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大学の内部質保証を進める為の内部質保証人材の私論

大学には、自らが質を保証する内部質保証システムを構築し、内部質保証を適切に行う事が求められています。

ただ内部質保証は、ざっくりとしているのと、内部質保証システムは組織によって(おそらく)違う為、中々理解がしにくい事もあります。

では内部質保証とは何でしょうか?この内部質保証は、認証評価機関の1つである大学基準協会では下記の通り、説明されています。

PDCAサイクル等を適切に機能させることによって、質の向上を図り、教育、学習等が適切な水準にあることを大学自らの責任で説明し証明していく学内の恒常的・継続的プロセスのことです。この定義において明らかなように、内部質保証の主たる対象は教育活動であり、その目的の中心は、教育の充実と学習成果の向上にあると言えます。

                          出典:大学評価ハンドブック(2019年4月改訂)

この内部質保証は大学は受審する義務がある機関別認証評価で、「大学は内部質保証システムを構築し、それらがきちんとまわって、自らの質保証や自浄作用があること」が評価されます。

ただ内部質保証はシステム、例えば組織や規程を作ってもそれだけでは上手く回る事が出来ないと考えています。端的に言えば、内部質保証を支え、支援する人材というべき教職員がいないと内部質保証システムは錆びた歯車のようにぎごちなく周り、フラフラとどこかに行ってしまうか、バラバラに空中分解してしまうのではないでしょうか。

では「内部質保証人材」とはどのような人材を言うのでしょうか?

大学組織や文化によって、異なるかと思いますが、あくまでも私論として内部質保証人材についてまとめてみます。

 

内部質保証人材とは

「内部質保証人材」と検索しても、そのような言葉は中々ヒットしません。(検索すると近い言葉として「質保証人材」が表示される事があります。)しかし、内部質保証システムをまわすために、適当な人材は必要であると感じています。

では内部質保証人材とは何をする人なのでしょうか?

まず内部質保証システムの前提として、各組織や個人レベルでPDCAサイクルを行い、それらが重層的に行われ、それぞれが関連しています。 

さらに内部質保証システムは、内部質保証を担う組織(以下「内部質保証推進組織」)があり、その組織から各所の重層的・階層的なPDCAサイクルについて検証や支援及び助言を行います。

PDCAサイクルの検証や支援といってもイメージはしにくいですが、例えば計画・取組・確認の方法は適切か、検証する上での視点や軸は適切か、大学全体として支援する場合はどうしたら良いかや、どうやって組織として進めればいいかといった事です。 

これらを行う為に内部質保証人材と言うべき人が必要です。この内部質保証人材は、内部質保証を進める上でのチェック機能やアドバイザーとしての役割を果たすだけではなく、教育の質保証を資する役割も担う事があるでしょう。

例えば、部局から○○についてどうすればいいかといった問い合わせに適切に助言を行う、○○を大学組織として行うにはどうすればいいか企画し学内調整を図るといった事もあるかもしれません。

 

内部質保証人材に求められるもの

内部質保証を進める内部質保証人材は次の深い知見や経験が必要だと思います。

  • 大学評価や自己点検評価に関わる深い知識と経験
  • 教育研究や内部質保証を構成する分野の知識と経験(教育研究だけではなく、学生の受け入れや教育組織)
  • その大学の歴史、組織及び文化
  • 高等教育に関わる政策や関連する法令
  • 学内ネットワークがある(どこがキーパーソンか知っている)

ただこれら全てを兼ね備えている人は稀有でしょう。複数人でこれらがあればいいのではないかと思っています。

 

内部質保証推進組織メンバー=内部質保証人材か?

内部質保証システムで内部質保証を担う内部質保証推進組織は委員会形式や会議形式を取る事が多いかと思います。例えば福岡工業大学では「全学内部質保証推進会議」を設置し、学長を委員長として学部長等を構成員としています。

www.fit.ac.jp

このように大学は内部質保証を担う組織や会議を設置している場合が多いでしょう。では、この委員会や会議のメンバーは全て内部質保証人材になりうるのでしょうか?

大学によっては内部質保証組織のメンバーは「特定の職にある者を別の特定の職に就かせる充て職」の事もあります。充て職ばかりの組織の場合は、ちょっと疑問でもあります。

ただ内部質保証システムは大学のあるべき姿と現場をつなぎ支援する役割を担っています。さらに調整など非常に地道にやっていく事が求められます。大学としては大言壮語の内部質保証人材ではなく、地道にやっていく内部質保証人材が必要でもあると感じています。