大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

大学や高等教育関連、法令の解説が中心のブログ

【スポンサーリンク】

令和2年度予算(案)私学助成関係から見る私立大学の今後と生きる道

2020年1月15日に文部科学省のHPで令和2年度の文部科学省の予算(案)が発表されました。

令和2年度文部科学省 予算(案)の発表資料一覧(1月):文部科学省

今回、この予算(案)を見ていると、令和2年度は私立大学は積極的に補助金獲得に向けて動くか、それとも補助金以外の収入を獲得していくのかといった方針を打ち出し、動いていく分水嶺なのではないかと感じます。

そこで今年度の私学助成の予算を見ながら、感じたことをまとめてみます。

令和2年度予算(案)からみる私学助成の概要

私立大学等の補助金として「私立大学等経常費補助」があります。この補助は大学運営に不可欠な教育研究に関する経費に支援する一般補助と、改革に取り組む大学等を支援する特別補助で構成されています。

前者の一般補助は昔は学生数や教職員数で配分がされていましたが、近年は教育の質に係る客観的な指標が導入され、教職員の研修(いわゆるFDやSD)の参加率や学生の学修時間・学修行動の把握、教員の教育面の評価など14項目が設定されています。

この教育の質に係る客観的指標は各項目に設定された得点の合計点によって、補助金の増減率が決まっており、2018年度は+2%~-2%の増減率だったのが、2019年度は+5%~-5%となり、(国が指定する)教育の質の取組みを行わないと補助金が減る仕組みとなっているのです。

また特別補助については、2019年度から大きく変わり、情報を分かりやすく公表している事や社会人の受け入れや国際交流などを取組む必要があります。

私立大学はじっとしていれば補助金は減額されていく時代なのだと感じます。

2018年度・2019年度の私立大学関連予算と2020年度の予算案

次に2018年度・2019年度の私立大学関連予算と2020年度の予算案を概略を見てみます。過去の文部科学省の予算や今回公表された資料から一覧にしたものです。

文部科学省私学助成・私立大学等経常費補助

2020年度は特別補助が大きく減額となっています。ただ2019年度の特別補助には「経済的に就学困難な学生に対する授業料減免等の充実」で177億円が計上されていましたが、2020年度は高等教育の修学支援新制度の授業料減免が内閣府計上で別途措置されています。

また2020年度の特別補助にとして、私立大学等改革総合支援事業や大学院等の機能高度化への支援があげられています。私立大学等改革総合支援事業の予算額は年々減っているますが、ここに大学院等を持ってきた意味として、大学改革だけではなく、今後大学院改革も補助金によって政策誘導を行い、実施していくという事でしょうか。

令和2年度の私立大学等改革総合支援事業はどうなるか

私立大学等改革総合支援事業とは、特色ある教育研究を推進していることや、地域貢献、高度な研究の展開や産学連携に取組む大学に対して補助金が出る事業です。

この事業では2019年度は4つのタイプが設定され、各タイプで定められた設問の取組みを実施しているかによって点数が加算され、申請の上、一定ライン以上の大学に補助金が出る制度です。

この設問によって、私立大学は一喜一憂するわけで、今年度は私立大学等改革総合支援事業タイプ1は「教育の質的転換」から「特色ある教育の展開」になったと同時に設問も大きく変わり、高大連携やIRの高度化、データサイエンスの取組みが求められています。 

 <関連記事>

www.daigaku23.com

さて2020年度の私立大学等改革総合支援事業は2019年度を比較してみます。

私立大学等改革総合支援事業の予算額ですが、2019年度は117億円、令和2年度(2020年度)は114億円です。なお、2018年度は131億円、2017年度は176億円でした。

タイプについては2019年度と変わらずで選定(予定)数は減っています。

  2018年度 2019年度
タイプ1特色ある教育の展開 175校程度 110校程度
タイプ2特色ある高度な研究の展開 40校程度 50校程度
タイプ3地域社会への貢献 165校程度
(プラットフォームの20~40グループ含)
165校程度
(プラットフォームの20~40グループ含)
タイプ4社会実装の推進 80校程度 95校程度

なお、タイプ1の概要についての違いはこちらにも記載しています。

<関連記事>

www.daigaku23.com

各私立大学が気にするのは今までは、大学教育全般に関わるタイプ1だったのですが、2019年度は設問見直しで努力しても無理とこの事業のタイプ1に申請を見送るところもあったようです。

ただ概要だけを見る限り、次年度もその傾向は続きそうなのと選定大学数の見込みはかなり絞られているので、競争は激化しそうです。

補助金獲得のための大学改革はどこまで行うか?

今まで大学はしっかり教育研究を行っていれば一定の補助金が入る時代でした。しかし近年は、教育改革や社会連携、研究、国際交流、産学連携など特色ある取組みをしないと補助金が減額される制度に移行しつつあります。

大学改革については賛否ありますが、私立大学としては現状維持をするだけだと補助金収入が減り、じわじわと経営が厳しくなる時代になったとも言えます。

冒頭にも書きましたが、今後私立大学は大学としてどうするかを考えないとなりません。例えばこんな選択肢があるのではないでしょうか?

  1. 補助金と取る為に走り続ける
  2. 補助金ではなく、寄付金など別の収入も模索する
  3. 補助金や外部収入に頼らない経営を模索する

最近は大学のファンドレイジングなども聞くようになりましたが、大学として取組みの取捨選択を行い、維持型の経営や教学ではなく、大学としてどう戦略を立てるかがより重要になっています。