2021年に大学基準協会よりこんな本が出版されました。
大学は法令により7年に1回認証評価を受審する必要があり、近年の認証評価では内部質保証の有効性について特にチェックがされます。(近年としましたが2018年からの第3期認証評価と本記事ではします)
さて、上記で紹介した本は大学基準協会で既に出版されている3つのハンドブック(内部質保証・学習評価・教育プログラム評価)ももとになっている、さらに大学基準協会の第3期認証評価の2年間の結果もいれた集大成というべき本でしょう。
例えば内部質保証の課題、教育プログラム評価、諸外国の質保証などがまとまっています。読者層はある程度大学で働いたことがある人でしょうか。今までハンドブックを買っていない人は組織として1冊購入してもいいかもしれません。
ただですね、内部質保証については大学全体(というよりは大学基準協会が受審した大学や全国調査)をもとに大枠や歴史、流れはわかるのですが、「教学マネジメントと内部質保証の実質化は結局どうすればいいのよ?」と思うわけです。
教学マネジメントや内部質保証は大学によって異なります。そして、設置形態などからも違うかもしれません。ここで画一的にこうあるべきとは出せないのかもしれません。また内部質保証はFDをやればいい、IRがあればいいというのでもありません。様々なものが有機的に繋げて、教育の向上や改善をする必要があるのです。
ここに書くのが答えというわけではありませんが、自分も内部質保証にかかるような仕事をしていますので、どうすればいいかをメモしておいてみます。
組織だけ整備しても内部質保証にはならない
大学基準協会では内部質保証を推進する組織があり、そこの実質化や役割の明確化が必要です。こんなのは規程を整備すればちょちょいと出来てしまいます。
それでは実質化するにはどうしたらいいのでしょうか?例えば人材育成や認証評価ではない大学が独自に行う外部評価の活用があると思っています。特に内部質保証をハンドリング(という表現は語弊がありますが)出来る人材は必要です。
だって、何も出来ない・しない人が内部質保証の組織に集まっても出てくるのは何もないですよ。
信頼しあえる組織づくり
内部質保証の基は自己点検・評価です。でも恐怖政治、統制政治、ミスしたら糾弾だけする組織だとミスは隠す、良いことだけを報告するようになります。そうすると改善のしようがなくなります。
また各組織を信頼して、ここまでは最低限はやってほしい、達成してほしいラインだけは明確にして、あとは各組織が目標に沿って自由にやってほしいということも必要かもしれません。
橋渡しできる、あるいは接着剤みたいな人
内部質保証の仕事とは何をする人でしょうか?課題だけを見つけて糾弾する人でしょううか?
例えば課題を発見して、どうすれば解決できるかを考え、必要な資源を手配し、自らあるいは該当組織に改善してもらうことがあると考えています。またAという組織に課題があった場合、解決するためにBという組織を動かしたり、知見の共有化をしたり、縦割りの組織をくっつけて、解決を測るのも仕事かもしれません。
ただこういう人は学内の信頼(経験や専門知識、役職)がないと難しいというのもあります。またトレーニングも必要でしょう。そのためには時間をかけてトレーニングすることも考えないといけません。(もちろん誰もできるようにSDをしていくのも手です)
内部質保証を具体化やブレイクダウンする
内部質保証は、実際に上記のように橋渡ししている人や評価団体で評価委員をやっている人でないとわかりにくいと思うのですよ。大学として内部質保証をするではなく、具体化をしてみたり、定義をブレイクダウンをしてみる必要があると思います。
劇薬投入ではなく、体質改善を目指す
大学が内部質保証をしますといっても、いきなりすべてを変えるのは無理ですよ。できれば体質改善のように数年かけて変えていくぐらいのスパンで物事をみるのがいいと思います。
自分の場合は1年後あるいは3年後を見すえて、そのために仕込みを行い、切り札も何枚かつくり、会議でくつがえらないように自分自身も知識をみにつけるよう努力していますが、それでも出来ないものもありますね。
学内全体で組織がどう動いているかを確認する
部署長レベルだと、大学全体の会議に参加したりして、組織での意思決定がどう動いているかが分かるのですが、担当者レベルだと中々理解することが難しい、そもそも知ることがあまりないかもしれません。
何となく、上からこんな事しろという文書だけ来て、何も分からないまま目の前の仕事をするだけでは、内部質保証を組織としてうやっていくことは難しいかもしれません。内部質保証は個別最適化ではなく、組織やその機能をどのように良くしていくか(含む最適化)を考え実行する必要があります。
内部質保証を理解してもらえないではなく、この観点からまずやってみてもいいかもしれません。