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大学間連携の難しさ

ここ数年、大学の連携の話がよく聞くようになっている。それはコンソーシアムだけでなく、補助金や政策誘導による大学間連携共同教育推進事業や私立大学等改革総合支援事業のプラットフォームも連携の一つであある。

<参考>

大学間連携共同教育推進事業:文部科学省

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

 

さて、さらには地域別の新法人で国公私立大学を一体運営という話さえ出てきている。

univ-journal.jp

 

この制度については、他の大学職員ブロガーが書き散らかしているので、是非ご覧いただきたい。

kakichirashi.hatenadiary.jp

 

さて、本記事では大学が連携する事について、一部その業務をやってきた立場として、書いていきたい。

 

まず大学連携がもたらすものとは何であろうか?金子(2013)はこの点について「①(大学教育改革について)潜在的な力を発見し、成長させる契機、②様々な先進事例が紹介される、③調査や分析についてノウハウがなくとも連携で克服することは難しくない」と述べている。

確かに金子先生のおっしゃるように、事例の集積や分析方法やノウハウの交換、さらには連携によって、大学として進めたい事業を外圧として活用するという事もある。

 

<過去関連記事>

www.daigaku23.com

 

まあ大学が連携をするだけであればそこまで難しい事ではない。学内や執行部の合意は必要であるが、覚書や協定書を結び交わせば出来てしまう。

 

ただ、そこから連携をして何をするか、その為には何をしたらよいのかを考えるのが非常に大変なのである。

 

 

この活動もいくつかの段階があると思っている。

 

 

例えば、連携の事例として共同での単発の研修会(FDやSD)がある。これは比較的ハードルが低い。例えば、A大学のFDに協定大学は共催とかにしてしまい、運営や参加者の募集をすればよい。また共同でボランティアや地域連携をしたりなども考えられる。

 

こういう事業、つまり大学として、さほど痛みが伴わない連携事業が比較的導入しやすい。

 

問題は、次のステップとしての改革や痛みを伴う事業である。例えば、教育改革で連携によって〇〇調査を導入する、カリキュラムを変える、システムや組織・制度を変える必要性があるといったものである。

このような事業をやるには、連携上での大学間の調整だけではなく、執行部や学内との調整も重要になってくる。(特に大学連携は、各大学が判断し、それを断る事もできるので猶更である)

個人の経験では、この調整を行う上でどうしても人についてまわってしまう部分であると感じている。またその大学や人の価値観や考えのすり合わせも必要、時間を要することもある。

 

さて、大学間連携について文献を見ていると感じる事がある。先ほど引用した金子先生がかかれているIDEの548号は「大学間協力で変える大学」がテーマであるが、こういう事業をやったや成果を示すものが非常に多い。

 

これだけ見れば、連携は制度さえ作ればできるのではと感じてしまう場合もあるだろう。ただ最近必要であると思っているのは、如何に連携が難しいか、その原因である課題、困難、過程、調整についてを取り上げることも必要ではないのかと思っている。例えば関わった人の語りや懇談会でもよい。またプロセスについての事例や議論もよいかと思う。

 

まあ大学が連携して一般社団法人化するのであれば、まずは高校と大学とを繋ぐ事業(説明会や模擬授業の講師派遣など)を社団法人がやればいいんじゃないですかねと思います。社団法人自体が少し運営費を稼ぐことも考えないと、大学の重荷になってはいけないのではと思います。

 

<引用文献>

金子元久(2013)「内からの大学教育改革と大学間ネットワーク」『IDE現代の高等教育 大学間協力で変える大学』,548,4-10.