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アセスメント・ポリシーの構造と方法や指標~補助金で揺らぐアセスメント・ポリシーの意味~

2018年夏ぐらいからでしょうか、大学(特に私立大学)の中で徐々に「アセスメント・ポリシー」を整備し、大学のホームページで公開しているケースが増えました。

これは、私立大学の経常費補助金の傾斜配分に影響をする「教育の質に係る客観的指標調査(以下「教育の質指標」)」の設問にアセスメント・ポリシーの整備がある事が大きく影響しているように思われます。ただ最近公開されている各大学のアセスメント・ポリシーを見ると、従来のアセスメント=教育評価からのイメージの転換が起こっているようです。

教育の質に係る客観的指標調査の点数によって、経常費補助が最大2%~̠-2%となりました。 

 

アセスメント・ポリシーとは

アセスメント・ポリシーは2012年の質的転換答申の用語集に「学生の学修成果の評価(アセスメント)について、その目的、達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針」と説明されています。また2018年度の教育の質に係る客観的指標の設問を見ると同様の定義がされています。

ここでは学生の学修成果の評価の水準や方法が焦点であり、ディプロマ・ポリシーで定めた能力をどのように評価するか、どの水準(程度)まであれば該当する学位レベルかを示すものであるとも考えられます。

しかし2018年度から始まった教育の質指標にアセスメント・ポリシーの整備が点数になり、「評価結果の具体的活用方法や検証等の実施体制まで記載されているほうが望ましい」とされたり、「「入学時・在学時・卒業時」でさらに細分化する方法」なども示唆されています。

なおアセスメント・ポリシーについての定義や課題について過去に記事を書いておりますので、こちらもご覧下さい。 

www.daigaku23.com

 

大学が公開しているアセスメント・ポリシー

それでは大学はどのようなアセスメント・ポリシーを公開しているのでしょうか。今回は、Google検索で「アセスメント・ポリシー」と検索し、40位までを対象として大学のアセスメント・ポリシーの構造と要素を整理しました。

なお、対象大学は「福祉大学、清泉女子大学、多摩大学、千葉工業大学、鶴見大学、法政大学、関西福祉科学大学、大阪物療大学、静岡大学、日本福祉大学、作新学院大学、京都女子大学、中京学院大学、広島女学院大学、八戸工業大学、昭和大学、東京国際大学、大阪樟蔭女子大学、大阪教育大学、大東文化大学、鹿児島国際大学、京都造形芸術大学、長崎外国語大学、神戸学院大学、畿央大学」となります。

アセスメント・ポリシーの構造と示し方

アセスメント・ポリシーは大学によって構造や示し方がいくつかに分かれます。まずは非常にシンプルな構造です。レベルに応じて、内容や何で測るかを記載しています。

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そして、一番多かったアセスメント・ポリシーの示し方が、レベルとアドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシーの表で示しているものです。

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なお、ポリシーとはせずに、入学時・在学中・卒業時としているものもあります。

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これは日本福祉大学のアセスメント・ポリシーですが、他と変わっているのはマクロ・メゾ・ミクロと分かれています。なおこのアセスメント・ポリシーは方法だけではなく、評価基準も含め具体的に記述がされているのが他の大学とは異なります。

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また表ではなく、文章で評価の方法を「機関・教育課程・科目」と段階ごとに示す場合もあれば、アセスメントポリシーに、どのような体制で評価を行うかを記載しているケースも見受けられました。

アセスメント・ポリシーの評価方法や指標・要素について

2019年4月21日時点で大学のホームページに公開されているアセスメント・ポリシーを見ると、3つの方針「アドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシー」とレベル(機関・教育課程・科目)で策定をしている大学が多く見られます。

そこで、3つの方針とレベルごとにどのような方法や指標が提示されているのでしょうか。各大学のアセスメント・ポリシーを確認して、重複した内容を省き、一覧にしたのが下記の表となります。

  アドミッションポリシー カリキュラムポリシー ディプロマポリシー

機関

レベル

入試選抜、調査書、面接・志望理由書、学修・生活に関する調査、入学時満足度調査・入学生アンケート、PROG GPA、修得単位数、外部テストジェネリックスキルテスト、PROG、基礎能力評価、TOEIC、学生アンケート、課外活動状況、休学率、退学率・離籍率、学修行動調査、キャンパスライフに関する調査、満足度調査、授業評価アンケート、将来の夢・目標、図書館利用状況、課外活動状況、ボランティア活動状況 基礎能力評価、卒業時アンケート、卒業後アンケート、卒業率、就職率・専門領域に関する就職率、進学率、学位授与数、将来の夢・目標、雇用先アンケート

教育課程

レベル

入試選抜、面接・志望理由書、推薦書、入学時満足度調査、入学時アンケート、プレイスメントテスト、外部テストジェネリックスキルテスト、入学前教育取組み状況、基礎ゼミ一泊研修レポート GPA、単位取得状況、外部テストジェネリックスキルテスト、学修行動調査、留学プログラム(参加者の成果)、満足度、資格取得者、学生アンケート(生活・達成度・学修行動等)、授業アンケート、進級率、課外活動状況、離籍率、休学率、留年率、ポートフォリオ、将来の夢・目標、課外活動状況、学科内活動状況、、インターンシップ参加状況、留学状況、単位分布状況・単位取得率、個人面談 単位取得状況、GPA、卒業時アンケート、卒業生アンケート、学位授与数、卒業率、内定率、就職率、就職先分布状況、課外活動取組状況、資格・免許取得状況、国家試験合格率・合格者数、ポートフォリオ、将来の夢・目的、卒業論文・卒業研究の成果、公務員採用試験合格率・合格者数

科目

レベル

プレイスメントテスト、入学前学習、国語基礎力テスト、開講試験 成績評価、学外実習評価、各科目の合格状況、授業アンケート、授業点検書、ポートフォリオ、ルーブリック評価、学修履歴、アセスメントテスト、成績分布状況、単位取得率 資格取得率、履修状況(カリキュラムマップとの整合性)

科目レベルでは、成績や授業アンケートを基本として、さほど方法や指標の種類は豊富ではありません。教育課程レベルでカリキュラム・ポリシーでは様々な方法や指標がありますが、「将来の夢・目標」はどういうものを指標にしているのかが気になります。

またカリキュラム・ポリシーの機関レベルでは成績や外部テスト、調査などは分かりますが、図書館利用状況や課外活動状況などをどのようにアセスメントとして行うのかは疑問でもあります。

 

アセスメント・ポリシーは教育評価から自己点検評価の指標へ?

アセスメント・ポリシーは、恐らく教育の質指標から3つの方針×レベルで作成をしている大学はかなりあるだろうと考えています。

ただアドミッション・ポリシーのアセスメント・ポリシーは個人として非常に違和感があります。アセスメント・ポリシーは教育評価という意味があったはずですが、どうもアドミッション・ポリシーと結びつけることができません

また今回調べて、アドミッション・ポリシーについての評価の方法や指標・要素を見ても入学時の評価は分かりますが、教育評価ではなく、アドミッション・ポリシーとポリシーに基づいた入学者選抜の自己点検・評価に活用すべき指標と言い換えたほうがいいのではないかと思います。

教育の質指標で「「入学時・在学時・卒業時」でさらに細分化する方法」」と書いてあるために、アセスメント・ポリシーは教育評価ではなく、自己点検・評価の為の指標と変化してしまうのかもしれません。

ただ今回はポリシーを見たのみでどのようにアセスメントを行っているかを調査したわけではありません。各大学のアセスメントの実態を見た後でないと出す結論でもないとも考えています。