カリキュラムの編成・実施
・ 大学や専門学校等における産業界と連携した実践的な教育を進めるため,「職業実践力育成プログラム」や「職業実践専門課程」の認定制度の活用を促進するとともに,社会人等が自らの知識や経験を還元して学びあうなど,社会人のニーズに応える教育プログラムを開発・実施し、全国展開を図る。
・ 実務家教員の育成プログラムを開発・実施し、修了者を実務家教員の候補者として大学等に推薦する仕組みを構築する。○ 社会人が働きながら学べる学習環境の整備
・ 放送大学において放送授業等に加えてオンライン授業の充実を図るとともに,放送大学を学び直しの機会を提供する先導的役割を果たす高等教育機関として位置付け,そのノウハウや技術を生かした,他大学・大学院,企業,行政等との連携によるプログラムの提供や各大学・大学院のプログラム開発への協力を促進する。
・ 長期履修学生制度や履修証明制度の活用促進,複数の教育機関による単位の累積による学位授与の拡大に向けた検討や,大学・大学院や専門学校における社会人等向け短期プログラムの大臣認定制度の創設を行うとともに,通信講座や e-ラーニングの積極的活用等による学び直し講座の開設等を促進することにより,時間的制約の多い社会人でも学びやすい環境を整備する。
・ 学ぶ意欲を持つ社会人が,社会人向けの教育プログラムの開設状況や学びの支援制度,検定や資格等に関する情報に,効率的に入手することができるよう,関係機関の情報発信の質の向上を図る。○ 経済的な支援の実施
・ 学び直しの支援のための奨学金制度の弾力的運用を実施するとともに,教育訓練給付なども含め,関係府省が連携して経済的な支援制度の利用促進を図る。
○ 労働者の学びに関する企業側の理解促進
・ 関係府省が連携し,社会人学生の就職支援の強化,企業や業界における職業能力の評価,教育訓練休暇制度等の導入や,大学や専門学校等におけるプログラムの活用に対する働き掛け,働き方改革の着実な実施を通じ,学んだ成果の活用や仕事への接続を推進する。
P73
目標(13)障害者の生涯学習の推進
障害者権利条約の批准や障害者差別解消法の施行等も踏まえ,障害者が,学校卒業後も含めたその一生を通じて,自らの可能性を追求しつつ,地域の一員として豊かな人生を送ることができるよう,生涯を通じた教育やスポーツ,文化等の様々な学習機会の整備に関する関係施策を横断的かつ総合的に推進する。~略~
○ 大学等における学生支援の充実
・ 障害のある学生の在籍者数が急激に増加している高等教育段階の状況を踏まえ,各大学等における修学支援・就労支援体制の整備を促進するとともに,大学等と関係機関(福祉や労働行政機関,障害当事者団体,企業等)とが連携した取組を促進することにより,各大学等における障害のある学生の修学を支援する。また,放送大学において,テレビ授業への字幕の付与や点字試験問題の作成など,障害のある学生への学習支援を一層充実する。
P84-85
目標(17)ICT 利活用のための基盤の整備
~略~
高等教育段階について,教育の質向上の観点から ICT の利活用を積極的に推進する。また,ICT の活用による生涯を通じた学習機会の提供を推進する。~略~
○ 大学における ICT を利活用した教育の推進
・ 高等教育段階において,教育の質向上や大学の知の国内外への発信の観点から,多様なメディアを活用した遠隔教育や MOOCによる講義の発信等,ICT を利活用した教育を推進する。
P89-90
目標(20)教育研究の基盤強化に向けた高等教育のシステム改革
今後 18 歳人口の大幅な減少が予想され,特に地方においては,小規模な大学が多く経営悪化が懸念される状況を踏まえ,教育研究の基盤強化に向けた高等教育のシステム改革により,特色ある「足腰の強い」大学づくりを推進する。(参考指標)
・大学における外部資金獲得状況
・中長期計画を策定している私立大学の割合
・大学間連携に取り組む大学の割合○ 教育研究の質向上に向けた基盤の確立
・ 学長の優れたリーダーシップによる大学運営の促進,外部理事や実務家教員など外部人材の活用,大学教育の成果指標の開発と情報公開の推進,外部資金導入の増加など,大学等の経営力の強化について検討を進め,必要な施策を講じる。
・ 国立大学法人運営費交付金や私学助成などを確実に措置するとともに,改革に取り組む大学への重点支援など,メリハリある配分を行う。国立大学法人については,第3期中期目標期間における「三つの重点支援の枠組み」などにより,戦略の進捗状況に基づくメリハリある重点支援を行う。私立大学等については,今後とも社会の要請と期待に応えるため,私学助成において,多様な特色の発揮と質的充実に向けた取組や,改革を進めるためのメリハリある資金配分等を進める。また,競争的資金については,研究の特性等を踏まえつつメリハリを強化する中で,各大学等のインセンティブの強化や先進的な取組の促進等を図る。併せて,多元的な財政基盤の構築を図るため,寄附制度の普及啓発や先進事例の情報発信等を通じて寄附金収入等の民間資金導入を促進する。○ 高等教育機関の連携・統合等
・ 各地域における大学等への進学者数の将来推計を行い,社会人学生を含めた多様な需要も踏まえて,各高等教育機関が将来の経営戦略を立てる参考とするよう促すとともに,高等教育全体の規模について検討を進め,必要な施策を講じる。
・ 地域の高等教育機関が,産業界や地方公共団体と共に将来像の議論や具体的な交流等の方策について議論する「地域連携プラットフォーム(仮称)」を構築することを促す。
・ 国公私立の枠を超えた連携・統合を円滑に進めるため,教育研究により創出された知の継承を図りつつ,大学間での単位互換制度の効果的な運用や,教員が一つの大学に限り専任となる原則の見直し,国立大学の一法人一大学制の見直し,学部・学科単位での事業譲渡の円滑化など必要な施策を講じる。また,経営悪化傾向にある学校法人に対し,経営状況をよりきめ細かく分析した上で,私立大学の自主性・自律性に配慮しつつも,各学校法人の自主性に任せるだけでなく,他法人との合併や撤退を含む早期の適切な経営判断が行われるよう必要な取組を行う。
・ 地方創生を推進するため,大学等,専門学校,地方公共団体,企業等が連携し,地域を担う人材を育成するとともに,地域の中核的な産業振興等のための取組を推進する。特に,東日本大震災からの復興に関しては,全国の大学等が有する復興に資する「知」を福島県に集積するための取組を推進するなど,復興の担い手の育成等を進める。