大学設置基準シリーズの5弾目。今回は大学設置基準の第4章で第十三条の二から第十七条の「教員の資格」についてです。
(学長の資格)
第十三条の二 学長となることのできる者は、人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学運営に関し識見を有すると認められる者とする。
(教授の資格)
第十四条 教授となることのできる者は、次の各号のいずれかに該当し、かつ、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者とする。
一 博士の学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む。)を有し、研究上の業績を有する者
二 研究上の業績が前号の者に準ずると認められる者
三 学位規則(昭和二十八年文部省令第九号)第五条の二に規定する専門職学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む。)を有し、当該専門職学位の専攻分野に関する実務上の業績を有する者
四 大学において教授、准教授又は専任の講師の経歴(外国におけるこれらに相当する教員としての経歴を含む。)のある者
五 芸術、体育等については、特殊な技能に秀でていると認められる者
六 専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有すると認められる者
(准教授の資格)
第十五条 准教授となることのできる者は、次の各号のいずれかに該当し、かつ、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者とする。
一 前条各号のいずれかに該当する者
二 大学において助教又はこれに準ずる職員としての経歴(外国におけるこれらに相当する職員としての経歴を含む。)のある者
三 修士の学位又は学位規則第五条の二に規定する専門職学位(外国において授与されたこれらに相当する学位を含む。)を有する者
四 研究所、試験所、調査所等に在職し、研究上の業績を有する者
五 専攻分野について、優れた知識及び経験を有すると認められる者
(講師の資格)
第十六条 講師となることのできる者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 第十四条又は前条に規定する教授又は准教授となることのできる者
二 その他特殊な専攻分野について、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者
(助教の資格)
第十六条の二 助教となることのできる者は、次の各号のいずれかに該当し、かつ、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者とする。
一 第十四条各号又は第十五条各号のいずれかに該当する者
二 修士の学位(医学を履修する課程、歯学を履修する課程、薬学を履修する課程のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするもの又は獣医学を履修する課程を修了した者については、学士の学位)又は学位規則第五条の二に規定する専門職学位(外国において授与されたこれらに相当する学位を含む。)を有する者
三 専攻分野について、知識及び経験を有すると認められる者
(助手の資格)
第十七条 助手となることのできる者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 学士の学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む。)を有する者
二 前号の者に準ずる能力を有すると認められる者
まずは大学設置基準のここを見るまえに、大学にはどのような職員を置かなければいけないのか、基本である学校教育法を見ましょう。
第九十二条 大学には学長、教授、准教授、助教、助手及び事務職員を置かなければならない。ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。
○2 大学には、前項のほか、副学長、学部長、講師、技術職員その他必要な職員を置くことができる。
○3 学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する。
○4 副学長は、学長を助け、命を受けて校務をつかさどる。
○5 学部長は、学部に関する校務をつかさどる。
○6 教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の特に優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
○7 准教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
○8 助教は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の知識及び能力を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
○9 助手は、その所属する組織における教育研究の円滑な実施に必要な業務に従事する。
○10 講師は、教授又は准教授に準ずる職務に従事する。
学校教育法第九十二条は「大学の職員」について定められています。この内容は平成17年に改正されています。具体的な内容としては、「助教授」に代えて「准教授」が定められ、「助教」が新たに定められました。また教授や助手の職務についても新たに定められています。
さて職位について、講師の扱いはどうなるの?かといった疑問があるかもしれません。また昇任については助教→講師→准教授→講師というように昇任するのか?といった疑問があるかもしれません。この説明の1つとして次があります。
<参考>
大学等の教員組織の整備に係る学校教育法の一部を改正する法律等の施行について(通知):文部科学省
大学の講師は、教育研究を主たる職務とする職として、基本的に大学に置かなければならないことした教授、准教授及び助教とは別に、各大学の判断により置くことができることとしたものであり、その基本的な性格は改正前と変わらないが、今回の改正により、教授及び「助教授」でなく、教授及び「准教授」に準ずる職務に従事することとしたこと。
つまり、講師は各大学での判断ですので、他大学の規程を見ると助教→准教授に昇任といった事もあります。また昇任で助教から講師はなくとも、採用では講師という例もあるようです。
さて、大学設置基準に戻ります。学校教育法では「各職位の職務内容」が定められていましたが、大学設置基準第4章では「教員の資格」が定められています。教員の資格という事は、例えば人事や大学等設置業務の時に、必要な知識となります。
教育上の能力を有しているかを基本として、次(のいずれか)が求められることになります。
①職位に応じた学位
②職位に応じた研究業績
③実務上の業績
④教員としてのキャリア(経験年数)
⑤芸術、体育等の特殊な技能
⑥専攻分野の特に優れた知識や経験
①は助手は学士、助教は修士を有する者になっていますが、講師以上は博士になっていますし、⑤であれば(大学側の判断もありますが)その競技でのトップクラスのアスリートであれば、教授や准教授が妥当であると判断される場合もあります。
大学設置基準のこの条は、人事や大学等の設置業務の際に押さえておくべき内容です。また大学によってはこの条をもとに、「教授は~~」であると、採用や昇任の基準を作ってもいます。ただ最近は、助教でも博士の学位が必要だったり、助手でも修士など設置基準と実態が少しずれているのではとも思っております。