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高校生の大学での科目等履修生の制度と活用について

先日、中央大学からこんなニュースが出ました。

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この中央大学の制度の概要や特色は下記となります。

・高校1~3年生が無料で科目等履修生になれる、

・履修科目は「経済入門」で中央大学経済学部に入学した場合は、申請により経済学部の単位として認定

・特別入試にも活用

・オンラインでの受講もOK

今まで多くの大学で科目等履修生の制度があり、社会人などは科目等履修生になれば単位として認定、それで資格を申請したり、該当学部に入学すれば事前に単位が認められて、社会人学生でも事前に単位をとっておく→入学後に修得すべき単位数が減るので多少負担軽減があるといった事もありました。

言い換えると、入学前に科目等履修生で修得した単位は、修得に要した期間等を勘案して修業年限の通算を行うことが可能なのです。

2021年度に高校生と科目等履修生に関する法令の変更がありましたので、今回はそこを掘り下げてみたいと思います。

学校教育法施行規則の改正

令和3年7月21日の中央教育審議会大学分科会の資料4に「高校生等が科目等履修生として大学の単位を履修した際の修業年限の通算について」というものが公表されています。

大学分科会(第162回) 配付資料:文部科学省

要は高校生でも高校在学時に大学の科目等履修生で一定以上の単位を修得しておけば、卒業を(半年程度)早めることができる=科目等履修生での単位を修業年限カウントができるというものです。

もともと、高校生に対して科目等履修生をやっていた大学もありますが、令和3年10月29日の3文科高第809号「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(通知)により、施行規則の改正がありました。

該当箇所は146条で元は下記となります。なお、変更される箇所は筆者が下線及び赤字としています。

第百四十六条 学校教育法第八十八条に規定する修業年限の通算は、大学の定めるところにより、大学設置基準第三十一条第一項、専門職大学設置基準第二十八条第一項、短期大学設置基準第十七条第一項若しくは専門職短期大学設置基準第二十五条第一項に規定する科目等履修生(第百六十三条の二において「科目等履修生」という。)又は大学設置基準第三十一条第二項、専門職大学設置基準第二十八条第二項、短期大学設置基準第十七条第二項若しくは専門職短期大学設置基準第二十五条第二項に規定する特別の課程履修生(いずれも大学の学生以外の者に限る。)として一の大学において一定の単位(同法第九十条の規定により入学資格を有した後、修得したものに限る。)を修得した者に対し、大学設置基準第三十条第一項、専門職大学設置基準第二十六条第一項、短期大学設置基準第十六条第一項又は専門職短期大学設置基準第二十三条第一項の規定により当該大学に入学した後に修得したものとみなすことのできる当該単位数、その修得に要した期間その他大学が必要と認める事項を勘案して行うものとする。

この「同法第九十条の規定により入学資格を有した後、修得したものに限る。」とありますが、該当の大学の入学資格を有している高校生が科目等履修生は変更前は単位を修業年限通算に入れることは仕組み上可能でした。

参考 学校教育法施行規則第164第3項

特別の課程の履修資格は、大学において定めるものとする。ただし、当該資格を有する者は、学校教育法第九十条第一項の規定により大学に入学することができる者でなければならない。

ただ合格が決まってから、修業年限に入れるほどの単位を修得するのはかなり難しいとは言わざるをえません。

そこで今回の改正は下記のようになっています。

旧「一の大学において一定の単位(同法第九十条の規定により入学資格を有した後、修得したものに限る。)を修得した者に対し、」

新「一の大学において一定の単位を修得した者に対し、」

とシンプルに改正がされています。これで高校生が科目等履修生で単位を積み重ねていけば4年前期で卒業ということもできるようになったのです。

参考 大学の早期卒業 学校教育法

第八十九条 大学は、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の学生(第八十七条第二項に規定する課程に在学するものを除く。)で当該大学に三年(同条第一項ただし書の規定により修業年限を四年を超えるものとする学部の学生にあつては、三年以上で文部科学大臣の定める期間)以上在学したもの(これに準ずるものとして文部科学大臣の定める者を含む。)が、卒業の要件として当該大学の定める単位を優秀な成績で修得したと認める場合には、同項の規定にかかわらず、その卒業を認めることができる。

なお、通知によれば下記にも留意が必要です。

・科目等履修生で単位を修得した大学とは別の大学でも認定することは今まで通り可能

高等学校等における学校外学修の単位認定について(通知)との関連

参考リンク(通知より)

学校教育法等の一部を改正する法律等の公布について(平成10年文高専第185号)

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2009/07/07/1280769_002.pdf

本制度の大学の活用について

それでは今回の高校生の科目等履修生で単位を修得し、修業年限に換算できることでどのような活用できるでしょうか。コロナ禍でオンラインで授業を実施が広がったのもあり、活用は幅広くなった気がします。

中央大学のように広く科目等履修生を応募しているケースもありますが、今回は想定としていくつか考えてみましょう。

付属高校・傘下校と大学推薦との連携

付属高校等があり、そのまま大学へ進学する高校生がいる場合は取り組みやすい環境でしょう。

高校の専門学科と同じ分野の大学の学部学科との連携

高校の専門学科には、工業、農業・水産、家政、看護・福祉、語学など様々なものがあります。就職する人もいますが、大学進学を希望する人もおり、同じ分野の高校の専門学科と大学の学部学科では非常に相性のよい制度ではないでしょうか。(俗にいう囲い込みというやつですね)

教育連携校等との活用

教育連携に限らず、高校と大学で様々な連携をするために協定を交わしている場合があります。この連携に本制度の活動が出来るかもしれません。(要は適切な運用であれば高校の単位認定と絡めることができるということですね)

入試への活用

中央大学のように、入試に使うことも一つの手ですね。

大学側でやるべきことと留意事項

高校生の科目等履修生を受け入れた場合と、大学での単位を持った高校生がきた

科目等履修生の規程の確認

本学もそうですが、科目等履修生は高校卒業したものなどと出願要件を定めていて、はっきりと高校生は出願できると記載していません。(その他あたりで読み替えることもできなくはないですが)

まずは高校生が出願できるかどうかを確認が必要です。

受講料・金額設定をどうするか

中央大学では2022年度は無料としていますが、高校生はどうするのかは明確な理由が必要でしょう。

大学の授業であること

そのうち、どっかの大学がやりそうな気がするのですが、高校生の科目等履修生用授業を設定します、内容も高校生に合わせますとか出てきそうだなとふと感じます。

あくまでも大学の授業で単位が出るものなので、入学前教育や高校の授業レベルではないようにすることは大前提です。

高校生への科目等履修生で単位を修得した場合のシラバスの教育方法(面接か、遠隔かの明示)

大学で高校生の科目等履修生を受け入れた場合で他大学へ単位読み替えをするというケースもあるため、シラバスにはきちんと書いておくことと教育方法については明記が必要でしょう。

他大学での科目等履修生で単位を修得した場合の読み替え

既に編入などで単位の読み替えなどのケースもありますが、高校生が単位を持って認定してほしいということも考えられるので、どこかで事前に申し出をうけるようにする、読み替えをどうするかを明確にしておく必要があるでしょう。

終わりに

社会状況により遠隔での授業もある程度取組みやされ、知見が積み重なり、遠方の高校生でも科目等履修生として参加できるようになりつつあります。

大学としては高大連携や高大接続の観点から、本制度について検討すべき余地はあるかと思うのです。高校生の科目等履修生は調べてみると取組みはされているけど、まだまだなところがありますが、法令が変わり、2022年度以降はさらに取組みが広がるかもしれません。