大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

大学や高等教育関連、法令の解説が中心のブログ

【スポンサーリンク】

大学職員の転職のノウハウや方法を記載した記事は有用なのか?~ある有料記事のレビューを中心として~

昔から、「〇〇はすれば儲かる」といったキャッチコピーとともに投資や儲け方を教える商材というのは販売がされていました。特に近年では、notebrainなどのプラットフォームが出来、誰でも気軽に自分が作った創作物や資料を有料で販売できる時代になりました。

特にnoteは「noteは、文章、写真、イラスト、音楽、映像などの作品を投稿して、クリエイターとユーザをつなぐことができる、まったく新しいタイプのウェブサービス」であり、クリエイターやアーティスト、専門家の作品や知識を買ったり、交流したりと個人間で応援できる素晴らしいサービスだと思います。

またnoteは最近、有料記事について返金機能を実装し、一定の条件を満たせば返金されるようになりました。この機能はクリエイターや専門家自身で返金を可能にするかを設定します。つまり、記載内容に自信のある人や誠実な人は、お客さんから不満があれば返金が可能となった訳です。

さて近年、大学職員になるためやノウハウやハウツー記事がこのようなプラットフォームで見られるようになりました。

そこで今回はこちらの「【後編】400倍以上の倍率を突破し人気の私立大学職員に内定した者によるノウハウ&方法論<面接対策 / 大学業界についての理解と方法(参考にすべき本・サイトなど) / 大学のカラーを見極める方法 / 大学職員(転職組)の前職やその人のカラーなど>」をレビューしてみます。

なお本記事は、該当noteは引用のみにとどめ、該当するnoteをおススメする事や貶す事を目的とはしておりません。

また、レビューをさせていただく記事はきちんと購入をしております。(該当記事の下の記事は個人の趣味で専門家の知見から解説されている素晴らしい記事です。こういうのはお金を払ってでも読む価値はあります。)

f:id:as-daigaku23:20200306144131p:plain

なお、購入の際に確認しましたが返金は不可となっておりました。

購入した記事の概要

今回購入した記事は26000字以上と論文1~2本程度にもなる大作です。ご自身の体験談を踏まえながらという事ですので、多くの面接等の経験をされているのでしょう。なお、前編もあるようですが、今回は後編のみを取り上げています。

後編は面接や人事に見られるポイントや大学のカラーの見極め方や大学職員にはどんな人(前職や性格)がいるかが主なコンテンツになっています。なお、著者は面接対策について理論を構築し、面接力をつけて転職をされたそうです。

理論を構築するとは生半可では出来ません。念のために理論の意味について確認をしておきいましょう。理論とは日本国語大辞典によると次の意味になります。

り‐ろん 【理論】
個々の現象を法則的、統一的に説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系。また、実践に対応する純粋な論理的知識。「―を組み立てる」「―どおりにはいかない」

つまり、大学の職員になるための面接について、体系的に知識を組み立てられたようです。理論研究は素人が手を出せるものではありませんので、だいぶ研究をされたのでしょう。

さて、先にざっと読んだ感想として、一般向けの転職の本を頑張って大学向けに翻訳をされたのだろうなという印象です。つまり、転職向けの本に書いてある内容を「企業」を「大学あるいは学校法人」と言い換え、自分の体験談を交えた内容であると感じます。次からは記事の項目に応じてレビューしてみます。

大学職員の面接の在り方について

著者が心血注いで執筆されているのが面接対策です。面接の7つのポイントをとりまとめ、転職希望者が面接に臨む際に何に留意すべきかを各ポイントの理由を踏まえて説明がされています。

しかし残念な点があります。それは入職してから「卒なく業務を続けられればそれで十分」と書いてある点です。私が思うのは、今はそのような方向性や気概は十分ではなく、最低条件です。そもそもそのような思考を持つ人は大学として求めてはいないでしょう。

社会人の資質について

このnoteは社会人に必要な資質について、転職向けの記事、つまり社会人が読むことを想定している中で社会人に必要な最低限の資質を7つ説明しています

社会人であれば持っていることを前提とするのであれば、社会人としてではなく、大学職員としての資質を分析され、記載いただくと、個人としては読みたい内容であるかなと思います。なお、大学職員に必要な能力や資質は、いくつもの先行研究がありますので、CiNii Articlesなどで検索をしてみて下さい。(右のリンクをクリックすると、「大学職員 能力」の検索結果になります)

大学職員の実務能力について

ここでは一般的な大学職員の実務能力としてPCや語学、課題解決力などいくつも紹介されています。一つ気になるのは、この辺りから事務職員・大学職員・事務方と標記の揺らぎがあります。意図しているのか分かりませんが、自分達を何というかは大学の組織によって違いますし、意図的に事務方と言う時もあります。また人によっては事務方をいう言い方を嫌う事もあります。(この辺りは読んでいない前編で触れられているのかもしれません)

大学職員論をインターネットで調べると、様々な考えがあるかと思います。私が学んだ大学職員論は、大学職員はどうあるべきかという「べき論」であり、大学職員の地位向上も踏まえた実践的な話でした。

社風(学風)について

学風というのは一般的な言い方なのでしょうか?もしかすると一部の大学では多用される言葉なのかもしれません。私は学風を使うのではなく、組織文化が違うという言い方をしているので、気になる点でした。

がく‐ふう 【学風】
1 学問上の傾向や特徴。「師の―を受け継ぐ」
2 学校の気風。校風。「自由な―」
"がく‐ふう【学風】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2020-03-06)

