大学にはInstituitonal Research(IR)というデータを収集、分析、レポートをする部署があります。数年前は高等教育政策の誘導により、多くの私学でもIRを担う部署が置かれました。
ただIRは教員だと特任の人も多く、職員だと異動があって、機能を維持するのは小規模大学ほど難しいという課題があります。
またIRの担当でなくても、仕事をする上でデータを集めレポートをするという機会は往々にしてあります。ただ、出された分析レポートを見た時に残念だなと思うのが情報量が多すぎるという事があるのです。
「データの分析結果だから、情報量が多いのはいいじゃないか」と思う人もいるでしょうが、私自身は分析レポートは次の2つは押さえておくべき点かなと思います。
- サマリーなどでコンパクトに特徴をつかむことが出来る
- 一目見た範囲内で取得できる情報には限界があるので、コンパクトにする
情報分析のレポートなのに情報をコンパクトにするというのは矛盾があるように思いますし、人によってそれぞれ考えがあると思いますが、自分がやる時はこうするという参考ケースです。
サマリーはレポートには必須である
数十ページの分析レポートを会議に出されてもその場で読めるでしょうか?答えは「NO」というケースが多いと思います。
その分析の中でどういう特徴があるのか、組織として押さえておくべき数字は何があって、どのような結果なのかをサマリーとしてまとめる必要があります。
あと聞いた人がエキサイティングになる、ワクワクする、興味深いと感じるものを最初にぶち込む事も一つの方法かなと感じています。
サマリーを作るには単にデータの分析をするだけではなく、相手側との日常的なコミュニケーションからどういうもの(情報・分析結果)が求められているかも必要です。オフィスに閉じこもってデータをいじるだけではなく、よいレポートはコミュニケーションから生まれるのではないでしょうか。
コンパクトなレポートを心掛ける
極端な例ですが、こんなグラフを用意してみました。
見ていて非常にうるさい、情報量が多いスライドのように思います。情報量とは、数字やグラフの線だけではなく、一目みて脳内で処理する情報と思っていて、スライドのテンプレートがフルカラー、グラフの色使いが派手、とにかくごちゃごちゃしすぎなので、どこを見ればいいのかが分からなくなるのですよね。こんなグラフがA4の報告書にちりばめられていたらそれだけで読む気がなくなりそうです。
例えば最低限としてこの辺りは必要かなと思います
- テンプレートはシンプルにする
- Microsoft Officeの配色パターンはあまりいいものがないので公開されている配色パターンから自分のセンスを信じて設定する
- グラフは極力シンプルにする(数値は集計表で分かるのでグラフは読取り重視)
- PowerPointの場合は1スライドに図表は一つ、A4縦なら最大でもグラフは2つ
配色については自分は次のサイトをよく使っています。ここから6色パターンでイメージに合う物を設定していきます。
データビジュアライゼーションや見せ方にこだわってみる
近年はTableauのようなBIツールや無料で使えるPowerBIなどを使うケースもありますので、データビジュアライゼーションは非常にやりやすくなりました。
またデータの分布であれば、棒グラフだけではなく、ヒストグラム、箱髭図、バイオリンプロットなどの見せ方もありますし、Excelでもヒートマップもどきを作ることが出来ます。
例えば下記の図は2020年度の学校基本調査から出身校と進学先をExcelの条件付き書式で作ってみたものです。
細かい数字は必要ないですが、大学がある県はどこから来る学生が多いのか、もしくはどの県に行ってしまうのかをざっと確認する時に使うことを想定しています。
次はExcelのアドオンを入れて作ったものですが東北地方を中心に高校生がどこの県へ行ったのかを示したものです。
ちょっと変数が多く細かすぎるため、もっと焦点をしぼった図にする必要がありますね。
終わり
データ分析をする際に職人気質みたいなところも必要だと思うのですが、読み手の立場に立ったレポートをすることは非常に重要です。どんな難しい分析をしても相手が理解できないと意味ありません。
近年は大学のIRはどういうデータを集めるか、どのように分析するかは様々な講座がありますが、どのように報告するかはあまり学ぶ機会が少ないように思います。山形大学で行われているIR人材を育成する履修証明プログラムはそのあたりをしっかりとやっていますね。
またデータ分析をする際は、初心者は次の本が手元にあるといいかなと思っています。