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授業目的公衆送信補償金制度に関する文化庁とSARTRASのオンライン説明会のメモ

授業目的公衆送信補償金制度は教育機関の設置者が一人辺り数百円を支払い、教育に関してのコンテンツのサブスクリプションという位置づけの制度です。既に制度は2020年度から始まっていますが、2020年度は無償であり、2021年度から本来の制度として有償になります。 

さて、2020年10月7日に本制度のオンライン説明会がありました。この説明会は多くの人が興味があったようで、説明会の最初にあった文化庁著作権課課長の挨拶の中で3500人が参加登録していると報告もありました。 

さて、この説明会は制度の概要説明や運用が主な内容です。本メモは説明会で話された内容についてですが、制度の概要は既に資料等も出ておりますので概要説明の箇所は割愛します。(既にSARTRASの公開資料等で分かる内容は本メモから省略)

また聞き逃しや間違いがあるかもしれませんので、その点はご了承下さい。

授業目的公衆送信補償金制度のスケジュールや補償金の負担について

9月30日にSARTRASが文化庁に申請を行い、文化庁長官による保証金の認可、運用スキームが決定され、運用開始となる。

文科省でも保証金負担の軽減のための必要な支援として、財政支援を検討しているそうです。具体的には初等中等教育・公立大学などは地方財政措置を要望し、大学(国立・私立)や高等専門学校は概算要求に盛り込んでいるとの事です。文化庁からは年末の予算編成次第ですが、各学校で適切に予算編成をしておいて欲しいと要望が出されていました。

私学関連予算の資料を見ているとそのものの名称がついた事業はありませんが、一般補助に「対面授業と遠隔授業の組み合わせなどコロナを踏まえた大学教育の取組を支援」とあるのでこの事でしょうか?

授業目的公衆送信補償金制度の運用について

一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会から制度の運用についての説明がありました。主な内容は下記となります。

・本制度の特徴として非常に広範囲な権利者団体が参画している。

・保証金の算出根拠は大学だと学術著作権協会の使用料規程をベースに算出している。

<参考>学術著作権協会 使用料規程

大学の使用料は各学校からの意見徴収を踏まえて、80円減額し、720円としている。また、特に義務教育では減額率を大きめに設定しているとの事。これは税別との事です。

補償金制度の支払いは学校の設置者が支払い、金額は利用した人数で包括的に算出する。つまり学生数ではなく、利用した人数との事。

 ただ利用の人数は大学として把握をどうするかが課題になりそうなので、予算は最大人数(生徒数・学生数)で取っておくしかないですね。

・公開講座は算出方法が別で1講座30名を1単位、10単位300名で補償金額が3千円。詳細は授業目的公衆送信補償金規程(案)のP6に書いてあります。

 このため、公開講座を担当する部署は予算をきちんと申請して確保しておくようにしましょう!

・各権利者に正確に分配を行う為、実態調査が不可欠。ただ調査負担は数年置きとして、出来るだけ負担軽減を図るように検討している。

・現在、著作物の教育利用に関する関係者フォーラムで著作権法第35条に関する運用指針の検討を行っている。指針は初等中等教育、高等教育などワーキング・グループが分かれているので、おそらく指針も分かれるのではないだろうか。

・補償金を補完するライセンスを準備中との事。これはSARTRASが集中管理を行う。ライセンスによる恩恵として教員間や教育機関間の著作物の複製・公衆送信など教材の共有や、研修、保護者会なども関連する。(現状の制度だとFDやSDは適用されない)

・審査は法定機関で三ヵ月なので、年内に文化庁長官から答申が出る

授業目的公衆送信補償金制度のQ&A(質疑応答)について

ここからは質疑応答で出た質問やその回答メモです。()内は自分のメモや意見です。

・本日の資料の配布について

文化庁とSARTRASの資料は後日SARTRASのサイトで閲覧できるようになる。

・設置者の状況に応じて活用しない選択肢はあるか?

文化庁→本制度は遠隔授業を行う場合に補償金が発生する。学校法人が判断するところではない。

(この質問の前提として、著作物を利用するけど、別々に支払うという意図だったと思います。)

・同一敷地内の授業の配信について授業の配信について制度の対象か?

学校内部のサーバーを介しての配信のみであれば制度の対象外、外部サーバーを介する場合は本制度の対象内。

(つまりイントラで教室や建物間の配信は対象とならないけど、ZOOMで配信をする場合は本制度の対象という解釈でしょうかね。今は密を避けるために複数の教室に分かれて授業を配信するといった事も行われているようですが、その場合は補償の対象となるようです)

・外国の著作物やSARTRASが管理していない著作物について

国内外の全ての著作物が対象で、制度内で外国の著作物を利用することも可能となっている。SARTRASに参加していない権利者団体の著作物や著作者についてもSARTRASが補償金請求権を有している。

・補償金を支払えば著作物の利用は制限がないのか?

一定の条件・範囲に基づく、今後指針がでるのでそちらを参照。

・講師自身の著作物を自身の講演で用いた場合は制度の対象か?

自己の著作物を自ら利用する場合は本制度の対象外である。

・オンデマンドでの配信は購入した副教材を利用する場合のみでも制度の対象か?

購入していても、本制度の対象となる。

・制度とは別に学校間の共有できるライセンスの検討の方向性について

ライセンスについては、2021年度の4月からスタートする予定で、同じ教員間、同じ組織内の学校間(例:教育委員会下の学校間)などが対象。今後教育機関にも意見を伺う予定。

(説明だけでは今一理解が完全には出来なかったのですが、例えばプラットフォームでの共同授業や、法令が変わって可能となる教職課程の共同開講を行う場合は制度やこのライセンスが適用されるかどうかは調べないといけないですね)

・制度に関する罰則規定はどのようになっているか?

義務を履行しなかった場合の罰則はない。ただ民事的な責任として債務不履行、SARTRASから補償金や賠償金の請求がいく可能性がある。

・法人単位ではなく、学校単位でも申込は可能か?

教育機関の設置者が支払いの義務者であるというのが法で定められている。

・私立学校の場合は直接支払うのか?

私学は学校法人が登録し、支払うことになる。

・設置者単位となる場合、遠隔授業を行う学校のみの申請でいいのか?

GIGAスクール構想があり、その場合は全員が対象である。対象外があれば、制度に含めなくてもよい。

・予算削減のために、一部のクラスなどの届出も可能化?

本制度を利用する人数のみを届け出る。

・利用予定でなかった学校が、年度途中で活用する場合は年度途中で申込できるのか?

年度途中で申込できる。補償金は月割りで支払う。

・令和3年度について届出は5月1日以降だと考えるが、4月1日から本制度を活用していいのか?

本制度は申込・支払いが終わる前から活用できる。

・補償金の金額と決定時期は?

2020年以内に認可されることを希望している。

・無償機関の間に届出をしている場合、来年度の有償機関も自動継続なのか?

申し込みは年度ごとに行う。2020年度対象としても、2021年度は対象としない事も可能。

・著作物の利用報告について予め準備することはあるか? 

利用状況調査は毎年同じ機関に求めないが、対象は無作為となる。教員の先生にはどのような著作物を利用したかを記録しておくのが望ましい。

終わりに

まずやらないといけないのは生徒・学生数に併せて予算の確保をしておく事ですね。予算がないから、一部の生徒や学生のみというのは、授業が始まったら実が違うという事が起こりそうなので、全員を対象として補償金を支払い、義務を果たしたほうがいいのではないかと思っています。

またどの授業が遠隔なのかは教務でチェックしていますけど、著作物の活用については破棄しないように予め周知しておくことも必要ですね。