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【私論】シラバスは変えてはいけないのか?~変更不可は文部科学省のせいなのか?~

2020年度は新型コロナウイルス感染拡大防止の為に、多くの大学では対面授業から遠隔授業の対応を行ったり、おそらく6~7月から一部の授業については実施をしているでしょう。

さて、そこで聞かれるのがシラバスの扱いについてです。シラバスは学士課程答申の用語集によると次のように説明されています。(下線は筆者)

各授業科目の詳細な授業計画。一般に,大学の授業名,担当教員名,講義目的,各回ごとの授業内容,成績評価方法・基準,準備学習等についての具体的な指示,教科書・参考文献,履修条件等が記されており,学生が各授業科目の準備学習等を進めるための基本となるもの。また,学生が講義の履修を決める際の資料になるとともに,教員相互の授業内容の調整,学生による授業評価等にも使われる。

シラバスを履修前に示し、学生が事前事後学習や授業内容の課題を確認したり、科目間連携に使うといったことが建前となっています。

さて毎年度聞かれる事ですが、履修する学生によって内容が変わるからシラバスを変更したいといった申し出があります。特に2020年度は授業が遠隔に変わったことでシラバス変更を余儀なくされることがあったかと思います。

しかし、シラバスの変更は認められないといった回答をするorされるということもあるでしょう。では本当にシラバスは変更してはいけないのでしょうか?
(今回は私学の一個人からの立場で書いていますので、大学によって状況は異なります。)

シラバス変更を阻止する制度は何か?文科省なのか?

シラバスを変更する際に「文部科学省から言われているから、変更できない」という理由が多いのではないかと推察します。

ただ、この回答は主語が大きすぎる気がしてなりません。例えばシラバス変更の申し出があった場合、こんな確認を自分はしています。

  •  該当学位プログラムは設置されたばかりで完成年度を越えているか(設置は認可or届出)
  •  該当科目は資格に関する科目
  •  シラバス変更理由は何か?

設置されたばかりの学位プログラム(学部学科)か

まだ出来たばかりの学部学科の場合は、シラバス変更は非常に慎重になります。つまり、学部学科をつくる時に文部科学省には「こういう計画で学部学科を作ります。」と申請をしています。

コロナウイルスのような件でなければ、シラバスを好き勝手に変更することは文部科学省から4年間の見通しをたてて設置できなかった理由を問われる可能性があります。つまり履行状況等報告書や実地調査で指摘がされる可能性は否定できません。

特に認可申請(元となる学位プログラムがない)場合はシラバスも申請資料として提出するために非常に慎重にならざるを得ません。

資格に関する科目か

資格に関する科目の場合も慎重になります。例えば、ある資格で必要な知識を習得することを目的としている場合、申請時に定められている(教えなければならない)内容が含まれていることを証明するためにシラバスを提出しています。

ただ、民間資格などの場合で非常勤の先生が担当し、うまく引継ぎが出来ていない場合はその科目が資格課程に関する科目だと知らないままシラバスの変更の申し出をされることが考えられます。(よくあるのは数年後にシラバスをみると、教えなければならない内容の一部が欠けることですね)
資格に関する科目であれば、授業内容を変更することはいくつかの確認作業が必要です。

ただ設置認可であれ、資格科目であれシラバス変更は決してダメではないでしょう。ただシラバス変更は担当教員がシラバスを変更して公開すればいいだけではなく、変更して大丈夫か、どこまで変更するのかといった事は学位プログラムや資格課程としては必要でしょう。

そもそもシラバス変更はダメという事を文科省のせいにしておけば、反論しにくいだろうというのもあるのかもしれません。

シラバスの何を変更するのか?

シラバスの変更をする際に「シラバス変更は認められない」と言うではなく、シラバスの何を変更するのかは確認すべき重要な点であると考えています。

カリキュラムは体系的・順次性があることを前提に構成されています。そしてある科目の到達目標は、他の科目と整合性がつくものでなければなりません。例えば(極端な例ですが)「〇〇入門」という科目なのに、既に〇〇について勉強したことがある人を対象とした到達目標にしてはならないのです。

そこで到達目標については変更することは非常に慎重になります。一方、授業方法や授業内容については、大学が定めているシラバス作成要領に則り記載されているのであれば、変更はありうると考えています。

到達目標達成への道は一つではなく、外部環境の変化や学生によって変わる可能性はあるでしょう。その為、例えば授業内容の一部を変更する事はよくある事でしょう。

つまり、到達目標(あと評価)を変更することは学位プログラムから鑑みると難しいが、教育内容や方法はその時の状況によって変更もありうるのではないでしょうか。(例えば、短期留学をする科目だけど、今回は国内とか他の手段をとる場合、到達目標を達成できるようにシラバスを変更することも考えられます)

いつシラバスを変更するのか?いつ周知するのか?

シラバスへ前年度の12~3月に作成がされ、3月下旬には在学生には公開がされます。その後、授業が始まりシラバス変更をしたいという場合、どこを変更するのかを慎重に見る必要があると考えます。

例えば既に終わっている授業回のシラバス変更はまずないでしょう。おそらくは今後の授業内容や方法が主な変更対象箇所であれば変更できるかもしれません。

またシラバスを変更した場合は、履修者には確実な周知が必要ですし、可能であれば、「いつ・どこを変更したのかを明記しておくこと」も必要でしょう。

終わりに

シラバス変更は到達目標の変更は慎重な議論は必要だとは思いますが、大学外の環境はどうなるか分からない時においては柔軟な対応が必要ではないでしょうか?単にシラバス変更は認められませんという組織は、硬直化しているのではないでしょうか?