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大学10年間の今昔~ある大学職員の立場から~

大学に勤務して10年以上となりますが、ふと10年前を思い出すと、だいぶ大学を取り巻く状況や大学の中の様子も変わりました。今回、そういえば10年前を比べてこれだけ変わったよなというものをまとめてみます。

なお、この変化は大学業界全体の事ではなく、設置形態や大学規模、地域や大学の組織文化によってかなり異なるかと思います。

大学の教育に関する変化

最初に大学の教育に関する変化です。40代以上の人が思う大学像と今はだいぶ異なるかと思います。

カリキュラム改訂に関する変化

カリキュラム、つまり教育課程は、ディプロマポリシーからカリキュラムポリシー(以下「CP」))に基づき、編成されることとなっています。このCPに基づき、科目が体系的に配置され、学生は授業を選択、受講する訳です。

実際はカリキュラムの順次性や体系性ではなく、資格取得や時間割で履修する科目を決めるというのは今も昔もそう変わってはいないようです。

また昔は、毎年度カリキュラムが変更され、旧カリキュラムと新カリキュラムの対応をみたり(科目の読み替えをしたり)という事があったのです。というのも、理由の一つとして先生方が他大学に行かれ、新しい先生がくると「個人に紐づいていた科目は担当できないから自分が担当できるこの科目を入れよう」という事が往々にしてありました。

大変な時は(毎年度カリキュラム変更があった為)1つの学科に4つのカリキュラムがあって、科目読み替え表が非常に長いという時代もありましたね。

しかし、人事によるカリキュラムの変更という事はほとんどなくなりました。またカリキュラムの変更は学生の学びや募集状況、さらには経営的な視点も少し入って検討されるようになってきたり、カリキュラム変更は学長ガバナンスの強化により教授会の決定だけでは簡単に変えられない制度になったりしています。

少人数授業

10年前よりもっと前は、大学では500人~1000人が入る大きい教室や階段教室で大人数講義授業が行われることもあったかと思います。近年では大教室は残ってはいるのですが、講義の授業の履修者数は最大で150~200人を目途とするようになっています。

また少人数の授業も増えてきているので、新しい講義棟ではICTを活用できるとともに、中ぐらいから小さいサイズの教室をつくるようになっています。

ただ2020年度のコロナ禍では小教室を沢山つくったことが密になりやすく、教室マネジメント上はかなり大変な事態になってはいます。

履修上限(キャップ制度)の変化

私が大学生の時は1年・2年でたくさんの科目を履修して、3年では履修科目が少なくなり授業がだいぶ楽、さらに4年ではゼミと卒論だけという人は多かった時代でした。おそらく単位数の履修上限はないか、あったとしても年間60単位前後で2年間で120単位は履修できる時代だったのではないかと思います。

しかし今は単位の実質化の観点から、年間の履修登録の上限のキャップを定めている大学が殆どです。これをキャップ制というのですが、履修上限は50単位未満がよくあり、厳しい大学は36単位未満という大学もあります。

このキャップ制を厳しくすると、3年生でも授業が多くあり、就職活動に影響があるという意見もあります。一方、成績がいい学生(GPAがいい学生)にはCAP制を緩和したり、夏休みや春休みに集中講座で別途単位が取得できる制度を設けている大学もあります。

事前事後学習の厳格化

大学の単位は1単位45時間の学修時間と大学設置基準で定められています。近年はシラバスにきちんと事前事後学習の記載が求められたり、シラバスの第三者チェックがおこなれ、毎授業ごとに事前事後学習の指示がされるようになりました。

2020年度前期の新型コロナウイルス感染拡大防止による遠隔授業で学生から毎授業ごとに800字のレポートが出されて辛いといったSNSでの呟きもみかけましたが、本来の単位制度の設計から鑑みると当然のこととなっているように思われます。

むしろ、授業だけ出席して試験前に勉強すればいいという時代は既に過去のものとなり、学生は授業+事前事後学習、そしてアルバイトと非常に忙しい生活になっています。

www.daigaku23.com

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大学の経営・運営に関する変化

続いて、経営的な面も含めた変化です。

学生数の減少

18歳人口が減って、大手の大規模大学では受験性を集めるのに苦労しているという事もあるのですが、今は入学定員を超えた学生を受け入れることが厳しくなっています。

ひと昔前は、100人の入学定員であれば129名まで受け入れようとすることは、よくありました。しかし、国からのお達しにより、入学定員を一定以上越えて受入をすると補助金が出ない、あるいは減額される条件が厳しくなりました。同様に一定条件を満たしてしまうと、学部学科の改組、つまり新しく学部や学科を設置することが認められなくなったのです。

そうすると問題になるのは予算の問題です。今まで、1.29倍の学生を入学させること前提で予算を組んでいたのが、1倍の学生を入学させることを前提で予算を組まないといけません。

そうすると大学の事業の取捨選択や管理運営費や人件費にまで将来は手をつけないといけないかもしれません。

補助金の難しさ

私立大学にはすくなからず補助金が入っています。昔、補助金は学生数や教職員数に応じて交付されていましたが、ここ数年は条件が厳しくなり、教育改革等をしていない大学は減額されるという方向になっています。

働き方の変化

ここ10年で大学職員の働き方もだいぶ変わりました。昔はどの部署も専任の職員は事務処理を求められていました。しかし近年は学内の委員会に正式な委員として参加したり、仕事も企画調整などが増えました。一方、単純作業などはICT化でなくなったり、アルバイトや派遣職員が行うといったことも増えています。

委員会に参加するという事は、きちんと知識を習得し、経験からの知見をふまえる必要があります。委員となっても単に事務局として参加している人もいますが、そういうのは最近は求められていなくなっています。

 

終わり

自分自身は教学マネジメントの仕事が多いので、制度に関するものが多いです。また詳細は述べませんが、国際交流や社会貢献を活発に行うようになり、必要なセンターや組織が増え、教職員がだいぶ増えたようにも思います。

 

また変化がない組織はあとは死ぬしかないと思うのですが、大学は外からの圧力で変わる事も少なくありません。中から変えるのが難しい時は、外の圧力をどう使って大学が変わっていくかは大学で働く上で必要な能力の一つではないでしょうか。

最後はまったくまとまっていませんね…。