近年、学生への調査は年々増えつつあります。
私が勤める大学でも昔は数年おきに行う学生生活調査と授業アンケートだったのが、今は多くのアンケートに回答することを学生に求めているのです。
この学生調査は学生の実態を知るだけではなく学生の学びを把握することや、調査により教育の間接評価を行うこと、大学の中期計画で立てた指標を測定するためなど目的も多様化しています。
さらに2019年度には文部科学省の全国学生調査が試行されました。
今までは大学独自で学生調査を行っていましたが、国が全国規模で実施し全国的なデータが取られるようになったのです。
(ただ、まだ試行であり、2019年度は調査実施を立候補した大学のみが実施しました。また実施した大学はどれだけ回収率を高めるかがかなり悩みであると聞きました。)
さて、近年は学生を対象とした調査は増えてきていると感じます。そこで学生への調査はどれぐらい行っているのでしょうか。
学生の調査と負担
学生への調査は入学時から卒業後まで行われる事が多いようです。例えば下記の図は学生がどれだけの調査をやるのかをまとめたものです。なお、全学調査のみであり、学部学科独自の調査などは入れておりません。
図の上側は4年間+卒業後で行う調査のスケジュールを示したものです。一方、下側は年間の調査スケジュールを示しています。
なお、この調査以外にも各部局や部署が行う調査など、全学で行わないものもあります。さて、調査を少し見ていくと4年間の中ではこのような調査があります。
入学時調査や大学生の基礎力調査
入学時は、大学入学前(高校3年生)の時の学修行動や属性に関する調査を行う事があります。また調査以外にも入学時には基礎力調査や英語のクラス分けのためのプレイスメントテストを行う学部学科もあります。
学生生活調査
学生生活の実態を把握するための調査です。学生生活に関する設問だけではなく、大学に対する要望なども聞くケースがありますね。これは学生の全数調査で設問数も多い為に、数年に1回行っています。
また学生調査は、隔年で行われる学生支援機構からの依頼で抽出調査を行うこともあります。そういえば全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)も定期的な学生調査を行っていますね。
この調査の結果は施設や学生生活・学生支援に関する事項の学生の満足度を聞く、重要な調査の一つです。
<参考>
第54回学生生活実態調査の概要報告|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)
卒業時調査や卒業後調査
この2つの調査は最近始めた大学も多いでしょう。その理由として、補助金の要件(私立大学等改革総合支援事業)に卒業時調査や卒業後の調査を実施し、その結果を活用することが求められているからですね。
卒業時の調査は大学の満足度や身に着いた能力を聞く事が多いのですが、卒業式の時に調査をすると卒業の高揚感で回答が良い方向に動きがちだとデータを見ていて感じています。
また最近は卒業後、つまりOBやOGに就職の追跡調査や大学で学んだことの関連性を聞く調査も行うようになりました。これも補助金に関連した調査でもあります。今はこの卒業後調査の結果を教育活動の改善に反映させる仕組みを求められているのです。
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授業アンケート
授業アンケートは授業の改善を目的として実施するもので、アンケートの全体の結果は各大学のHPに掲載されている事も多い調査です。この授業アンケートは、昔は一部の科目を対象としたり、実施対象科目は条件を設けていました。
しかし近年ではほぼ全ての科目で授業アンケートを実施するようになっています。そうすると学生は半期で10科目を履修していると10回授業アンケートに答えることとなります。(厳密には授業アンケート対象外科目もあるために、履修科目数=授業アンケート回答科目数ではありません)
学生の調査負担と調査マネジメントの重要性
さて、見てきたように今は学生に対して様々な調査が行われています。これだけ調査があると、学生からすると「また調査か」と調査疲れがおきているのではないでしょうか。
また課題として、数々の調査は別々の部署で行っている事もあり、同じ設問を学生に対して度々問うという事もあるようです。大学全体で調査のデータを共有し、活用できる仕組みを整え、調査のやり方や内容をトータルでマネジメントをすれば、調査の量もだいぶ減らせると思うのですよね。
近年、教育の質の保証とかで数々の調査が出来ましたが、そろそろ大学全体で調査全体をマネジメントし、全ての調査の再設計が必要なのではないかと思います。
また文部科学省の全国学生調査は早く概要が確定して欲しいですね。これが決まると学生の調査負担をどうするかが本格的に検討出来ると思うのです。