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評価担当者からみた教職課程の自己点検・評価のまとめと注意点

令和4年度より、大学の教職課程で自己点検・評価の実施及び公表が求められます。
教職課程の担当者は既に準備をされていることかと思いますが、今回は大学評価や内部質保証からみた教職課程の自己点検・評価のあり方や検討すべき事項について、私論として書いてみます。

なお、今回の資料としたのは「教職課程の質保証のためのガイドライン検討会議(第3回)会議資料」のガイドラインです。

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教職課程の自己点検・評価と内部質保証

教職課程の自己点検・評価の必要性は、ガイドラインによると次の様に述べられています。(下線筆者)

各大学の教職課程の質を向上していくためには、何よりも大学自身の主体的な取組が重要である。特に、自らの責任で自大学の教職課程の様々な活動について点検・評価を行いその結果をもとに改革・改善に努めるとともに、その結果を社会に情報公表し、教職課程の質を自ら保証するという内部質保証体制を確立することが必要

教職課程自身が方針や基準に則り、評価を行い、教職課程や教員免許を取得した学生の質の保証を検討し、公表、さらには改善することが求められています。

ただし、教職課程の自己点検・評価は、各教職課程と大学の教職課程をマネジメントする組織といった教職課程関連組織だけで完結するとは限りません

ガイドラインp1には「大学全体の内部質保証体制の充実に係る方向性と整合したものとすることが求められる」と記載されていまので、教職課程の自己点検・評価を検討する際は大学の内部質保証システムがどうなっているかの確認が必要です。

大学によって内部質保証システムは様々であり、受審している認証評価機関によっても内部質保証の考え方が異なります。例えば大学基準協会では、内部質保証推進組織がしっかりと内部質保証について手綱を握り、質保証をするために改善指示や改善支援をすることを求めています。
認証評価機関によっては、自己点検・評価をしっかりやっていればOKとみなしてしまう所もあります。

例えば大学基準協会で受審している大学の場合は、内部質保証推進組織が内部質保証の要です。図1には、略したオーソドックスな内部質保証の体制を示しました。

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図1 内部質保証体制例

図1だと、教職課程で自己点検・評価を行った後に、自己点検・評価統括組織で自己点検・評価の適切性について確認を行い、評価結果は内部質保証推進組織へ報告されます。内部質保証推進組織は、自己点検・評価結果に基づいて、改善案の策定や改善指示、改善支援などを行うといった流れになります。

教職課程の自己点検・評価は自分達だけで内部質保証が完結しているから、他に触れられたくないという意見もあるかと思うのですが、大学としての内部質保証を考えると、図1のようにどのように全学の内部質保証システムに組み込むかも検討が必要となるのです。

教職課程における教学マネジメント

令和4年4月より、複数の教職課程を設置する大学においては全学的に教職課程を実施する組織体制の整備が義務化されます。この組織の役割をどうするか、マネジメントをするのか、調整をするだけなのか、規程上あるだけなのかは大学によるでしょう。

ただ「大学としての教職課程」をどうすべきかは今後問われるでしょうし、外部評価(認証評価含む)で、各教職課程で科目名が全く異なるといったケースは何故授業科目の調整がされていないのかといった指摘もあるかもしれません。

また教学マネジメントとは色んな定義や考えがありますが、ここでは「教育について組織的に責任を取り、各取組みを有機的にする事である」とします。

各学位プログラムにある教職課程が独自の良い取組みをすることは推進すべきことですが、横の連携を図り、優良事例の共有や大学としてここまで(最低限)は共通でやりましょうといった方針や考えが求められるのだと考えています。

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ただ全学というのは組織によってかなり難しい課題の事もあります。手書きの枠があるので少し汚い図2ですが、緑色が教職課程だとしましょう。

B学科やD学科は教員養成を主たる目的とする学科ですが、他は違います。

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図2 教職課程と学科

そうすると、この赤枠で横並びに色々とやるのはかなり無理が出てきます。全学の教職の組織にどこまでやるのか、権限を持たせるのかは悩みどころですね。

教職課程の自己点検・評価

自己点検・評価は単に作文だけでは全く意味がありません。自己点検・評価を実質化するためには、せめて下記の5点は必要だろうと思います。

  • 組織的に自己点検・評価をしている
  • 現実的な改善案である
  • 評価の負担が少ない
  • 評価結果が第三者がみても分かりやすい
  • エビデンスが適切に示されている

またガイドラインにもあるように評価結果がFDやSDに活用されるといった事も不可欠です。

さて、ガイドラインでは評価について、各評価項目(評価の視点)で次について分析することを示しています。

  • 法令等により求められている事項の遵守状況
  • 積極的に評価することができる点
  • 改善を要する点

上記を反映したものとして、公開されている教職課程の自己点検・評価報告書を探してみると、大東文化大学は近いかもしれませんね。

www.daito.ac.jp

さて、点検・評価をする際に困るのは、その点検・評価の根拠はどこなのか?という事です。例えば「自分達は長所はこれである」としても、その事実はあるのか、第三者から見て長所といえるのか?といったことが分かるエビデンスは必要になります。

