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大学のCAP制(キャップ制)は何単位までいいのか~認証評価の議論を中心として~

1単位45時間という大学の単位制度の実質化に関する議論でCAP(キャップ)制に関するものがあります。

近年は単位の実質化を求められている事や、大学の認証評価でも指摘されています。そこで、CAP制度の議論や問題は何なのか、またどうあるべきなのかなのでしょうか?

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CAP制度(キャップ制度)とは何か

それではCAP制とは何でしょうか?まずは文部科学省の中央教育審議会の学士課程教育の構築に向けて(答申):文部科学省の学士課程答申用語集には次のように記載されています。

【キャップ制】(p20,21,)
単位の過剰登録を防ぐため,1年間あるいは1学期間に履修登録できる単位の上限
を設ける制度。
我が国の大学制度は単位制度を基本としているが,大学設置基準上1単位は,教員
が教室等で授業を行う時間に加え,学生が予習や復習など教室外において学習する時
間の合計で,標準45時間の学修を要する教育内容をもって構成されている。また,
これを基礎とし,授業期間は1学年間におよそ年30週,1学年間で約30単位を修
得することが標準とされ,したがって大学の卒業要件は4年間にわたって124単位
を修得することを基本として制度設計されている。

またCAP制の根拠ですが、大学設置基準にその旨が記載されています。

(履修科目の登録の上限)

第二十七条の二 大学は、学生が各年次にわたつて適切に授業科目を履修するため、卒業の要件として学生が修得すべき単位数について、学生が一年間又は一学期に履修科目として登録することができる単位数の上限を定めるよう努めなければならない。

2 大学は、その定めるところにより、所定の単位を優れた成績をもつて修得した学生については、前項に定める上限を超えて履修科目の登録を認めることができる。

キャップ制を導入している大学は、文部科学省の「大学における教育内容等の改革状況について(平成27年度)」のP12によると次のように記載されています。なお、本調査は全ての大学が対象です。

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigaku/04052801/__icsFiles/afieldfile/2017/12/13/1398426_1.pdf

平成27年度現在、国公私立683大学(約92%)が履修科目登録の上限を設けている(その内、学部全体で設けている大学は663大学(約89%))。 

少し前の調査で、平成28年度の調査結果には出ておりませんが、かなりの大学でキャップ制が導入されているようです。

また私立大学のみですが、平成30年度私立大学等改革総合支援事業のタイプ1「教育の質的転換」の設問⑬にCAP制の運用があります。ここの結果を見てみるとタイプ1に申請した622校※の内、39%が全学でCAP制を運用しています。

※タイプ1に申請した622校には200短大、2高専を含みますので、大学全ての数字ではありません。

 

大学の単位の実質化に関するCAP制の課題

ただ、キャップ制の導入や運用については色んな意見を聞きます。例えばこんなものが挙げられます。

  • CAP制度を厳しく(履修上限の単位数を少なく)すると、就職活動までに取らないといけない単位が残ってしまう。
  • 半期に取れる単位が少ないと、授業や勉強がなくなり学生は遊んでしまう。
  • 単位をほとんど取れなかった場合、早期(例えば1年次末)に4年で卒業できないことが分かってしまう。
  • 上記から発展し、退学率を上げる原因の1つになってしまう

またキャップ制については大学教育部会(第29回)で関西国際大学の濱名学長は次のように指摘しています。

キャップ制の話は,現在,設置基準上キャップ制を置くことが努力義務になっています。キャップ制については専門職養成の目的養成分野においては非常に悩ましい関係で,つまり,資格要件とキャップ制の両立の問題というのは保健医療の分野を筆頭に,あるいは教員養成の分野も含めて調整していかなければいけない状態です。ところが,現状はガイドラインを示してないので,認証評価機関ごとに扱い方はばらばらです。また,設置審査なり,アフターケアの中でも共通見解を出し切れていない。ところが,現在のキャップ制の相場というのは2学期制を前提に考えていますけれども,東京大学など,4学期制になってくると,それを単純に半分に割ればいいのかとか,そのあたりについても明確にしていかなければいけない。

確かに教員免許や厚生労働省管轄の資格(例えば看護師)取得を目的とした学科や課程の場合は、CAP制は悩ましい問題です。3年あるいは4年次の実習までに一通り必要な知識を学ぶ必要があります。その為、教養系科目などは4年次の後学期に履修するとした履修モデルにしている大学もあります。

 

大学のCAP制は上限を何単位にすればいいか?

