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新・放課後子ども総合プランと大学の学童運営

小1の壁という言葉を知っていますか?

また、子どもが小学生になり、両親が働いている時の子どもの預け先の「学童」に待機児童がいる事も知っていますか?

 

この点について、2018年9月14日に策定された新・放課後子ども総合プランには、放課後児童クラブ、所謂「学童」の整備や待機児童解消について目標が記載されています。

「新・放課後子ども総合プラン」の策定について:文部科学省

 

これを受けてという事ではないと思いますが、様々な大学を巡っている人がSNSで「大学に学童を作ればいい。図書館なども使えるだろう」といった趣旨の発言を先日、目にしました。

 

この発言の趣旨は、大学は施設を開放し、そこで地域の小学生が自由に施設を使い、学童を運営すればいいのかと捉えています。

 

大学に保育施設を持っている大学もありますし、学童という発想が出てもおかしくはありません。そこで、今回は大学の学童運営についてが題材です。

(なお、ここでは未就学児が通う保育園や幼稚園ではなく、小学生が通う学童についてを論点とします。)

 

また学内保育園を持つ大学の一覧については、別の大学職員ブロガーの下記記事をご覧下さい。

high190.hatenablog.com

 

 

小1の壁とは何か

まず「小1の壁」とは何でしょうか?

 

両親が働いている子どもは、保育園に通う事が多いです。保育園は、延長保育があり、かなり遅くまで子どもを預かってくれます。例えば夜19時まで預かる保育園も多いですし、夜20時までの預かり保育や、迎え時間が遅い場合は夕飯の補食を出す保育園もあります。

 

そして子どもが小学生になると、共働き家庭の子どもは学童保育に預けることが多いです。でも学童保育園は、公的保育園だと18時までに終わってしまう所もあります。

 

職場と学童が近い、時短勤務であれば18時でも迎えに行けますが時短勤務は小学校入学までという企業も多いです。

 

また平日は何とかなっても、夏休み・冬休み・春休みの長期休みの時、子どもの預け先を確保するのもかなり大変です。

 

他にも様々な課題がありますが、子どもが小学生になると、このような理由から働き方を変えないといけない事があります。これを「小1の壁」と呼ばれます。

 

解決策の一例として、夜遅くまで預かってくれる民間学童やサービスもありますが、費用がかなり高いのが課題でもあります。

 

大学の学童保育の運営事例

小1の壁の対策かは分かりませんが、調べてみると、学童の制度を持つ大学がいくつかあります。

名古屋大学学童保育所 ポピンズアフタースクール

学童保育施設 かいのき 児童クラブ|学内保育施設|ライフイベント支援|岡山大学ダイバーシティ推進本部

富山大学夏季学童保育

大阪大学春期学童保育を実施します!【3/26(月)~3/30(金)】 | 大阪大学 男女協働推進センター

学童保育(広島大学子どもクラブ)について | 広島大学

 

名古屋大学の学童は通常の学童と同じ預かり時間です。スケジュールを見ると小学校がある日は授業が終わったらお迎えタクシーで学童へ集合するそうです。

 

また大学にある学童らしく、留学生による実習として英会話レッスンや学び・スポーツに関するイベントがあるのは特色ですね。

http://bsj.or.jp/kyodosankaku/2010_sasaki.pdf

 

一方、今回紹介した名古屋大学以外の学童は夏休みなどの長期休みのみ実施している事が特徴です。

 

いずれの学童も「その大学に勤める教職員の子どもで昼間に保護者が就業もしくは介護等により家庭にいないことが常態となる小学生」が対象となっています。

 

大学の学童保育と運営目的

さて「大学に学童を作ればいい」という発言は、非常に考えさせられる質問です。

先ほど紹介した学童に通うことが出来る子どもはその大学に勤める教職員等の子どもが対象です。つまり大学の福利厚生であるとも言えます。

 

一方、「大学とは関係ない地域の子ども達を預かる学童は作れるか?」ですが、作る事は出来るでしょう。

 

ただ、大学が直接学童を運営するメリットが思い浮かびません。児童に関する学部があれば、教育と関連があると言えるかもしれません。また地域貢献と言われれば、それが理由や大義名分になるかもしれません。

 

しかし、恒常的に大学だけで学童を運営維持していくのは、人手や財政的な面から、かなり大変でしょう。よく学生を使えばいいと言う人がいますが、今の学生は勉強・バイトなどで暇ではありません。

 

大学が福利厚生以外の目的で、学童を運営する決定的な理由がないのです。

 

妥当な運営方法としては、大学の事業としてか、大学が持つ事業会社や入札などで委託先を決め、そこに任せるという事になります。

 

大学の施設と学童

図書館を学童や子どもがいる場所として開放をすればいいという意見があります。大学の図書館と公営の図書館を勘違いしているのではないでしょうか?

 

児童に関する教育課程があれば、絵本や児童向けの本はあります。でも、そんなのはごく一部でほとんどの本は小学生向けではありません。

 

また大学の図書館は学生達が勉学をする場所です。子どもを預かるスペースではありません。もし子どもが本を読むスペースが必要であれば、スペースを分けるか、部屋を別にするといった事をする必要があります。

 

他にも体育館や教室など様々な施設があります。ただ図書館をはじめ、教室や体育館などの施設は、学生達の学費(特に施設維持費)や補助金で維持されています。福利厚生ではなく、事業として地域に向けて大学施設を活用した学童を運営するのであれば、施設管理のお金も学童の費用に含めないといけないではないでしょうか。

 

学童の費用の課題

先ほど紹介した大学の学童のリンク先を見てもらうと、学童の費用が載っています。実は公立の学童を比べるとかなり割高です。

 

私の子どもが通っている公立の学童は、総額毎月1万程度の負担です。しかし名古屋大学の学童は、週5日通うと約37,000円となります(金額の高さは送迎タクシー代も含んでいるという事情もあるでしょう)。

 

また他の大学の学童を見てみると、1日1,000円かかるといったケースもあります。

 

紹介した大学の学童は、大学の福利厚生という面からであれば、もしかすると多少は大学から補助が出ているのでしょう。

でも、事業としての学童であればどうでしょうか?おそらく毎月かなりの費用がかかるでしょう。学童は場所は言うまでもなく、児童指導員などもいるので、人件費もかなりかかります。

 

大学が社会貢献でやって、大学が負担すればいいという意見もあるでしょう。しかし、近年の大学は厳格な入学定員の管理などで学生数が減り、どの大学も収入がかなり減っています。そこまで社会貢献にリソースがつぎ込めるとは考えられません。

 

まずはスポット的な大学の施設開放から

学童運営は、大学側や通わせる親も費用面から色々と課題があります。

 

大学側としてはまずは学童ではなく、スポットでの大学施設の開放といった事であれば、そんなに難しくはないでしょう。例えば、私が勤める大学では学生が日曜日のキャンパスで地域の子どもたち向けのイベントなどをやっています。

 

また夏休みなどは、大学によっては自由研究なども見据えた様々なイベントをやっていますね。学童ではなく、地域に向けた施設開放やイベントといったものが今は現実的ではないでしょうか。