特にガイドラインでは自己点検・評価結果を外部からのフィードバックや第三者評価を実施することも期待されると書いてありますので、エビデンスを示す事は非常に重要です。

教職課程の外部評価

外部評価について、思いつくのは認証評価でしょうか。また大学が独自に行う外部評価もありますし、今回の教職課程の外部からのフィードバックや第三者評価は分野別評価に近いものであると考えます。

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図3 教職課程と外部評価

図3のように外部評価でも内部質保証システム全体(あるいは3つの方針に基づいた取組み)と、一部の分野に特化した外部評価などもありますね。例えば教職課程の外部評価だと島根大学の教育活動評価委員による教育学部外部評価がありますね。

学部教育活動評価委員による教育学部外部評価の分析 ―第八期(平成30年度・令和元年度) の評価票から― - 島根大学学術情報リポジトリ

自己点検・評価の間隔

自己点検・評価は毎年やれとは言われていません。認証評価の報告書などをみてみると、2~3年に1回自己点検・評価をしている大学もあります。

それでは教職課程の自己点検・評価の実施感覚はどうすればいいのでしょうか。

まず学校教育法で定められた自己点検・評価の間隔をふまえて行うことも検討する必要があります。またガイドラインには「毎年度行うことも考えられる」とありますので、出来れば毎年やることを求めているのでしょうが、評価対象によって実施間隔を変える事も考えられます。ただしガイドラインにもあるように、適切にモニタリングをしている必要があります。

モニタリングについては学位授与の教育の内部質保証に関するガイドラインのP14を参照してください

内部質保証 | 独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構 大学質保証ポータル

ガイドラインで示されている評価項目をみると教育課程だけではなく、理念から学生支援、人事関連まで幅広く提示されていますので、評価項目ごとに間隔を変えることも想定できます。

例えば、全ての項目を2~3年おきにやる場合は下記となりますね。

  2022年度 2023年度 2024年度 2025年度 2026年度
①教育理念・学修目標    
②授業科目・教育課程の編成実施    
③学修成果の把握・可視化    
④教職員組織    
⑤情報公表    
⑥教職指導(学生の受入れ・学生の支援)    
⑦関係機関等との連携    

また項目別に間隔を変える方法もあります。

  2022年度 2023年度 2024年度 2025年度 2026年度
①教育理念・学修目標    
②授業科目・教育課程の編成実施
③学修成果の把握・可視化
④教職員組織    
⑤情報公表    
⑥教職指導(学生の受入れ・学生の支援) 一部〇 一部〇
⑦関係機関等との連携    

上記は試案ですが、毎年やらなくてもいいかなと評価担当者として考えるところは2年置き(あるいは3年置き)で考えています。

上記はかなり大雑把ですので、本当はそれぞれの項目を細分化してそれぞれ定めていくことが必要です。

自己点検・評価の項目と組織レベル、組織連携

自己点検・評価の項目はガイドラインで示されているので、これが基本で大学の状況に応じて取捨していくのですが、項目=国が大学に求められる水準とみなすことも出来ます。

ただキャップ制の設定状況とか、教員業績の点検・評価の項目とかは結構たいへんですよね。仮に学科の改組があって、新しく課程認定を受ける時に既存の教員の業績が足りない場合は、自己点検・評価で何をみていたのかと国から指摘されてしまいます。

また組織レベル(大学・学科等・授業科目)も示されているので、どのように構造的に自己点検・評価を行うか、どの組織がどの項目を点検・評価するのかは最初に決定しておくことが肝要だと思います。

教職の自己点検・評価におけるIR

自己点検・評価にはエビデンスが不可欠ですが、様々な数値などは予めまとめておく必要があります。そこでIR担当者はどのようなデータを出せばいいでしょうか。以下は思いつく物です。

  1. 学生の履修データ(CAP制度に関連)特に履修単位数、科目数
  2. 学生の授業の事前事後学習時間(学修行動調査や授業アンケート)
  3. 各科目の成績評価データ(特に同一名称の複数科目)(学科や課程レベルも場合によっては必要)
  4. 履修カルテがWEBの場合は使用状況や内容が端的にわかるもの
  5. 教職課程の教職員数
  6. 授業アンケート結果
  7. 情報公表ページ(WEB)のアクセス(UUやPV、アクセス分析結果等)

これらのデータは通常の自己点検・評価でも使うものですので、集計表や報告書は出来る限り迅速にIR担当者は出せるようにor見られるようにしておく必要があります。

終わりに

教職の自己点検・評価は既に取り組んでいる大学もあるかと思いますが、評価担当者として思うのは評価をやることが目的となり、評価負担だけを増すのは好ましくない状況です。

来年度から教職の自己点検・評価が始まりますが、大学の評価部門と共通化できる手立て、既存の内部質保証システムとどうするかは早めに議論をしておくべきだと思うのです。