平成28年1月18日に開催された大学教育部会で、「大学における専門的職員の活用の実態把握に関する調査結果」が出されました。
これを受けて、専門的職員について一部では様々な議論が盛り上がっていますが、おそらく大学の外から、いや大学関係者であってもよく意味が分からないという場合があるかもしれません。
そこで、専門的職員について、個人の思うところを整理してみました。(あくまで一私大に勤める職員の考えです)
大学教員と大学職員
まず大学には、教育組織と事務組織を置くことが、大学を設置するにあたって最低限の要件である大学設置基準で求められています。
つまり大学には、教員と職員が原則的にはいるわけです。
昔は、職員は事務職員でした。例えば、(学事や教務)部長は教員が勤め、職員は判断はせずに、事務処理を行うということです。まあ今でも、教員の仕事は○○、職員の仕事は○○だから、それはやらないとか、学生の面倒は教員の仕事とか言う人もいます。
しかし、順風満帆に大学の入学者が右肩上がりに来ていた時代が変わり、財政難、社会からの要請など、職員も専門性を持つべきや地位向上などの議論があがるようになりました。このあたりは、職員はジェネラリストかスペシャリストであるべきかや、大学マネジメントを行うアドミニストレーターが必要といった議論にもつながっています。
まあ大学職員の専門性は、職員という枠を壊すものなのか、内向きに集約するのか、教員に近づくのかは、各大学の状況によって違うのですが、従来事務処理だけでできていた大学運営が、ある程度専門知識がないと通用しなくなっている背景もあるでしょう。例えば就職(そしてキャリア)を大学が熱心に支援するようになったのは、そんな昔の事ではないのですよね。
また大学アドミニストレーターは、教員でも職員でもない第3の職と捉えられていることもあります。(大学マネジメントは、教員が中心にやっている大学や、職員である大学もあるからでしょうか)ただ大学アドミニストレーターの意見は、職員側や一部からしか出ていない意見で、私の周りではあまり浸透している言葉ではなかったりします。
大学における専門的職員
さて今回の専門的職員ですが、大学アドミニストレーターと同じように教員でも職員でもないものとして捉えられています。
ただ最初に紹介した調査の職種を見ると、大学にある事務職員のかなりの職務が含まれています。
ただこの点について議論や論点が様々な所が出てくる理由としては
・大学と括っても、設置形態(国公私)や規模や様々な諸条件で異なる(中小企業と大企業、歴史ある企業とベンチャー企業などを括るようなものなので、論じる立場によってまったく異なります)
・教員としての立場か、職員としての立場で論じるか?
・職員であっても現場か、マネジメントとしての立場で論じるか?
・技術職員との位置づけや関係性はどうなのか?
・キャリアパスが不明(大学職員から論じる人は、職員のキャリアアップとして捉えている人もいるし、ポスドクからのキャリアとして捉えている場合もある)
・そもそも業務だけで内容がよくわからない
・必要な能力やスキルがあまり明確になっていない(資格や学位も含む)
他にも理由があるかと思いますがが、ぱっと思いつくものを挙げてみました。
以前にも専門的職員について自分の考えを出したことがありますが、おそらく上で議論をして「専門的職員」という枠組みをつくるだけでは、専門的職員の位置づけなどは難しいかと考えます。
言うなれば、「専門的職員は必要だよね」とありますが、大学が今後変化していく中で、必要であればそのような人材は出てくるかと思います。(個人的には、必要に応じて発生した人が、アメーバーのようにネットワークを形成して、社会的な立場を形成していくのが現実的ではないかと考えています)
まだまだこの議論は萌芽段階でありますが、様々な立場からの提起と議論だけで机上の空論にちょっとなっている気もしないではありません。
そしてツイッターでも呟きましたが、危惧すべきこととしては、仮に大学で専門的職員が確立しても、図書館で職員を派遣職員に置き換えた大学がかなりあったように、いつでも替えがきく人材として(例えば派遣や契約社員として)見られてしまわれないかということです。