大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

大学や高等教育関連、法令の解説が中心のブログ

【スポンサーリンク】

大学職員が理解すべき大学設置基準と解説③教育研究上の基本組織

 大学設置基準のシリーズの今回は第3回目、取り上げる箇所は第2章の「教育研究上の基本組織」です。 ではまず該当の設置基準を確認しましょう。

第二章 教育研究上の基本組織

(学部)

第三条 学部は、専攻により教育研究の必要に応じ組織されるものであつて、教育研究上適当な規模内容を有し、教員組織、教員数その他が学部として適当であると認められるものとする。

(学科)

第四条 学部には、専攻により学科を設ける。

2 前項の学科は、それぞれの専攻分野を教育研究するに必要な組織を備えたものとする。

(課程)

第五条 学部の教育上の目的を達成するため有益かつ適切であると認められる場合には、学科に代えて学生の履修上の区分に応じて組織される課程を設けることができる。

(学部以外の基本組織)

第六条 学校教育法第八十五条ただし書に規定する学部以外の教育研究上の基本となる組織(以下「学部以外の基本組織」という。)は、当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切であると認められるものであつて、次の各号に掲げる要件を備えるものとする。

一 教育研究上適当な規模内容を有すること。

二 教育研究上必要な教員組織、施設設備その他の諸条件を備えること。

三 教育研究を適切に遂行するためにふさわしい運営の仕組みを有すること。

2 学部以外の基本組織に係る専任教員数、校舎の面積及び学部以外の基本組織の教育研究に必要な附属施設の基準は、当該学部以外の基本組織の教育研究上の分野に相当すると認められる分野の学部又は学科に係るこれらの基準(第四十五条第一項に規定する共同学科(第十三条及び第三十七条の二において「共同学科」という。)及び第五十条第一項に規定する国際連携学科に係るものを含む。)に準ずるものとする。

3 この省令において、この章、第十三条、第三十七条の二、第三十九条、第四十六条、第四十八条、第四十九条(第三十九条の規定に係る附属施設について適用する場合に限る。)、別表第一、別表第二及び別表第三を除き、「学部」には学部以外の基本組織を、「学科」には学部以外の基本組織を置く場合における相当の組織を含むものとする。

また関連の学校教育法も併せて載せておきます。

第八十五条 大学には、学部を置くことを常例とする。ただし、当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては、学部以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる。
第八十六条 大学には、夜間において授業を行う学部又は通信による教育を行う学部を置くことができる。

 大学設置基準第三条に書かれている専攻とは主に学問分野の事を示す場合が多いと思います。そして学部は①専攻と②教育研究上の必要に応じ組織され、学科は専攻により必要な組織を備えていることが必要となります。(専攻によって組織されているという事は、AとA´の学科で学部を組織する事は出来ますが、Aとωのような学科構成だと学部を構成できるかは判断が難しいことも多いかと思います。ただ包括的な学部にして、様々な学科を設置するという事は考えられます。)

  また学部学科について考える上で教育研究組織の役割や機能とは何でしょうか。例えば学部・研究科について、金子は「管理運営,教員の帰属組織,そして学生の教育課程,という三つの側面をもつ,いわば三位一体の組織であることが,学部・研究科の基本的性格であり,それを基礎として成り立っているのが日本の大学組織の特徴である」(金子,2016)と述べています。

 さて、この設置基準の趣旨を理解するために、平成三年六月二四日に出された文高大第一八四号の大学設置基準の改正に関する内容の該当箇所を見てましょう。

大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について:文部科学省

二 教育研究上の基本組織について

(一) 学部の種類については、学部教育の多様な展開を図るため、規定上の例示を廃止したこと。(改正後の第三条関係)

(二) 学生の履修区分に応じた教育上の組織である課程の設置については、従来は学部の種類によって学科を設けることが適当でない場合に限定していたのを改め、学部の種類にかかわらず、当該学部の教育上の目的を達成するために有益かつ適切であると認められる場合には、課程を設けることができることとしたこと。(改正後の第五条関係)

(三) 学科又は課程に専攻課程を設け得る旨の規定を廃止し、学科又は課程にさらに細分化した組織を設けることについては、各大学の自主的な判断に委ねることとしたこと。(改正後の第四条及び第五条関係)

 さて大学設置基準の改正前は「学部の種類は、文学、法学、経済学、商学、理学、医学、歯学、工学及び農学の各学部、その他学部として適当な規模内容があるとみとめられるものとする」とされていました。(余談ですが、この改正を大学設置基準の大綱化と言います。大綱化はいずれ取り上げたいと思います)現在は、大学の自主性に応じて学部を置けることが理解すべき点であるかと思います。また第六条は、例えば教養教育センターといった組織等が考えられます(この六条に出てくる設置基準の他の条項は別の機会で説明します)

<参考>

「我が国の文教施策」(平成3年度)[第2部 第4章 第2節 1]

最後に学部ではなく、学生の教育を行う組織とした学群や学類を置いているいくつかの大学のリンクが下記となります。

筑波大学|学群・大学院|学群・学類(学士課程)一覧

人間総合学群|駒沢女子大学・駒沢女子短期大学

和洋女子大学|学群・学類/専修

また九州大学のように教育組織と研究組織を分離している事例もあります。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/004/kondannkai/__icsFiles/afieldfile/2011/03/02/1301683_03.pdf

 

参考・引用文献

金子元久(2016)「大学組織と教育組織」,IDE現代の高等教育2016年2-3月号,pp.4-11