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文部科学省や大学におけるデジタルトランスフォーメーション

2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、4月から当面は対面授業ではなく遠隔授業が行われています。

大学としては遠隔授業のために様々な設備を整備したり、人的リソースが足りないなどといった課題や、学生側もデータ通信量が厳しい「ギガ問題」やパソコンがタブレットがない為にオンデマンド型や双方向型(例えば同時配信型)などの授業を受けることが厳しいといった状況もあります。

大学が持つ資源(お金や人、設備等)も限りがあり、国の支援を求めていました。令和2年度の補正予算では「学校休業時における子供たちの「学びの保障」」として、「大学等における遠隔授業の環境構築の加速による学修機会の確保」が令和2年度は補助事業として各大学に通知されています。

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出典:文部科学省,2020

さて、この通知書を見ると補助金の申請で遠隔授業の実施計画で「短期は新型コロナウイルス感染症対策として、中長期は大学等のデジタルトランスフォーメーション(DX化)を見据えて」と書かれています。

デジタルトランスフォーメーションとは何か?

デジタルトランスフォーメーションは大学ではあまり聞かれない言葉ですが、 デジタル大辞泉によると次のように説明があります。

IT(情報技術)が社会のあらゆる領域に浸透することによってもたらされる変革。2004年にスウェーデンのE=ストルターマンが提唱した概念で、ビジネス分野だけでなく、広く産業構造や社会基盤にまで影響が及ぶとされる。デジタル変革。DX。

"デジタル‐トランスフォーメーション【digital transformation】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-05-20)

これだけだとよく分からないのですが経済産業省に「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月7日)が公開されています。ここでは、例えば「新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して~略~価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」とIDC Japan 株式会社の定義を紹介しています。

このレポートでは現状の課題や対応策について記述されていますが、経済産業省ですので大学に対する記載は産学連携による課題解決のみとなっています。

またデジタルトランスフォーメーションの構築や取組を進めるうえでデジタルトランスフォーメーション推進ガイドラインが策定され、経済産業省のサイトで公開されています。

文部科学省のホームページ上のデジタルトランスフォーメーション

それでは文部科学省ではデジタルトランスフォーメーションについて今までどのように触れられているでしょうか。文部科学省のサイト内検索を「デジタルトランスフォーメーション」で行ってみると検索数は2020年5月20日時点では42件でした。

これらの検索結果は情報科学技術委員会、科学技術・学術審議会、「教育の情報化に関する手引」作成検討会の抜粋資料、教育再生実行会議での第十一次提言、などが主となっています。

しかし、いずれも教育の場におけるデジタルトランスフォーメーションについてはあまり触れられておらず、主に総合科学技術・イノベーション会議議や経団連からの抜粋資料や有識者による資料が多いように見受けられます。

また一部では、「富岳」成果創出加速プログラムにおけるデジタルトランスフォーメーションといった内容もあります。

 

静岡大学の事業でのデジタルトランスフォーメーション 

さて、大学に関わるデジタルトランスフォーメーションの文部科学省サイト内検索結果として、静岡大学がありました。

平成28事業年度に係る業務の実績に関する報告書」ではデジタルトランスフォーメーション推進について、日本マイクロソフト㈱との覚書の締結に関して報告がされています。

①学習環境の ICT 化等、教育効果を高める環境の整備充実(計画番号5,20)

反転授業等の ICT 活用について利用モデルの構築を進め、AL での活用や全世界へ授
業配信等を高速かつ安価で行える「クラウド反転授業支援システム」を構築し、その
展開にあたって日本マイクロソフト(株)と大学教育におけるデジタルトランスフォー
メーション推進に関する覚書を締結した。

また令和元年度の国立大学改革強化推進補助金の計画調書では静岡大学・浜松医科大学から「地域の知と人材の集積拠点としての静岡県の国立大学将来構想」として「新大学の使命達成のための経営力を強化する新たな法人経営の実践」で以下の記述もあります。

RPA(RoboticProcess Automation:ロボットによる業務自動化)やAIの導入も検討しながら全体の業務執行システムのIT化やデジタルトランスフォーメーション(DX)を進め、これに伴うペーパーレス化も推進することでコストだけではなく環境的な配慮も進める。

静岡大学の例を見ると教育だけではなく、管理運営にまでデジタルトランスフォーメーションの範囲内であるという事が分かります。

大学におけるデジタルトランスフォーメーション

大学においてデジタルトランスフォーメーションで調べても、このブログを書いている時は企業の広告ばかりで、まだあまり浸透がされていないワードであると感じます。

また2020年度はオンライン授業の取組が進み、在宅ワークも行われています。今までにある仕組みを活用したり、Google、Microsoft、Zoomなど使って短期的に何とかやりくりをしているのが現状ではないでしょうか。

今後は遠隔授業や教育へのICTのさらなる活用だけではなく、管理運営側もデジタルトランスフォーメーションが必要でしょう。静岡大学のようにRPAもあるでしょうし、近畿大学のSlack導入もあるでしょう。また電子決済など検討しなければならない事は沢山あります。

「分からないから(ICTを)導入しない、やらない」では時代に取り残されるだけです。