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大学の3つの方針の建前と本音

平成29年度(2017年度)から、大学は学校教育法施行規則により卒業の認定に関する方針、教育課程の編成及び実施に関する方針、入学者の受入れに関する方針、所謂3つの方針を定め、公表する必要があることが学校教育法施行規則に定められています。

第百六十五条の二 大学は、当該大学、学部又は学科若しくは課程(大学院にあつては、当該大学院、研究科又は専攻)ごとに、その教育上の目的を踏まえて、次に掲げる方針(大学院にあつては、第三号に掲げるものに限る。)を定めるものとする。

一 卒業の認定に関する方針

二 教育課程の編成及び実施に関する方針

三 入学者の受入れに関する方針

2 前項第二号に掲げる方針を定めるに当たつては、同項第一号に掲げる方針との一貫性の確保に特に意を用いなければならない。

                 ~略~

第百七十二条の二 大学は、次に掲げる教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとする。

一 大学の教育研究上の目的及び第百六十五条の二第一項の規定により定める方針に関すること 

                 ~略~

3 第一項の規定による情報の公表は、適切な体制を整えた上で、刊行物への掲載、インターネットの利用その他広く周知を図ることができる方法によつて行うものとする。

大学は大学の特色や私立大学であれば建学の精神などを踏まえて、3つの方針が策定され、方針に沿って大学教育が自主的かつ自律的に行われています。(というのが建前です)

 しかし、3つの方針は重要だと何となくわかっていても「そもそもこれが何故重要なのか」「自分の仕事をどう関わりがあるのかといった点から理解する機会はそう多くはないと思います。そこで今回は3つの方針の建前と本音というキーワードで、3つの方針は邪魔者なのか、それとも使えるものなのかを個人の考えではありますが書いてみます。

3つの方針とは何か

弊ブログを見る人の殆どは大学関係者だと思うので、この辺りは書くまでもないかもしれません。ですので簡単な図だけ用意しておきます。

3つの方針とは、~の方針という場合と、~ポリシーという場合があります。既に卒業の認定に関する方針、教育課程の編成及び実施に関する方針、入学者の受入れに関する方針が3つの方針であると書きましたが、ポリシーとすると下記の様になります。

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また3つの方針の一貫性についてイメージにするとこんな感じになるかと思います。

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この3つの方針は学校教育法施行規則にもあるように一貫性をもって策定され、公表されているはずです。 

また3つの方針の策定は法令で定められていますが、それ以前は3つの方針は3つの方針を策定し公表しているかが補助金の申請要件として使われている事もありました。例えばCOC+や私立大学等改革総合支援事業ですね。文科省が補助金政策により3つの方針を策定・公表させようとはしていましたね。 

3つの方針がない場合と役割

さて、それでは3つの方針は何故必要なのでしょうか?

なくても困らないと思う人は少なくはないと思います。むしろ、3つの方針があると自己点検・評価は3つの方針に則ってやらないといけないし、何か変えようと思っても3つの方針に基づいていないからダメと言われるからないほうがいいと思った事がある人もいるのではないでしょうか?

3つの方針がないと?

3つの方針は大学内外に対して、大学としてどんな人材を養成し社会に送り出すのか、そのためのカリキュラムや入試はどうなのかを示したものというのが建前でしょう。例えば3つの方針がないとこんな事になるかもしれません。

①ディプロマポリシーがない!→どんな人に学位を授与してるの?

②カリキュラムポリシーがない!→教員が教えられる(持ちたい)科目だけを寄せつめたカリキュラムになってしまうかも。

③アドミッションポリシーがない!→スタートが分からないと、ゴール(人材養成像)はあっても、どんなカリキュラムを組めばいいのだろうか?

自分達が思う良い教育を常にやりたい、その為には毎年どんどん変えていきたいと思う場合は3つの方針は邪魔者かもしれません。しかし3つの方針は、大学や学位プログラムとしての軸であること、人が変わっても軸が変わらないという点があります。

人から組織へ

役職者が変わると、自分の都合のいいように変えてしまうという事はあります。例えば学科長が変わるたびにカリキュラムが変わる、学部長が変わると自分の分野あるいは派閥の優遇カリキュラムになるといった事が昔はあったと大学外からも聞きます。

そこで方針があれば軸(もしかすると土台とも言えます)ははっきりしているので、人が変わっても、軸は変わることはありません。大学は3つの方針に基づき社会にどのような人材を送り出すかを約束しているので、方針があれば人が変わってもどのような人材を社会に送り出すか、その為にはどのような教育を行うかは変わらないということになります。

なお、言うまでもなく方針を変える際の手続きをしっかりと決めておくことも重要です。学長の一存で方針を簡単に変更できる組織ではダメですが、今は認証評価で内部質保証システムも問われています。

終わり~アカウンタビリティと組織~

3つの方針は大学としてどのような人材を養成し、その為のカリキュラム、その為の選抜について、大学外に対しても分かりやすく示すものです。それはアカウンタビリティの側面もある気がします。

ただ3つの方針は質保証をしている立場からすると、人が変わっても教育が変わらないことに意味があると考えています。

なお文科省の言い分は「「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン」を参照するのが一番ですね。