2022年度に第3回学生調査が試行実施されました。
しかし、知り合いの他大学のIR担当者に聞くと、調査に参加していない大学もあり、参加した大学から解答率もかなり低いと聞きました。
国としては今後大学全体で実施していく方針と聞いておりますが、そもそもなぜ大学で実施されないのか、されたとしても回答率が低いのか過去3回の試行調査から私学のIR担当者の目線から検討してみましょう。
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- メリットが感じられない調査である
- 調査が多すぎる、そして調査が重複している
- 調査実施時期が国立大学中心のスケジュール
- 特に学生目線がない
- 回答者と未回答者の特定はできない
- 回答結果の公表が遅すぎる
- 対象年次が補助金項目と合致していない
- そもそも信頼性がない
- 終わり
メリットが感じられない調査である
国としては全国の学生に調査を実施し、データを入手できることは大きなメリットです。しかし、調査の案内をするのは各大学です。そして調査の回答をするのは学生です。
この調査の回答依頼をする大学と調査回答をする学生にメリットはあるのでしょうか?
調査結果を大学の教育改善に活かせるとしても、実は非常に結果が使いにくいものです。その理由として下記が考えられます。
- 条件(学科構成)によっては、回答学生の所属学科の回答が特定できない
- 学生の個人が特定できない(大学によっては学生証番号からさらに分析することがあります)
- 調査が自大学のディプロマポリシーとあうのか
- すでに調査を実施しており、設問の重複がある
つまり、この調査の回答率をあげる努力をするより、自大学で実施する独自の学生調査の回答率をあげる努力をする、資源を投入した方が有益なのですよね。
また学生からすると同じような設問の調査ばかりになる、回答して活用されるのか→回答することによって自分に益があるのかということも考えるでしょう
(この辺りは大学として苦心しているところであり、調査結果がどのように使っているのか、改善に結びついているのかを可視化できるように工夫している大学があります)
調査が多すぎる、そして調査が重複している
昨今、学生調査が非常に増えています。
例えば入学時、学修行動調査、卒業時、卒業後などですね。これらは補助金などで実施が求められるなど政策誘導をされているものの1つでもあります。
<参考記事>
そのため、同時期に調査が重なることがあります。そうなると優先すべきは学内の調査です。
調査実施時期が国立大学中心のスケジュール
学生調査は、学年歴を見ながら1年スパンで実施を検討している大学も多くあります。そこに1ヶ月前に調査を実施しますとか言われても、現場は困ります。
また以前は1月下旬から調査を開始ということもありましたが、多くの私学ではすでに授業が終わっています。そのためには、ゼミごとに依頼するとか、いろんな工夫をしますが学生が長期休みにはいるとそのような手法も取れなくなります。
学生調査の回答率は単にメールを流しても回答率は上がらないのです。大学がメールで案内をすれば学生が素直に回答に応じるというのは、妄想でしかありません。特にメリットが感じられない調査なんて迷惑メールと一緒です。
特に学生目線がない
これ大事。
この一言に尽きます。調査を検討する側のための調査は非常に無駄ですね
回答者と未回答者の特定はできない
回答したのに、「このメールは回答した人にも送っています。回答してね」は極力やりたくありません。学生への案内は調査以外にも様々です。
案内が不必要なところへさらにメッセージを送ることは、他の重要なメッセージが埋もれてしまう可能性もあります。
回答結果の公表が遅すぎる
試行実施のスケジュールをみると、回答結果の公表は12〜1月に実施して、夏頃です。個別の大学への結果送付はもっと早いかと思いますが、そもそも学内の調査結果は自己点検・評価にも使います。そうすると2月中旬には結果がないと話になりません。
レポートに2ヶ月以上かかるなんて、仕事なめてますか?という感想しかでません。せめて単純集計かローデータだけとっとともらわないと話になりません。
対象年次が補助金項目と合致していない
私学では補助金の設問の一つに全学年で学修行動などの調査を実施している必要があります。一方で全国学生調査は2学年のみです。
これだと結局、大学で調査をやらないといけないのですよ。そのあたりもしっかり考えてほしいと思います。
そもそも信頼性がない
調査結果がどのように使われるのか、政策に活かされるとか思いますが、そこに信頼性がなければ回答率を上げようとするのは難しいです。
終わり
学生への調査は大学・学部レベルなど様々な部局が主となって行われいることがあります。そのために、私は調査のマネジメントは必要であるという立場です。
「ぼく、知りたいだもん」みたいな思いつきで学生の負担を増やす、結果的に不利益になることはすべきではありません。
本格実施することはやむを得ないことですが、従来の大学の調査の中にどう組み込めるかは早く議論しないといけませんので、早急に方針を出してほしいなと思います。