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2021年度以降の大学の教育研究の充実に向けて検討すべき事、行うべき事のメモ

2020年度の大学の教育は新型コロナウイルス感染拡大防止により、教育を止めないことを第一として、(例年より2~3週間授業開始は遅くなったけど)急遽オンライン授業を行い、出来る範囲で対面授業をしています。 

では2021年度以降はどうかというと、他大学の方々と話をしていても、私の所属組織でも全てが元通りになるとは考えてはいません。その為には、秋から冬にかけて次年度予算策定時期に次年度の構想や今やるべきことなどを洗い出しておく必要があります。今回はそれを少しまとめたメモです。

大学の教育について

まずは大学教育についてです。課題は沢山あるのですがその一部のメモです。

オンライン授業も見据えたハイブリッド授業の実施

2020年度9月(10)以降に始まる後学期では、対面授業の科目やオンライン授業をやる科目、もしくは一部の回は対面だけど残りはオンライン授業という科目があります。おそらくこれは2021年度も(対面とオンラインの割合は異なるでしょうが)同様になるかと思います。

その為には時間割の検討、オンライン授業に合わせたシラバスの検討、オンライン授業用の授業アンケートの検討及び実施、オンライン教育における適切な1クラスサイズ(履修者数)の設定、TA/SA等の増員と育成研修の実施など検討すること・行う事は沢山あります。

例えば時間割では、対面とオンラインが併用する中で学生がきちんと授業を受けられる目線で時間割編成を行うことも必要です。(既に後期はそのように時間割を組んでいる大学がほとんどだと思います。)

また授業毎に行っている授業アンケートについては、2020年度の状況を聞くと授業アンケートをやらずに遠隔授業に関するアンケートを教員や学生に行ったという大学も少なくないようです。ただ対面授業も一定割合になり授業アンケートが復活しても、対面授業用に作成された調査が遠隔授業にそのまま使えるかは精査が必要です。

 

例えば私がいる機関では今年度も一部の設問では遠隔授業の実態に合わないから無回答も可能としたりしています。もしかすると対面用授業アンケート・遠隔授業用授業アンケートを別々に設定する必要があるかもしれません。

 

またオンライン授業は教員1名で運用するのは、課題確認とフィードバック、遠隔授業のハンドリングなどかなり無理があるケースが散見されました。適切な1クラスサイズの設定もしなければなりませんが、TAやSAの積極的な活用とその研修、また人件費の確保は前年度の予算編成時にしなければなりません。

よく「TAを増やせ」という声もあるのは承知していますが、研究大学や理系大学ではなく文系大学だと院生はあまりいないorいても社会人が多いとTAの数は確保できないこともあるのでSAを育成することも手かと考えています。(こういうのは外注すればいいと安易に言う人がいますが、それは予算も含めいくつも課題があります。)

最後に教員の負担についてですが、今までは教員の年間の最低受け持ちコマ(授業)数がきまっていて、一定以上のコマを担当すると別にコマ手当が出ていました。つまり授業数で負担が見られていたという考えもあるのですが、今回のオンライン授業などできめ細かな課題添削やメール等の質問対応で履修者数が多い科目を受け持つ先生の負担は過大なものがありました。気になって所属組織の各教員の全担当科目の総履修者数を出すと数十倍の差もあり、課題の一つであると認識しています。あと手当すべきは兼任教員ですね。

オンライン授業を卒業単位に含める為の学則変更

2020年度や2021年度は文部科学省からの事務連絡でオンライン授業も留意事項を踏まえていれば対面授業として取扱、大学設置基準に定められたメディアによる授業は60単位までに算入する必要はありません。ただ2022年度以降もオンライン授業は消えることはないでしょう。そうすると卒業単位にオンライン授業の単位を算入するには学則にきちんと定める必要があります。

例えば同志社大学の学則に該当の内容が入っているのが確認出来ます。

学則の変更は、文部科学省への届けも必要ですし、毎月変更をするようなものではない為、どこかのタイミングを見計らって変更する必要があります。

大学の教育研究の環境構築について

オンライン授業を行うにあたって、自由に使えるPCがない学生がいる、Wifi環境がない学生がいる、スマホのモバイルの契約データ数では限界があるなど課題がいくつもあります。大学内でもオンライン授業を受けられるようにWifiのアクセスポイントの増設や、貸出PCの整備などを行っていますが、個々のニーズにあった環境構築はまだ先かもしれません。そうすると考えられるのは、今までの大学の施設設計や考え方からの転換、BYOD(Bring Your Own Standard Device)の導入などがあります。

