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大学職員が理解すべき大学設置基準と解説①~概要編~

はじめに

 大学職員として、どういうものかを理解しておくべきものの代表例として「大学設置基準」があるのではないでしょうか。ただ大学・学部等の設置業務(所謂学部学科をつくる為の業務や、文部科学省への申請業務)をやらないと大学設置基準にあまり触れる機会はないかもしれません。あと推測ですがOJTでも大学設置基準は中々やる事は少ないでしょうし、自ら法令データベースや教育六法で確認する事はあまりないかもしれません。

 ただ自分の仕事はあまり関係ないと思っていても、どこかで大学設置基準とつながっています。そこで何回になるか分かりませんが、若手や大学業界以外から転職して大学職員になった人を対象として、「大学設置基準のここだけでは押さえておこう」といった項目を記事にしていきます。初回となる今回は概要編です。

 

大学設置基準とは何か?

 大学設置基準は、学校教育法第3条の規定に基づいた文部科学省の省令です。

(なお、規定と規程の使い分けには注意しましょう。規程作成や文書作成時に間違えやすい所だと思います。)

<参考>

e-Gov法令検索

第三条 学校を設置しようとする者は、学校の種類に応じ、文部科学大臣の定める設備、編制その他に関する設置基準に従い、これを設置しなければならない。

 この規定に基づき、大学設置基準や高等教育に関わる省令として、大学院設置基準・専門職大学院設置基準・大学通信教育設置基準・短期大学設置基準・高等専門学校設置基準といったものがあります。

 では省令とは何でしょうか?まずは国家行政組織法第12条を見てみましょう。

elaws.e-gov.go.jp

第十二条 各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。
2 各外局の長は、その機関の所掌事務について、それぞれ主任の各省大臣に対し、案をそなえて、省令を発することを求めることができる。
3 省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。

  大学設置基準は文部科学省の命令として発せられたものであると言えます。そして大学設置基準の第1条には次のように記載されています。

第一章 総則

(趣旨)

第一条 大学(短期大学を除く。以下同じ。)は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)その他の法令の規定によるほか、この省令の定めるところにより設置するものとする。

2 この省令で定める設置基準は、大学を設置するのに必要な最低の基準とする。

3 大学は、この省令で定める設置基準より低下した状態にならないようにすることはもとより、その水準の向上を図ることに努めなければならない

 ここは重要な箇所で、大学設置基準は「最低限の基準」であるという事を理解する必要があります。そしてこの基準より、大学は常に向上するよう努力してねという事も書かれています。

 (大学職員の場合は法令を読むことはもちろん、規程を作ったりする仕事もあります。法学部や法学をかじったことがある人はいいですが、基本的な法制執務は大学職員としてきちんと学んでおかないと、中堅や偉くなった時に大変になるかと思います。著名な大学職員ブロガーの方が紹介していましたが、大学時代に法律を一切学んでこなかった自分は下記の本は仕事に欠かせません)

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大学設置基準のおおまかな内容

 それでは大学設置基準はどのような内容があるのでしょうか?まず大学設置基準の目次を見てみましょう。

第一章 総則

第二章 教育研究上の基本組織

第三章 教員組織

第四章 教員の資格

第五章 収容定員

第六章 教育課程

第七章 卒業の要件等

第八章 校地、校舎等の施設及び設備等

第九章 事務組織等

第十章 共同教育課程に関する特例

第十一章 国際連携学科に関する特例

第十二章 雑則

附則

 今回はそれぞれについて詳細には説明しませんので、大学設置基準はどういう分野の基準があるかを目次から見てください。 どれも大事なのですが、第二章~八章までは理解、もしくはこんな内容があったなというぐらいに覚えておく事は必要かと思います。

 

大学設置基準の改正

 大学設置基準は、ちょくちょく改正がなされています。例えば大学設置基準の第二条の三は「教員と事務職員等の連携及び協働」に関する内容で、平成29年4月1日から施行されたものです。

第二条の三 大学は、当該大学の教育研究活動等の組織的かつ効果的な運営を図るため、当該大学の教員と事務職員等との適切な役割分担の下で、これらの者の間の連携体制を確保し、これらの者の協働によりその職務が行われるよう留意するものとする。

<参考>上記の改正の通知

大学設置基準等の一部を改正する省令の公布について(通知):文部科学省

 大学設置基準は前触れもなく改正がなされるわけではありません。例えば文部科学省の中央教育審議会の大学分科会にある各部会の議論などを追っていくと、次はこういう改正があるのではないかと何となく分かりますし、新聞記事等でも文部科学省がこのような事を考えているといった記事を読むといいと思います。また毎日確認する事は大変ですが、政府のパブリックコメントをチェックするという方法もあります。

 ただ情報を毎日チェックしていくのは大変なので、大学関連のWebサイトをチェックしたり、大学情報を発信しているキュレーターのSNSアカウントをフォローしておくのも1つの手かと思います。

 

おわり

 大学設置基準は、管理職でもよく知らないという人は少なくないと思っています。それをきちんと踏まえて、大学が最低限の基準を下回らないようにする事が、最低限の大学職員の責務であると思います。また改正がちょくちょくある大学設置基準ですので、法令データベースだけではなく、文部科学省のホームページで改正があったかどうかをきちんと調べながら、大学設置基準を見る癖は必要ではなかろうかと思います。なお、不定期で本記事は続きます。