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新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実に関するメモ

大学の質保証システムについて、見直しが文部科学省の諮問機関である中央教育審議会の大学分科会質保証システム部会でされています。

類似したニュースとしてはこんなのもありますね。

www.nikkei.com

さて、大学の質保証システムは、以下が公的な質保証システムとなっています。

  • 大学を設置するにあたり最低限の基準を定めた「大学設置基準」
  • 新しく大学・学部・学科等を設置するときの大学の設置認可審査
  • 7年に1回受審する必要がある認証評価
  • 法令により、教育情報(財務含む)などの情報公表

質保証システムの見直しにあたり、上記について見直しが検討されているのですが、質保証システム部会の資料を見ると徐々に具体的なものが見えてきました。

そこで今回は新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実に関して、大きな変化となりそうな箇所をピックアップ・メモとして残しておきます。

◆参考文献リンク◆ 質保証システム部会(第13回)会議資料:文部科学省

大学設置基準・認証評価の改善・充実の方向性

教員・職員に関する事

大学設置基準には教員・事務職員の規定が至るところにあります。例えば教員だけ検索しても一部として下記があります。

  • (教員と事務職員等の連携及び協働)第二条の三
  • (教員組織)第七条
  • (専攻分野における実務の経験及び高度の実務の能力を有する教員)第十条の二
  • (専任教員)第十二条
  • (専任教員数)第十三条
  • 第四章 教員の資格
  • (学部等連係課程実施基本組織)第四十二条の三の二
  • ※専門職学科特例(実務の経験等を有する専任教員)第四十二条の六

この規定について再整理を行い、一体的に規定する流れなのでしょう。また一の大学に限り専任教員となるという在り方についての定義を見直すとし、専任教員を「基幹教員」(仮称」とする案が示されています。

基幹教員は年間8単位以上などの一定以上の授業科目を担当する教員であり、過去の設置認可審査の考えももとに検討されているようです。

ただ、年間8単位とかは現状の兼任教員で結構いると思うので、そのあたりをどうするのか(基幹教員扱い→待遇も変わるのか?)など、大学でも給与規定や制度などを変更することが求められてくるでしょう。

(大学によっては兼任教員は年間7単位までとか制限をつける大学がでてくるのでしょうか)

TA/SAに関する事

授業に参加できるように設置基準を改正する、その場合は必要な研修も行う旨を合わせて規定すると述べられていますが、私立大学等改革総合支援事業ではTAやSAには研修の実施やマニュアルの必要性などが示唆されています。

さて、授業に参画できるとは何を指すのかが重要ですね。TA・SAなので既に授業にはいることが多いわけです。ここで国が考える参画はどのレベル(授業補助?講義実施?ファシリテーター?)なのかは今後注目していく必要があります。

実務家教員に関する事

実務家教員は定義が変わることがありがちですので、明確に定義をすることはよいかと感じます。特に業績の考え方については、自分のインタビューやエッセイを論文とする人もいますので。(中には、講義科目を担当したけど、15回のうち、5回ぐらいしか話をすることがなくて、あとは全部ゲスト講師を呼びたいとかもありますね)

単位制度の柔軟な運用

現状の制度でも、単位制度の遵守を前提として、柔軟な運用は可能ですが、大学設置基準だけを見ただけでは判断に迷う所がありました。(おそらく大学によっては文部科学省に相談をしている所もあるかと思います)

教育課程の特例制度

ここは大きな注目ポイントだと思うのですが、内部質保証体制が十分に機能していることとか、認証評価で適合しているとかが前提で考えられているようです。

ただ、認証評価機関によって、適合を取る為に同じであるという前提なのかという点は懸念点です。基本的には認証評価機関は国から認証を受けているので、すべからく同じであるという前提ではあるのですが、評価をやっている立場からすると、そんな評価の観点や評価方法で本当にいいのかと思う団体もあるわけです。

認証評価制度の改善・充実について

内部質保証について

自己点検評価の体制が整っているかだけではなく、自己点検評価と改善されたかを評価し公表する形と示されています。

認証評価機関によっては、評価結果を見ると内部質保証=自己点検評価なのかと思うところもありますし、大学の自己点検・評価報告書を公開していない大学(サイトにはあるけど、リンクが探しにくいところ)もあるので、通知などで明確にしてほしいと感じます。

認証評価の透明性の向上

認証評価の結果を大学のHP等で公表をあります。ただ既に認証評価機関連絡協議会の参加機関が実施した大学等の「評価結果」を掲載をしているので、ここを拡充してもいいのかなとも思います。

認証評価機関連絡協議会-Japan Network of Certified Evaluation and Accreditation Agencies (JNCEAA)

上記の協議会には、各大学の長所の一覧がありますが、改善事項の一覧などもあるとよりいいのにと思います。

柔軟性の向上

簡単にまとめると、内部質保証が優れている、透明性がある大学は、認証評価の負担を楽にしましょうというやつですね。でもこれも認証評価団体で内部質保証が優れているとする点は色々と違うので、そこをどうするのでしょうか。

情報公表制度の改善・充実の方向性

ここは全体として、大学ポートレートで情報の比較ができるように改善というのは、ようやく大学ポートレートの価値が出てくるかとおみます。

またここでは情報の公表の項目や発信などが出されていますが、個人としては大学のホームページから教育情報の公表が分かりにくい位置にあったり、悪意があるかのようにリンクが非常に探しにくいこともあるので、その辺りを改善として欲しいなと思います。

その他

その他で重要ななのは、基盤的経費の配分や設置認可申請等の定員管理についてを含め、入学定員に基づく単年度の算定としているものは収容定員に基づく複数年度の算定へ改める点でしょうか。そうすると中退が多い学科・学部があると色々とあるかもしれませんね。

ただ、学生が取れる大学は退学なども見込んで入学時に少し多く入学させるとか、より戦略的に定員管理が出来そうな気もします。