小教室やアクティブラーニング教室からソーシャルディスタンスとオンライン授業を踏まえた環境構築

これはファシリティマネジメントにも入りますかね。さて10年は、講義は〇〇〇人までと定め、昔の様に500人の講義はなくなりました。代わりに小規模・中規模クラス開講用の教室をつくったり、自由に移動できるイスをいれてアクティブラーニングがしやすいように教育環境の構築を行ってきました。

ただ今は教育環境の構築は大きな転換期となり、余裕を持った教室が必要になり、今後建物を建てるor改装するor設備のリプレイスの時は新しい教育環境を踏まえる必要があります。ただ、先に投資すべきなのはインターネット(特に回線の太さ)や教育システムなどですね。 

BYODの検討

大学によってはBYOD、つまり学生自身のデバイスを学習に使う、そのためにPCの購入を求める大学もあります。このBYODですが大学ICT推進協議会「BYODを活用とした教育改善に関する調査研究結果報告書」を見るといくつか種類があります。代表例をあげると以下があります。

・教育機関所有の端末を貸出する

・学生に統一した端末や機種を購入させる

・必要な性能を提示し、学生個人が用意する。

・学生が自由に端末を用意し、それを活用する。

ただ学生にPCを用意しろといってもBYODがうまくいくとは限りませんので、情報支援体制をきちんと整備することが不可欠です。またPCを用意してもらっても、教育(授業)で使わなければ用意してもらう意味はなくなってしまいます。単に学生にPCを用意して欲しいというお願いだけではなく、学内に対してもBYODを行う上で情報環境の構築・教育での利活用なども併せて進める必要があります。

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入学前からの学生支援

SNSで大学生の呟きを見ていると友人がいない、孤独感を感じるなどです。大学では相談センターなどが必ずありますし、連絡をもらえれば相談することが出来ます。また学生支援という観点からも検討が必要なのではないかと思っています。

新入生は例年であれば3月に行う入学前教育セミナーや新入生ガイダンス・セミナーなどで友人関係を構築することも多いのですが今年はそれが出来ませんでした。友人作りは大学の主目的ではないという意見もありますが、学生支援という観点からは何らかの方策が必要です。例えば1年次は必修科目が多いのでラーニングコミュニティを取り入れ、SAやTA、アドバイザー制度と絡めるといった事も考えられるのではないかと思っています。

 

入学前教育での情報教育の実施

入学前教育というと、リメディアル教育の一面や仲間づくりの一面があります。またプログラムを見ろと国語や数学、理系など化学・物理・生物等を行い、入学時に必要な能力や知識を担保できるようにしている大学もあるでしょう。

ただ、今回のオンライン授業の導入で学生の中でICTスキルに大きな差があるという課題もある、1年次前期の情報の授業でICTスキルを涵養するには時期的に遅かったという課題を踏まえると入学前教育で情報に関する入学前教育を導入してもいいのではないかと感じています。

また入学前教育は一律に同じものが多いですが、入学手続き者の知識や能力によってカスタマイズ・個別最適化した入学前教育なども実施できるのではないかといった事もあります。

終わりに

今回は教育に関するものをいくつか挙げてみましたが、他にも社会連携・社会貢献活動の見直しや事業の取捨選択などもあります。特に大学は何かを辞めることは不得意だと感じていますが、限られた予算の中で教育研究や環境にお金を配分する為に事業や予算の選択と集中を厳しくしなければなりません。

大学の中の人でも予算は無尽蔵にあると思う人もいそうなのですが、ここ数年で消費税増税や定員超過が厳しくなったこともあり、収入は減り&支出は増えています。最近は大学で連携してコスト削減をいう風潮もあるのですが、あれも分野と場合によるのであって、余計な人件費やコストがかかることやリスクも想定できるので、慎重な議論が必要だろうと思っています。