大学の単位制度は1単位45時間(1日8時間×5日+半ドン5時間)で構成されています。つまり、セメスター(半期)制の4年生大学だと、1週間で1単位の学習×15週×2学期×4年間=120単位、これに4単位を加えて124単位となります。

その為、単位制度の実質化の観点から言うと半期では15~16単位が単位制度の趣旨に沿った履修登録上限数といってもいいかもしれません。

玉川大学のCAP制度

私が知っている中で全国トップクラスに厳しいCAP制を運用している大学の1つとして玉川大学があります。

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玉川大学では半期に16単位を履修上限としています。ただ上限16単位に含めない単位やGPAに応じた「成績優秀者の18単位履修制度」もありますので、年間32単位までしか履修できないという事ではありません。

CAP制度の履修登録上限数は何単位までいいのか

CAP制度の履修登録上限数は法令でここまではいいというラインは引かれていません。また文部科学書のHPに掲載されている「大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き(平成31年度改訂版)」のP287にあるQ&AのQ5では下記のように説明がされています。

Q5. 履修科目の登録の上限を定める場合,申請書又は届出書においてどのような説明をする必要がありますか。
A. 履修科目の登録の上限を定める場合は,学生の適切な学修時間の確保の観点から,上限となる単位数の設定の趣旨について説明していただく必要があります。なお,上限とすべき単位数は,学科等の目的や教育課程の内容等によって異なるものと考えられますので,一般的な目安等についてはお答えできません。

大学や学部学科等を新しく作る際はCAP制やその具体的な内容について、設置の趣旨等にも記載しますが、国側としてはn単位でなければならないという事はありません。

認証評価で求められるCAP制の上限~大学基準協会を中心に~

大学が7年に1回受けなければならない認証評価において、例えば大学基準協会では、基礎要件に係る評価の指針(平成 30 年3月) で次のように記載しています。

単位の実質化を図る措置としては、教育課程上の配慮、成績評価の厳格性の確保、授業時間外に必要な学習の促進等の取り組みのほか、学士課程に関しては履修登録単位の上限設定(年間 50 単位未満で設定していることを目安とする)が該当する。
※ 上記のうち履修登録単位の上限設定は主要なものと考えられるが、その実施を一律には求めない。特に、厚生労働省関係の国家試験の受験資格を得ることが必須となっている学部・学科については、その他の措置の状況も十分に踏まえて判断する。

以下の場合は、これに該当する学生数が適正な範囲であるかなど、制度の運用実態に十分な注意を払う必要がある。
① 大学設置基準第 27 条の2第2項の規定に基づき、成績優秀者に対して履修登録単位数の上限を緩和又は適用外としている場合。
② その他学内の規定に基づき学部長や学科長等による許可のもと履修登録単位数の上限を緩和又は適用外としている場合。
※ 履修登録単位数の上限設定については、編入学生に対する場合も同様とする。

大学基準協会は、原則として年間50単位未満である事を目安としています。50単位未満ですので半期24~25単位ぐらいになります。

認証評価前に確認すべきCAP制の運用

また注意が必要なのは、各大学でよく運用されている成績優秀者に対してCAP制の緩和についてです。 以前、2018年度からの第3期認証評価を大学基準協会で受審した大学の評価結果の指摘事項をまとめたことがあります。 

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第3期認証評価1年目の評価結果を見るとCAP制に関する指摘がいくもあります。

  • 単位の実質化を図る措置が十分になされていない。(例えば、CAP制度があっても教職やインターンシップは上限を超えて履修する事を認めている
  • CAP制度の上限緩和条件が学年の半数以上が該当しており、制度が機能しているとはいえない。
  • CAP制度が4年生には適用されていない。
  • 3年次編入学生に対して履修登録単位の上限を設定していない。

例えば半期24単位のCAP制で、CAP制を対象外としたインターンシップなどで+2単位で50単位の履修となると指摘される対象になる場合があります。

これは上限緩和制度も同様で、半期24単位が上限でもGPAに応じて+4単位を前後学期でやった場合は年間56単位の履修となります。つまり、制度で50単位未満だから認証評価でOKはなく、色んな例外の取り決めを適用して50単位未満にしておく必要があるのです。

つまり学生の履修数が運用上で半期24単位×2学期+αで50単位を超えているとアウト!と考えていいでしょう。

またもう1点重要な点として、GPA制度の上限緩和制度の指摘です。認証評価の指摘事項では、上限緩和条件についても指摘がされています。例えば「GPAが2.5以上であれば、〇単位追加で履修できる」とするのであれば、GPAをその数字にした具体的な根拠が必要になるでしょう。要は大学としてきちんとその数字の設定を説明出来なければ、指摘を受ける可能性があります。

 

終わりに~CAP制は単位制度の理解が不可欠~

本記事ではCAP制の是非や効果についてではありませんが、CAP制を議論するには単位制度の理解をお互いに持っていないとならないと思います。

さらに認証評価ではCAP制の運用について、近年は厳しく見られるとも聞きます。その為、学内では単位制度やCAP制の共通理解をしておくことも必要ではないかと感じます。またCAP制それだけを議論するのではなく、大学の教育全体で議論する必要があるでしょう。