近年、進学格差の是正の為、給付型奨学金について話題になり、こんなまとめも作られています。
進学する上で、経済的援助をどうすべきか、また給付型奨学金を創設する際に、ではその原資をどうするかなど解決するべき事がたくさんあります。(また今年のCOC+や地方創生事業では、人材育成や雇用創出、また地方の市町村が創設する奨学金など気になるものがありますが、それはまた別の機会に)
今回は、進学格差に焦点を当て、公にされているデータから地域ごとの進学率についてどうなっているか現状を見ていきます。
進学率については、文部科学省が行っている学校基本調査で全国の進学率や県ごとの進学率は目にする事が多いでしょうし、少し調べればグラフや一覧が手に入ります。
そこで今回はもう少しミクロな観点から進学率を算出します。以前、公にされているデータで18歳人口の算出方法についての記事がありますが、同様に県の統計局等にも学校基本調査のデータを公表しています。
都道府県レベルでも、面白い統計データがたくさんありますが、上に挙げた関連記事で取り上げた東京・埼玉・千葉の内、千葉県を例に地域ごとの進学率を算出します。
<参照>千葉県 統計情報 学校基本調査/千葉県
使用するデータは学校基本調査の卒業後の進路状況の高等学校「表52市町村別進路別卒業者数」です。
該当の表を見ると、市町村別に卒業者数と進路先が記載されています。一部、卒業者数等がない市町村がありますが、これは算出データが通っている高校が基準である為で、記載がない市町村は高校がないという事でしょう。
さて、市町村別に見るといっても、かなりの数がありますので、もう少し大きく区分けをします。区分けは、「第2表年齢(5歳階級,各歳)別,男女別人口-県・市区町村・11地域」で区分されている11地域ごとに区分します。なお、具体的には次の通りです。
<11地域区分>
千葉地域-千葉市、市原市
葛南地域-市川市、船橋市、習志野市、八千代市、浦安市
東葛飾地域-松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市
印旛地域-成田市、佐倉市、四街道市、八街市、印西市、白井市、
富里市、酒々井町、栄町
香取地域-香取市、神崎町、多古町、東庄町
海匝地域-銚子市、旭市、匝瑳市
山武地域-東金市、山武市、大網白里町、九十九里町、芝山町、 横芝光町
長生地域-茂原市、一宮町、睦沢町、長生村、白子町、長柄町、長南町
夷隅地域-勝浦市、いすみ市、大多喜町、御宿町
安房地域-館山市、鴨川市、南房総市、鋸南町
君津地域-木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市
また進学率は、「進学率=卒業者数/大学等への進学者数」で算出しました。
まずは平成26年度のおおまかな状況を見てみましょう。
卒業者数は地域によってだいぶ異なりますが、進学率は東京都市部に近いほど高い事が分かります。この図を見ると、千葉県内の大学であれば、募集戦略としてどの地域へ重点的に募集活動をするのかといった一つの基準になりえるかと考えています。
また逆に低い地域は、何故低いのか、経済的要因なのかといった事を分析すると、隠れているターゲットに対してアプローチできるかもしれません(進学率に関する要因分析は様々な先行研究があります)
次に地域別の進学率の経年変化を見てみます。
個人的には12本も折れ線を書くのは好まないのですが、比較をする為に今回はあえて上記の様なグラフを作成しました。
このグラフからは、4地域と7地域で進学率に大きな差がある事、2004年ごろから進学率が上昇していることが読み取れます。(特に香取地域での進学率の上昇は大きいです)
今回は地域別に進学率を算出してみました。全国区の大学であれば、大きな視点だけでも問題ありませんが、小規模中規模の大学はどこにどのようなターゲットがいるかは確実に把握しておく必要があります。業者の方からも様々なデータをもらえますし、オープンキャンパスのアンケートなど様々な情報がありますが、職員としてはどこでどのようなデータが手に入るかは把握しておくことは必要であると思います。