先日、文部科学省から平成27年度設置計画履行状況等調査の結果が発表されました。
設置計画履行状況等調査の結果等について(平成27年度):文部科学省
大学職員でブログをやられている方もこの件については話題に挙げられていらっしゃいます。 本ブログでも(今までの内容と重複する場合がありますが)「是正意見」についてまとめてみます。
なお、履行状況等報告書については下記をご覧ください。
今年度、是正意見が付された大学は9校です。ここでは是正意見の内容から、何故その意見が付されたのかをまとめていきます。
①教員の配置
担当教員が不在で臨時的に非常勤講師に担当させている科目については、速やかに専任教員を補充すること。なお、主要科目については、原則として専任の教授または准教授が担当する必要があり、現状は大学設置基準第10条に抵触しているため、早急に教員を配置すること。
教員数の不足ではなく、該当科目の担当が非常勤(兼任)ではなく、専任教員であること、かつ主要科目は教授か准教授が担当する必要があります。根拠は大学設置基準第10条ですが具体的には下記の通りです。
(授業科目の担当)第十条 大学は、教育上主要と認める授業科目(以下「主要授業科目」という。)については原則として専任の教授又は准教授に、主要授業科目以外の授業科目についてはなるべく専任の教授、准教授、講師又は助教(第十三条、第四十六条第一項及び第五十五条において「教授等」という。)に担当させるものとする。
この主要授業科目という語句はあいまいで明確な定義はありません。また教育課程でも異なるでしょう。(私見ですが、カリキュラム体系図の概論にあたる科目やカリキュラムの骨となる科目と認識しています)ただ担当教員が何らかの事情(病欠とか)で欠席になるのはありうる事です。
また教員数が足りないという指摘もありました。これについては教員数計算方法を過去記事でご参照ください。
②単位の計算
1単位の科目の回数が7回となっていたり、さらに7回目が定期試験と記載さ れている科目等が見受けられ、大学設置基準第21条の授業時間数を確保できていない科目が見受け られる。
1単位=45時間を前提に、定期試験を授業時間数に換算しないので全6回の授業で「事前学習2時間+授業2時間+事後学習2時間」を6回ですので36時間の学習ですね。仮に7回でも42時間ですので、まったく足りていない状況です。
また別大学で中間テストの成績で授業免除というのは、コメントすらできません。
③授業内容とリメディアル教育
この話題は毎年出てくるのではないでしょうか。シラバスも確認されるということは実地調査を受けたのでしょうが、リメディアル教育を授業でやっていると解釈されたのでしょう。
なお、リメディラル教育とは次の通りです。
<参考>我が国の高等教育の将来像 用語解説:文部科学省
大学教育を受ける前提となる基礎的な知識等についての教育をいう。補習教育とも呼ばれる。
原則的にリメディラル教育は、正課外でやるものとされています(一方初年次教育は正課内・外で行う)
理想論で言えば、アドミッションポリシーに則った入試で選抜していれば、そんなのは必要ないだろうという解釈もできますが、現実的には難しいということもあるのでしょう。
④シラバスがない
シラバスは大学設置基準第二十五条の二に関連の記載があります。
(成績評価基準等の明示等)第二十五条の二 大学は、学生に対して、授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画をあらかじめ明示するものとする。
シラバスがないということは、授業の方法及び内容や計画が明示されていないとみなされたのではないでしょうか。
これらの指摘を見てみると、予め取り決めされていることが出来ていないケースが是正意見として付されています。大学設置基準が頭に入っている担当者が複数名いれば、防げた内容かもしれません。