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平成29年度認証評価結果報告書の努力課題等のまとめ

 大学基準協会に平成29年度の大学評価の結果報告書が公表されました。そこで①大学基準協会に平成29年度の大学評価を受審している、②適合もしくは期限付き適合である条件の47大学の評価報告書から努力課題や改善勧告について類型化を行いました。これにより大学評価で何が努力課題や改善勧告になっているのかを概観していきます。

 なお、大学名や学部学科、研究科名は分からないようにし、代表的な指摘だけを記載します。

 

1.教員研究組織

<学部・研究科>

・教育研究目的や教員編成方針で研究や理論と実践を架橋した教育をかかげているものの、実態として理論を教育研究する専任教員が少ない

<研究科>

大学院担当教員の選考に関する資格審査基準が定められていない

 

・教員の資格審査基準が学部と専門職大学院で区別して定められていない。

大学院設置基準上必要な研究指導教員が不足して いる。

 

2.教育内容・方法・効果

教育目標

<学部・研究科>

・各学部・研究科の教育課程の編成・実施方針において、教育内容・方法に関する基本的な考え方を示していない。

教育課程の編成・実施方針が教育課程の実態の説明となっており、教育内容・方法等に関する基本的な考え方を示していない。

<学部>

・大学全体の学位授与方針及び教育課程の編成・実  施方針は定めているものの、学部ごとの方針は定めていない

<研究科>

・博士前期課程及び博士後期課程の学位授与方針は、課程修了にあたって修得してお  くべき知識・能力などの学習成果が示されていない。

・研究科の教育課程の編成・実施方針は、教育内容・方法などに関する基本的な考え方を示していない。

・研究科における学位授与方針について、博士前期課程と博士後期課程で区別されていない。

 

 

 

○教育課程

・博士後期課程において、教育課程が単位の定めのない研究指導科目のみで構成されており、コースワークが設けられておらず、 リサーチワークにコースワークを適切に組み合わせているとはいえない。

 

○教育方法

<学部・研究科>

・学部・研究科のシラバスは、ともに「到達目標」に関する記載がなく、事前準備や事後展開、他の授業科目との関連についても記載されていない。また、学部の シラバスにおいては、「授業の進め方」等の記載に精粗が見られるため、シラバスの充実に向けて改善することが望まれる。

<学部>

・学科及び食物栄養学科は教職に関する科目の一部、○○学科は小学校教諭一種免許と認定心理士資格に関わる科目の一部について、1年間に履修登録できる単位数の上限を超えて履修登録することを認めていることから、単位制度の趣旨に照らして、改善が望まれる。

・編入学生の入学1年目の1年間に履修登録できる単位数 の上限が 54 単位と高いため、単位制度の趣旨に照らして、改善が望まれる。

・1年間に履修登録できる単位数の上限が、1年次では 52 単位と高いので、単位制度の趣旨に照らして、改善が望まれる

・学部では、教育内容・方法等の改善に向けた独自のFD活動が実施 されていないので、改善が望まれる。

・「特別実習」(8科目・各2単位)は、貴大学の指定する強化クラブに所属する学生のみが履修できる科目であり、授業内容をクラブ活動としている。クラブ 活動は正課外の活動であり、教育として位置付けられているものではない。当該授業科目の科目担当者が指導を行っていないことからも、大学設置基準に「実験、実習及び実技については、30 時間から 45 時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位とする」と規定している授業に当たるものではないため、科目のあり方及び授業内容そのものについて見直すよう是正されたい。

<大学院>

・既修得単位を認定する手続は大学院学則に定めているものの、認定する単位の上限については規定されていない。

 

・研究科のFD活動において、研究の進捗状況や学修環境に関する学生へのアンケ ートは実施しているものの、それを受けての改善は個人に委ねられており、組織的な研修・研究の機会が設けられていないので、改善が望まれる。

・研究科において、研究科独自の教育の観点に特化したFD活動が行われてい ないので、改善が望まれる。

・博士前期課程において、研究指導計画の学生への明示が不十分であるので、改善が望まれる。

 ・すべての研究科において、研究指導計画が策定されていないので、研究指導、学位授与論文指導を研究指導計画に基づいて確実に行えるよう、是正されたい。

・博士後期課程では、在籍学生がいないため非開講となっている科目のシラバスが作成されていないので、改善が望まれる。

 

○教育成果

<大学院>

・博士前期課程において、修士論文の審査基準と  特定課題研究の審査基準が明確に分けられていないので、それぞれ別個の審査基 準を策定するよう、改善が望まれる。
・『大学院履修ガイド』に研究指導の方法・内容の記載がなく、研究指導計画の学生への明示が不十分であるので、改善が望まれる。
・博士後期課程において、修業年限内に学位を取得できず、課程の修了に必要な単位を取得して退学した後、在籍関係のない状態で学位論文を提出した者に対し「課程博士」として学位を授与することを規定していることは適切ではない。課程博士の取り扱いを見直すとともに、課程制大学 院制度の趣旨に留意して修業年限内の学位授与を促進するよう、改善が望まれる。

・コンピュータ理工学研究科において、学位論文審査基準が明文化されていないの  で、課程ごとに『Campus Guide』などに明記するよう、改善が望まれる

 

