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ハイブリッド型授業のイメージの違いと定義の必要性

(どこに大学があるか、大学の規模、学部学科(あるいは専門分野)によって状況はだいぶ異なるでしょうが)、2020年度前期は面接・遠隔授業を併用でやっていた大学は「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた大学等の授業の実施状況」によると7月1日時点では約6割となっています。

また2020年度後期はほぼ全ての大学が対面授業を実施すると「大学等における後期等の授業の実施方針等に関する調査」で示されています。また後期の授業は、出来る限りの新型コロナウイルス感染拡大防止に努めながら、対面授業を徐々に増やしている大学もあるでしょう。さらに、遠隔授業と対面授業を組み合わせたハイブリッド型授業を行っている大学もあると聞きます。

ただ、大学が考えるハイブリッド型授業と10/16の文部科学大臣が記者会見でおっしゃっていたハイブリッド型授業はどうも齟齬がある気がしてなりません。

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ハイブリッド型授業はどのようなものをイメージするか?

大学の授業はセメスター(半期)で2単位の場合は90時間の学習が必要です。90分授業の場合は15回にわたって授業を行うことが殆どだと思いますので、2単位の講義科目の場合は次の図のようなイメージとなります。

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さて、ハイブリッド型授業の場合、10/16の文部科学大臣の記者会見を聞いていると学生が対面とオンラインの授業を選べるようにという意図があったかのように感じ取れました。これをイメージにするとこんな感じになります。

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受講者は対面と遠隔で同時にやっている授業の場合は好きな方を選べるわけですね。この形態だと、教室の授業をZOOM等でオンライン配信するというものが多いでしょうか。

ただこれには教員側の負担がかなりかかります。対面授業をやりながら、遠隔先の事も気にしないといけなくなり、阿修羅像のように三面六臂になるか、並列思考のスキルを身に付けないと大変ではないかと思います。

言うなれば2つの授業を1つにまとめてやっている訳です。対面授業と遠隔授業では取れる手法も異なります。前期は遠隔授業をやったから、後期はハイブリッド型でいけるだろうではなく、対面と遠隔を同時に行う新たな手法の開発や教育支援が必要となるのです。

ただハイブリッド型といってもこんなタイプもハイブリッド型と捉えることもあるかもしれません。

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上記は対面授業を基本としながらも、遠隔授業(クリーム色部分)も入れて、15回のうち6回を遠隔授業で行う場合です。

ただ「主として面接授業を実施するものであり,面接授業により得られる教育効果を有する」から対面授業であると主張することも出来なくはなさそうではあります。

こちらについては、対面+遠隔として取り入れている大学もかなりあるでしょう。時間割も教室を使う予約(シフト)も毎週組む必要がありますが、比較的やりやすい方法です。

課題はハイブリッド型の定義がないこと

「ハイブリッド型授業とはどのようなものか?」は明確になっていないように思います。教育再生実行会議 高等教育ワーキング・グループ第1回には「対面と遠隔の双方の良さを組み合わせたハイブリッド型の教育」という文言も出てきますが、

結局は各自がハイブリッド型授業とは何かを捉え、どのようにすれば最善かをふまえて教育を行っています。このような状況下では環境は変化しますが、国がハイブリッド型授業を求めるのであれば「大学としてよきにはからえ」ではなく、きちんと定義を定めておくことが後期の残りの授業や次年度の授業の検討に活かせるなど学生・大学双方にとってメリットが多くあると思います。

文部科学大臣の発言をうけての気になる事

対面授業が出来れば、友人と語らえるのか?教員に質問できるか?

さて、最近の論点として文部科学大臣は学生の厳しい現状に友人との語らいや教員への質問をあげていました。教員への質問は対面でなくともチャットやZOOMでのオフィスアワーをしている場合もありますので、オンラインと対面でもあまり差はないと考えています。

友人との語らいはどうなのでしょう?少なくともサークルや部活はある程度活動は出来ていますが、以前のようにとはまだなっておりませんし、授業も必要な時だけきて、図書館も個別で勉強するだけ、食堂は原則個別ブースで会話しながらの食事はしないようにお願いしているなど、友人と語らう機会は対面授業をやっていても現状では難しい状況があるかと感じています。

ここは対面授業ありきではなく、大学として学生支援の観点から別の方策も併せて考えるべき点です。

学習の質から学生の満足度・納得度へ

2020年度前期は遠隔授業の質という大きな論点がありました。ただこの質とは何かは人によってそれぞれであったのではないか、例えば個人が期待していたものという意味もあったのではないかと感じます。

この2020年度後期は遠隔授業の質ではなく、文部科学大臣が学生の満足度や納得度と言われたことで、論点が質から満足度や納得度にシフトしたようにも思います。満足度や納得度も大切だと思いますが、満足してもらえればいいという大学ではなく、この大学を卒業したら、定めた方針に従ってきちんと知識・能力やスキルが身につくという事も大切だと感じます。