「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」(平成28年文部科学省令第16号)が平成28年3月31日公布、そして平成29年4月1日から施行された事により、各大学は学位プログラムごとに、「ディプロマ・ポリシー(DP)」、「カリキュラム・ポリシー(CP)」、「アドミッション・ポリシー(AP)」を策定しているかと思います。
これらの方針は公表する事が求められており、おそらく各大学のホームページ等で確認する事が出来ます。各大学では、学内での審議や調整を経て、やれやれと思っている所かもしれません。しかし3つのポリシーについては、肯定・反対意見はあるものの、このポリシーに則っていく必要があります。
則るという事は、この方針に沿った事をやればいいかという事だけではありません。「「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン」では、次のように記載されています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/__icsFiles/afieldfile/2016/04/26/1369884_3.pdf
(1)三つのポリシーに基づく大学教育のPDCAサイクル
○ 大学教育を充実させるためには,三つのポリシーを起点とするPDCAサイクルをポリシーの策定単位ごとに確立し,教育に関する内部質保証を確立することが必要である。例えば,三つのポリシーの策定単位が学位プログラムであったならば,当該学位プログラムの教学マネジメントを担う者において,三つのポリシーの策定を通じて具体化された入学者選抜,教育の実施及び卒業認定・学位授与の各段階における目標(「P」)が,各ポリシーに基づいて実施される入学者選抜及び体系的で組織的な教育(「D」)を通じて達成されたかどうかを自己点検・評価(「C」)し,学位プログラムについて必要な改善・改革(「A」)を行っていくサイクルを回していくことが求められる。
○ また,大学教育の充実のためには,こうしたポリシーの策定単位レベルだけでなく,例えば,各授業科目のレベルにおいても,各教員がディプロマ・ポリシーやカリキュラム・ポリシーを踏まえながら,授業改善に向けたPDCAサイクルを機能させることが重要である。
○ さらに,各大学において,三つのポリシーの策定単位ごとの取組全体を俯瞰した全学的な規模での教学マネジメントを構築することも求められる。
大学とPDCAに関わる議論は、色々ある事は知っています。しかし、点検評価をどのように行っていくかは、予めどうするかは話し合っておかないと、3月末に「さぁ、やろう!」では大変です。そこでいくつかチェックポイントを洗い出してみました。
①3つのポリシーにおける点検評価を何処で行うか、決めていますか?
→3つのポリシーは、学位プログラムごとに策定がされている事が基本ですので、DP・CP・AP全てを学位プログラムで行う事もあるでしょう。もしくはAPのみ、入試に関する委員会や部局で行う事も考えられます。(その際は、個人の考えのみでできるようにしておくのではなく、適切な根拠ある会議で検討できる事が必要かと思います)
②いつ、点検評価を行うのか?またどのタイミングでポリシーの見直しを行うのか?
→点検評価は毎年度末に行う事が多いかと思います。しかし毎年度末の点検評価で毎年ポリシーを変更する事は、あまり現実的ではないと思います。例えばカリキュラムポリシーを見直しをした場合はカリキュラムもセットで変更する事もあるかと思いますので、年度末での検証を重ね、数年おきにポリシーそのものを見直すと予め設定しておく事も一つです。
③評価に活用する情報やデータはあるか、適切かどうか
→3つの方針が運用されて、しばらく経ってから点検評価にこういうデータが必要だと思っても、取得できないケース(データ)もあるでしょう。またデータをどこから、いつもらうかも予め調整はしておく必要があります。(そのあたりはIR室やIR担当者の出番なのでしょうけど。そうするとIR担当者も、このあたりの知識は持っておかないと適切なデータや情報は出せないよなと日々感じています)
④ディプロマ・ポリシーの身に付けた力は何を持って、どのように測るのか
→カリキュラムポリシーに含む「教育評価」と関わってきますが、少し前で言うとアセスメントポリシーに関する部分ですね。 例えば卒業論文で測るとか、資格課程であれば、資格取得で測るとか、大学によって異なる部分かと思います。またカリキュラムマップや体系図とかともあわせながら、検証していく部分かと思います。
⑤カリキュラム・ポリシーの教育方法や教育評価をどうやって測るか
→「教育課程の編成・教育内容」は毎年度末に測るというよりは、DPやAPの点検評価もふまえながら数年スパンで見直すものではないかと思っています(毎年度点検評価しても、早々に毎年修正する事は難しいでしょうし)そして、教育方法や学修成果の評価については、ポリシーに記載している事に取組んだかどうかや、その結果についての検証がどうだったかを明確にして実施する必要があります(例えば、いつどのような方法で何を計測するかを明確化したアセスメントプランの策定など)
⑥アドミッション・ポリシーの点検評価
→現在、高大接続改革の議論がありますので、それもふまえながら点検評価をしていく必要があります。
新しい3つのポリシーの点検評価はまだ先の話ではありますが、点検評価を行うにあたって、大学事務局やIR担当者としてもどのような資料が必要であるのかは、今から想定をし、適切な時に提示できるようにしておかなければいけないのではと思います。