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リカレント教育は大学を救うのか?

2018年度の文部科学省の高等教育における議論を見ていると、頻繁に「リカレント教育」のワードが出てくるようになりました。

 

2019年度文部科学省概算要求等の発表資料と国の方針

今後、変化が激しい社会への適応できる人材が重要で変化に対応するため、18歳人口が減ることによる大学の延命措置や大学運営の在り方の方向転換の一方策としてリカレント教育を推進するのでしょう。

 

例えば、2019年度文部科学省の概算要求等の発表資料には、大学の改革を点数化し、補助金を傾斜配賦する私立大学等改革総合支援事業に「リカレント教育に配慮」という文言があります。

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私学助成だけではなく、高等教育政策に関する2019年度の概算要求では「生涯学び、活躍できる環境の整備 <リカレント教育の推進等>」として産学コラボレーション人材育成システム構築事業 に19億円、Society5.0に対応した高度技術人材の育成【再掲】 11億円が計上されています。

 

また、平成30年9月5日(水曜日)に開催された文部科学省中央教育審議会大学分科会の将来構想部会の資料1 「「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」の項目と「中間まとめ」からの追加記述(案)」には、「社会の発展に伴い更に必要となった知識や技能を身に付けるべく生涯学び続ける体系への移行が進み、リカレント教育の仕組みがより重要となる」と述べられています。

 

今後リカレント教育は、予算もつき、取り組む大学は補助金が得られるかもしrめあせん。ただリカレント教育は、大学経営や大学運営を同時に見直さないと、足かせ手かせになる可能性もあります。

 

リカレント教育とは何か?

リカレント教育についての定義について、まず下記の説明が分かりやすいです。

平成7年度我が国の文教施策[第2部 第2章 第3節 2]

 「リカレント教育」とは、「学校教育」を、人々の生涯にわたって、分散させようとする理念であり、その本来の意味は、「職業上必要な知識・技術」を修得するために、フルタイムの就学と、フルタイムの就職を繰り返すことである(日本では、長期雇用の慣行から、本来の意味での「リカレント教育」が行われることはまれ)。我が国では、一般的に、「リカレント教育」を諸外国より広くとらえ、働きながら学ぶ場合、心の豊かさや生きがいのために学ぶ場合、学校以外の場で学ぶ場合もこれに含めている(この意味では成人の学習活動の全体に近い)。なお、「リフレッシュ教育」は、「リカレント教育」のうち、

1) 職業人を対象とした、 
2) 職業志向の教育で、 
3) 高等教育機関で実施されるもの 
であり、むしろ諸外国での「リカレント教育」に近い概念である。

つまり、リカレント教育とは、社会人が仕事をする上で必要な知識や技術を学ぶためにフルタイム、つまり本科生や学生として学び、そのあと仕事に戻る事ですね。

 

海外では、働いてから大学に戻るというケースが多い国もあります。一方、日本では高校卒業したら社会人を経て大学生ではなく、高校生から大学生へ繋がるのが一般的です。

 

リカレント教育の種類

リカレント教育の例として、次のようなものがあります。

((平成7年度我が国の文教施策[第2部 第2章 第3節 2])より著者一部追記)

  • 社会人特別選抜
  • 編入学
  • 夜間部・昼夜開講制
  • 科目等履修生
  • 聴講生・研究生
  • 通信教育
  • 履修証明プログラム
  • 大学の公開講座

これらは入試の方法や、身分の在り方、プログラム名などが混じっていますので重複する事もあるでしょう。例えば、社会人特別選抜や編入学で、夜間部や通信教育課程で学ぶといった事も考えられます。

 

また下にいくにつれて参加の難易度は下がり、科目等履修生や聴講生・研究生は科目を1コマから履修できますし、公開講座は単発なものが多いので、参加はしやすくなります。 

 

リカレント教育の大学側の負担

リカレント教育を大学が進めるためには、かなりの負担があります。

社会人がリカレント教育を受けるには、仕事を辞めないという前提で話をすると例えば、社会人が正規の学生や科目等履修生として大学で授業を受けやすくする為に、夜間の授業開講や土日の授業開講といった事や、履修証明プログラムの構築と運営などは、人手を要します。

 

また、科目を受け持つ先生方の時間割もかなり配慮しないといけません。例えば午前中に授業があって、その日の夜に社会人向けの授業があるといった事は教員の負担や拘束時間を考えると出来るだけ避けたいものです。これは土日の授業日も同じで、土日に授業をやるなら平日の出校日を少なくするなどを検討しないといけません。

 

そうならない為には、教員数を増やせばいいという考えになるでしょう。でも、多くの私学では、大学設置基準で定められた教員数ギリギリの数の教員組織が多いです。

 

またリカレント教育対応の為に、教員数を増やしても、リカレント教育で得られる収入はどうかという事も考えないといけません。

 

公開講座も学内の先生が講演をするのであればともかく、学外の講師を呼んで行う公開講座は講師料など運営経費がかなりかかるものがあります。(ただ、公開講座については大学の社会貢献事業として行っている場合もあり、大学が負担する場合も少なくありません)

 

リカレント教育の成功は立地にかかっている

社会人が再度、大学等で教育を受ける場合のリカレント教育で、受講生が集まるかどうかといった成功は立地にかかっていると考えています。

 

リカレント教育をやって、人が集まり、リカレント教育の収支が出て成功するのは、都心部の大学や都心部にサテライトキャンパスを持つ大学だけではないでしょうか。

 

そもそも郊外や田舎にあって、社会人の母数が少ない大学は、どんなに良い教育のリカレント教育プログラムをやっても人は来ません。

 

それでは仕事を定年でリタイヤした地域住民を対象のプログラム、例えば公開講座を行えばいいという意見もありますが、人が集まるかどうかは地域の文化に寄る所が大きいです。 (地方自治体と連携する事もありますが、それを集客がうまくいくかは別問題です)

 

リカレント教育の成功は大学の規模と立地ではないか?

結局、リカレント教育は、組織規模と集客力、そして集客できる立地にかかっているのではないかと考えています。

 

都心部のターミナル駅にある大学やサテライトキャンパスの大学であればリカレント教育の対象となる社会人は参加しやすいでしょう。近年では社会人向け大学院を都心部のサテライトキャンパスで開講している例は沢山あります。

 

今後少子化が進み、現状の大学の数や入学定員数では、定員割れの大学がさらに増えます。そこで社会人や留学生を対象とする大学に方向転換することは、生き残りの一方策にはなりえます。ただ、きちんと計画や諸条件を考えないと、リカレント教育にかかるコストなどから大学運営が厳しくなる可能性もあります。

 

今年生まれた子供たちが社会人となる2040年に向けて、大学の生き残り競争はより厳しくなります。おそらく少子化はさらに進むでしょう。その中で、教育研究と経営や大学運営のバランスを見ながら、何に注力していくか、どうやって取捨選択するのかは喫緊の課題です。

ただリカレント教育に舵を切るのであれば、それのみに特化しないと生き残る道はないのではと思います。それでも立地などが関係するでしょうから、大学はどうやって組織を存続させていくか、将来をふまえ、判断を迫られています。