3.学生の受け入れ

<学部>

・大学全体の学生の受け入れ方針は定めているものの、学部ごとの方針は定めていないので、改善が望まれる。

・編入学定員に対する編入学生数比率が低いので、改善が望まれる。

・入学者数比率の 平均及び収容定員に対する在籍学生数比率が高いので、改善が望まれる。

・修学意欲の低下を動機とする退学者が多い状況に鑑みて、入学者選抜のあり方を抜本的に見直すことも含めて学生の受け入れの適切性をより一層検証し、改善につなげることが望まれる。

<大学院>

・研究科の学生の受け入れ方針は、博士前期課程と博士後期課程で区別されていないので、課程ごとに策定するよう、改善が望まれる。
 ・収容定員に対する在籍学生数比率について低いので、改善が望まれる

 

・入学試験の2次選考の筆記試験において、公平性に疑義が生じる可能性があるた  め、改善が望まれる。 

 

 

4.学生支援

・「○○規程」には「ハラスメント」の表記があるのみで、アカデミック・ハラスメント等を含めたハラスメント全般の防止について諸規程が設けられておらず、また、ハラスメント防止に関する委員会等も未整備であるため、改善が望まれる。
・両キャンパスの学生相談室及び保健室では、相談員及び医師の勤務が週1日となっており、専門家が常駐する体制が整備されていないため、改善が望まれる。 

・教育開発支援センターが中心となって情報収集と分析及び改善策の立案など真摯に取り組んでいるものの、1年次前期の修得単位が 10単位以下にとどまる学生が依然として多く、その結果として修学意欲の低下を動機とする退学者が多い状況を踏まえると、退学者抑制の取組みが十分になされているとはいえない。抜本的な解決のため、組織的に取り組んでいくことが望まれる。

5.教育研究環境

・図書館には、司書資格を有する専属の職員がいない。もしくはパートタイマー・アルバイトの職員である。

・「研究活動上の不正行為等の防止および対策に関する規程」を策定しているものの、研究活動における不正行為への対応を担う体制は設けられておらず、事前防止に関する取組みも外部からの補助金を得た研究者に限っていることから、体制を整備し、すべての専任教員及び大学院学生に研究倫理を涵養するよう、改善が望まれる。

・公的研究費以外の研究倫理に関し、不正防止に向けた規程・体制の整備や研修会を行っていないため、改善が望まれる。

・大学内に体育館の施設はなく、隣接する高等学校が所有する体育館を申請により  利用できることとなっているが、高等学校側が利用していることが多いなど、学生が十分に活用できない状況にあるので、改善が望まれる。

 

6.管理運営・財務

○管理運営

・「学長補佐会議」「大学院専門委員会」「教務委員会」など、意思決定に係る重要な  委員会の役割や権限が明確ではないなど、規程が十分に整備されていない。

○財務

・学生生徒等納付金の減少に伴い、「事業活動収入(帰 属収入)に対する翌年度繰越支出超過額(翌年度繰越消費支出超過額)の割合」が増加に転じており、「要積立額に対する金融資産の充足率」は減少していることから、教育研究目的・目標を実現するうえで必要な財政基盤は十分であるとはいえないので、具体的な数値目標を明確にした中・長期の財政計画を策定し、財政  基盤の安定化を図ることが望まれる

・学生生徒等納付金が減少していることから、「事業活動収入(帰属収入)に対する  翌年度繰越支出超過額(翌年度繰越消費支出超過額)の割合」が著しく高く、「要積立額に対する金融資産の充足率」が著しく低い状態が続いており、必要な財政  基盤は確立されていない。事業活動収支差額が収入超過となるよう財政計画の抜本的な見直しを行い、支出の削減に向けた施策を検討するとともに、学生生徒等納付金を中心とした収入の確保を確実に実施して、財政基盤を確立するよう是正されたい。

 

7.内部質保証

・規程に基づき、「自己点検評価委員会」が自己点検・評価を行っているものの、認  証評価への対応にとどまっており、大学全体として定期的な自己点検・評価が行われてきたとはいえない。今後は、定期的に自己点検・評価を実施するとともに、その結果を改善につなげる内部質保証システムを整備し、機能させるよう、改善が望まれる。

・規程に従い自己点検・評価を行っているものの、その周期は認証評価に備えた7年に1度に限られており、大学全体として定期的な自己点検・評価を実施しているとはいえない。さらに、前回の大学評価において指摘された事項がいまだ改善されていないことから、自己点検・評価を含むPDCAサイクルが機能している  とはいえない。今後は、組織的かつ定期的な自己点検・評価を実施するとともに、内部質保証システムを構築し、機能させるよう、改善が望まれる。

・自己点検・評価を担う組織として「教育研究センター運営委員会」を設け、そのワーキンググループとして「自己点検推進委員会」において自己点検・評価の実務を行うとしているが、これらの組織体の役割分担・連携は明確ではなく、点検・  評価の結果を改善につなげる仕組みも十分に整備されていない。

・学校教育法施行規則により公表が求められている情報のうち、一部の教員の学位、  修了者の就職等の状況、学生の修学・進路選択及び心身の健康等に関する支援に関する事項がホームページに掲載されていないので、改善が望まれる。

また長所については、例年であれば5月末ぐらいに一覧が掲載されるかと思います。

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