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学校教育法改正と大学の教育の質保証制度~国による教育研究活動の指導~

学校教育法の一部を改正する法律案が、平成31年2月12日(火)の定例閣議案件として出され、文部科学省のHPで公表されています。「等」がついていており、国立大学法人法や私立学校法、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構法の一部の改正も出ています。

その中で認証評価に関わるものがいずれの法令改正の中で触れられております

特に学校教育法の一部改正の内容については、認証評価で大学としての基準を満たしておらず、大学に適合していないと評価を受けた大学に対し、文部科学省は報告や資料の提出を求める事が出来ます。

この改正は、大学教育の質保証システムの変更でもあると言えます。

 

大学の質保証の制度

大学の質保証の制度はどのようになっているでしょうか。簡単に示したものが下記の図です。(なお、これ以外にも学校法人運営の質保証や国立大学法人評価等もありますが、今回は割愛します)

まずは「大学を設置するのに必要な最低の基準」である大学設置基準を押さえておく必要があります。この基準では教員数や校地・校舎などの最低基準が定められています。

 <参考記事>

www.daigaku23.com

そして質保証の全体像として大学を設置する際の設置認可、設置計画履行状況調査、認証評価等が教育の質保証システムがあります。

大学の設置認可

(公立・私立)大学等を設置する場合は、学校教育法や私立学校法の規定により文部科学大臣の認可が必要となっています。この認可では、教育課程や教員組織(教員数含)、校地等を学校教育法や大学設置基準に適合しているかが審査されます。

ここで、適切な基準に沿った教員数がいるかどうか、科目を担当するのに研究業績はあるか、設備等は充分か、主要な科目に専任の教授又は准教授が配置されているかどうかなど様々な事が確認されます。

つまり大学の設置が認可されたという事は、法令で定める大学として必要な最低限の要件は満たしていると言えます。

設置計画履行状況調査

大学や学部等が新設・開設した場合、該当の大学や学部が完成年度(開設初年度に入学した学生が卒業する年度)まで、設置計画履行状況調査の対象となります。

この設置計画履行状況調査では、設置・開設にあたって出した計画が履行されているかどうかの報告をし、状況に応じて文部科学省から必要な指導や助言が行われます。

なお、この設置計画履行状況調査の根拠は「大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則」の第14条です。

第十四条 文部科学大臣は、設置計画及び留意事項の履行の状況を確認するため必要があると認めるときは、認可を受けた者又は届出を行った者に対し、その設置計画及び留意事項の履行の状況について報告を求め、又は調査を行うことができる

平成29年度の設置計画履行状況調査では、調査結果から5大学が是正意見を付されています。
※是正意見とは「設置計画履行状況調査の結果,早早急な是正が求められる場合,又は改善意見を受けた後に行った設置計画履行状況調査の結果,当該改善意見が求める事項について不履行がある場合若しくは対応が不十分な場合において,認可を受けた者又は届出を行った者に対して,その早急な是正を求める意見」です。

この設置計画履行状況調査で、当初の設置計画通りにやっているかどうか、法令等に適合しているかどうかが確認されています。

認証評価

文部科学大臣の認証を受けた認証評価機関による認証評価を大学は7年に1回受審する義務があります。大学関係者であっても、認証評価の業務に直接関わらないと「制度は知っているけど、7年に1回のよく分からない恐怖の大王みたいなもの」という印象でしかない場合もあります。

さてこの認証評価は、現在第3サイクルが始まり、各大学の内部質保証を重視した評価が行われています。この認証評価は大学評価の判定基準に基づき、大学としてふさわしい水準にあるかどうかを判定されます。

今は認証評価は受審する事が義務であり「大学として適合しないよ」と「不適合」となった場合、同業者から色々言われる事があっても、特に大きなペナルティーはありません。
(不適合となるのは、主に法令違反です。例えば教員数が大学設置基準で定められた数に満たない。また書面調査から実地調査まで、改善の兆しがない(組織に自浄作用がない)場合は不適合と判断されるようです。)

今回の学校教育法改正と質保証

今回の学校教育法第109条の改正はこのように提示されています。(改正部分のみ)

⑤第二項及び第三項の認証評価においては、それぞれの認証評価の対象たる教育研究等状況(第二項に規定する大学の教育研究等の総合的な状況及び第三項に規定する専門職大学等又は専門職大学院の教育課程、教員組織その他教育研究活動の状況をいう。次項及び第
七項において同じ。)が大学評価基準に適合しているか否かの認定を行うものとする。
大学は、教育研究等状況について大学評価基準に適合している旨の認証評価機関の認定(次項において「適合認定」という。)を受けるよう、その教育研究水準の向上に努めなければならない。
文部科学大臣は、大学が教育研究等状況について適合認定を受けられなかつたときは、当該大学に対し、当該大学の教育研究等状況について、報告又は資料の提出を求めるものとする。

今まで認証評価を受ければ、とりあえず法的な義務はOKでした。まあ「認証評価で不適合もらっても、大きなペナルティーはないし」と考えている人や大学もあるかと思います。

でも今後は、大学は不断的に教育研究水準の向上をする必要があります。また認証評価で適合でないとされた場合、文部科学省から色んな確認がされ、指導が出来るようになります。

今までは、国(文部科学省)の教育研究に関する指導は履行状況調査でほぼ終わっていました。大学側は履行状況調査がが終わると「ひゃは~、ようやく終わって、自由に出来るぜ!」と思っていた大学もあるはずです。

しかし、今後は認証評価で不適合(教育研究が大学としての基準に満たしていない状態)だとその後も国(文部科学省)は目を光らせますよという事になったわけです。

学校教育法第15条の勧告・命令に関する法令もありますが、大学の質保証について、文部科学省は教育研究が充分でない大学に対して、手が出せるようになったと言ってもいいかと思います。

 

なお、他の大学職員ブロガーの方が同じ案件について書かれていますのでこちらもご覧ください。

kakichirashi.hatenadiary.jp