さて、著者は「大学職員の環境は基本的に閉鎖的である」と主張されています。これに関しては、私自身もそうだと感じる事は昔はありましたが、今は大学職員に派遣職員や契約職員が多くなってきたことや、産業界や地域との連携が求められている事でだいぶ変わってきたとも思います。

学歴について

著者は「高学歴だから採用されるというというわけでない」と主張していますが、私の職場では最近は修士号持ちや比較的上位大学の卒業した中途採用の大学職員が増えてきていると思います。

なお、記述で気になる箇所がありました。

評価→A:上位国立卒 +無愛想+個性が強い < B:短大卒+愛想良い+協調性高め  

これどちらを取るかは、どのような人材が欲しいかによるのだと思います。少なくとも私自身はBのように愛想良い+協調性高めではありません。また短大卒の場合は転職で選考が通ることはどうなのでしょうか?最近は4大卒が条件の大学ありますので、語弊を招く内容であると感じます。

パーソナリティについて

ここでは、著者の独自の面接突破の独自理論について説明されています。なお、私にはこの理論がどのように体系化されているかについて判断が出来ませんでした。

理論の詳細についてはこの有料記事のキーとなるので紹介しませんが、それが出来たらだれも苦労しないと感じますし、初対面の面接官に適用する理論として著者自身の成功体験のみで言いきってしまうのはかなり苦しいと感じます。

面接で実際聞かれた質問50問

他の大学職員の転職向けの書籍(主に電子ブック)やこういう記事では50という数字が多いのかは疑問ですが、著者はそれだけ多くの大学を受けて苦労されたのだろうなと感じます。

なお、私自身の意見としては、どういう質問を出るかを知るのが重要ではなく、日々情報を収集し、思考や分析をすることが必要です。日々の努力が質問に対して自分の言葉として回答できるのではないかと思います。

なお注意すべきは、私立大学の場合は学校法人が採用するという事です。初等教育や中等教育を持つ総合学園であれば、大学職員として〇〇がしたいという回答すると良く思わない面接官もいます。私自身は大学職員になるための面接は現在働いている法人しか受けておりませんので、体験談にしか過ぎません。

大学業界についての理解と方法(参考にすべき本・サイトなど)

大学業界の知識について、どのような本やサイトを見ればいいかを紹介しています。何故か紹介しているのは大学職員の転職関連の電子ブックなどが多いのと、少し昔の本であまり参考にはならないと感じるものが多いです。

少なくとも「大学職員の基礎知識」を1冊読んでおけばいいかと思います。また大学SD講座の本も初学者向けなのでいいですね。

SDのための速解大学教職員の基礎知識 2019年度改訂版

SDのための速解大学教職員の基礎知識 2019年度改訂版

  • 作者:上杉道世
  • 発売日: 2019/04/01
  • メディア: 単行本
 
大学の組織と運営 (大学SD講座 1)

大学の組織と運営 (大学SD講座 1)

  • 発売日: 2019/08/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

またこの節で著者自身は下記のように述べています。

私から見て、偏った情報を発信している人もいるので、ご注意ください。
                 ~略~
偏った題名で本を書くと必ずまっとうなエビデンスを持って批判されるので普通書かないものです。なので、一つに偏らず、複数の職員の声を平均するような形で見てください。それと、業界では、入職10年未満の職員などは、まだまだ「若手」クラスです。

まだまだ若手なのだと思いますが、「大学の質的転換」と書くなど、一部間違った言葉が見られました。転職希望者に書くのであれば正しい内容や言葉の使い方になるよう修正いただけることを期待しています。

大学のカラーを見極める方法

これはぜひとも自分が知りたい所です。言い換えると大学の組織文化を理解する方法としていいのでしょう。

その方法の例示が挙げられているのですが、現場で働く職員として、OBOGでもないのであれば、「紹介されているいくつかの方法は迷惑です」といった感想しか持ちえませんでした。詳細に述べることは避けますが、大学職員の給料は学費や税金から支出されているものであり、業務時間中大学職員の時間を転職希望者が取っていいものかどうかはまっとうな大学職員であれば考えなくても分かる事です。

現職の大学職員(転職組)の前職やその人のカラーなど

反社会的な仕事でなければ、その人がどういう能力や知識を持ち、意欲があるかどうかが重要なので前職なんかはどうでもいい事です。その大学の大学職員の前職にこういう人が多いといっても自分の採用とは一切関係はないでしょう。

終わりに

26000字の記事を読んでみましたが、最初に書いたように頑張って書かれたのだろうなという印象があります。ただ、秘伝のノウハウや方法論を伝えると著者のプロフィールに書いていますが、どこが秘伝なのかは分かりませんでした。本記事のタイトルに有効なのかとしましたが、この記事に秘伝のノウハウではなく一般的な事が筆者の体験談を交えて書いてあることや独自理論が多いので有用であるとは断定ができません。

個人の感想ではありますが、転職向けの本や先ほど紹介した大学職員の基礎知識があればカバーできるし、専門家が書いた確かな本です。

記事は今後随時更新(アップデート)されるそうなので、素人の体験談や一般的な話を大学に置き換えただけの内容ではなく、専門的な内容になることを期待しています。

 

最後のまとめとして付け加えるのであれば、noteで素人が売っている有料記事なんて買うものではないですよ。期待するほど、落胆は大きいです。