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2021年4月以降の運用に関した授業目的公衆送信補償金制度に関するオンライン説明会のメモ

2020年に授業目的公衆送信補償金制度についての説明会があり、2021年度にかかる予算等についても気にされていた人が多かったと思います。多くの団体や学校法人等で予算を取っているでしょう。

また2021年度1月は一部の地域で非常事態宣言下にあり、来年度も遠隔授業の実施をすることも可能性の一つとして考えている学校や大学もあるかと思います。関連するのは標記の制度に関するもので、説明会が1月29日に行われましたので、学校や大学で該当する所のみ簡単なメモを個人の備忘録としてまとめておきます。

※6000人もの申込みがあったそうです。(視聴は4000人前後だと思います)

※資料をそのまま読んでいるところはあまり記録していません。

なお下記から資料等はご覧になれますので、資料外のコメントや重要な箇所と思われた点のみの内容となります。

sartras.or.jp

また前回の説明会はこちらの記事をご参照ください。

www.daigaku23.com

制度の概要、補償金額の認可、財政支援について

・利用保護と利用の円滑化のバランス

・著作権を持っているとは、誰にいくらでどういう条件で利用させることが出来る、他人が無許可で著作物の利用を禁止出来るということ。

・著作権法第35条には5つの条件がある

  1. 学校等で営利を目的としないものが対象、つまり塾や予備校は認可の対象にならない
  2. 対象主体は教育を担当するものと授業を受けるもの、事務職員が補助者として行うものはOK、教育委員会は✗
  3. 利用の目的は授業に使うもの(部活動はOKだけど、職員会議は駄目)
  4. 対象行為は複製や、公衆送信、公に伝達(ネット中継で大型ディスプレイに見せるなど
  5. 上記4つを満たしていても著作権者の利益を不当に害しては駄目

・この制度で対面授業の予習復習用の資料をメールで送付したり、オンデマンド授業で映像や資料を送付できるようになった。

・ドイツやフランスなどでは、複製も有償となっている。

・制度の意義として、適切な対価還元により、創作の活性化と質の高いコンテンツが生まれ、教育の質向上にもつながる。

・本制度はワンストップの指定管理団体に申請をするコンテンツのサブスクリプションである。

・この制度の円滑な運用のために著作物の教育利用に関する関係者フォーラムで議論をしている。特に「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」を公表している。

forum.sartras.or.jp

・認可された補償金額は年間包括料金と都度払い(1回1人10円)の選択が可能。大学は720円、高校420円など。また金額は全学一括ではなく、一部のクラスや学年を指定でも可。

・利用実態調査の実施をふまえ、補償金を分配する。

・文科省からの支援として、認可された補償金ベースで運営交付金や私学助成など支払いに必要な支援がある。大学の場合、文科省へは私学は私学助成課が担当。公立は大学振興課公立大学係。

補償金を払わない場合の罰則に関して、教育に関わる人には正しい対応を期待している、また刑事罰はないが損害賠償は可能性としてある

改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)について

指針は全てが確定したものではなく、2020年6月〜12月までの検討を現状報告としたものである。引き続き検討が必要な事項も含まれていることに留意が必要。指針は常に最新版を参照する必要がある。

・授業担当者の主観だけで判断するのではなく、客観的に説明できる必要がある。読んでおけば参考になる文献について公衆送信することは必要であると判断はできない。

・著作権者の利益を不当に害することとならないようにすること。

・「著作権者の利益を不当に害することとなる」 に大幅加筆がされている。(指針のP9)

大学はP14以降(〜P19)に考え方や説明が記載されている。例えば論文等の利用についてなど。大学関係者はここは必読。(詳細にここの部分について説明されていましたが、本メモでは省略)

・SARTRASではライセンス事業をはじめる準備をしている。

・この制度で制限が増えたのではなく、無許諾でできることが増えた。

・広報動画とかに著作物が写り込む場合は個別に許諾が必要なために注意が必要

・保育園の場合は遠隔で絵本の読み聞かせなどは該当する。

・教育委員会による著作物を含む動画について、学校への配信等は著作権者の許諾が必要と考えられる。

・同僚教員であっても、他者の著作物を含む教材を共有する場合は著作権者の許諾が必要。

・出所(出典)の明記をこころがけてほしい(初等中等教育の箇所で説明)

一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会の組織体制について

・著作権法第104条の11に基づく組織(団体)

・各団体の代表やクリエーターの人が理事になっている。

・SARTRASは総会→理事会で、その下に業務振興タスクフォース、分配委員会、共通目的事業委員会がある。

・SARTRASの運営費は補償金収入の管理手数料で賄う。

4月以降は補償金等手続き受付システム(TSUCAO(ツカオ))が稼働し、ネットで手続きが出来る

7月以降に教育機関に利用実態報告の依頼をしていく(全国1000校が対象)

授業目的公衆送信補償金の支払い手続き・権利者への分配方法について

・補償金算定対象者=学校等にいる生徒・学生すべてではない。学校が状況に応じて人数の申請をする。

・補償金額(学校種別で設定)×人数(補償金額算定対象者)×消費税=支払額

・補償金算定対象者の総数は5月1日の在学する人数(年度途中でも申請できる、あるいは災害等で1ヶ月以上授業ができないときは返金等の措置もある)

・大学の公開講座などは包括補償金がある。前期と後期の2回に分けて申請をする。

・異なる教育機関間の遠隔授業はどちらかが払っていればいい

・法律に基づく過疎地域を対象とし、減額となる制度もある。

・履修証明プログラムや科目等履修者も減額(50%)対象である。

・手続きをした教育機関名は下半期にSARTRASで公表することを予定している。