大学の学部学科の編制を見ていると、学科の中に○○コースと記載している大学が少なからずあります。実は大学関係者でもコースとは何か、何故学科ではなくコースなのかの理由を知らない人はいるのではないでしょうか。
今回は「学部・学科・コース」をテーマに法令から見ていきます。
根拠となる法令について
まずは法令の根拠から見ていきましょう。大学設置基準で示されているのは次の通りです。
第二章 教育研究上の基本組織
(学部)
第三条 学部は、専攻により教育研究の必要に応じ組織されるものであつて、教育研究上適当な規模内容を有し、教員組織、教員数その他が学部として適当であると認められるものとする。
(学科)
第四条 学部には、専攻により学科を設ける。
2 前項の学科は、それぞれの専攻分野を教育研究するに必要な組織を備えたものとする。
(課程)
第五条 学部の教育上の目的を達成するため有益かつ適切であると認められる場合には、学科に代えて学生の履修上の区分に応じて組織される課程を設けることができる。
大学設置基準では特にコースという記述はありません。
なお、短期大学では、短期大学設置基準で次の通りとなっています。
第二章 学科
(学科)
第三条 学科は、教育研究上の必要に応じ組織されるものであつて、教員組織その他が学科として適当な規模内容をもつと認められるものとする。
2 学科には、教育上特に必要があるときは、専攻課程を置くことができる。
設置基準を見てみると短期大学には、学部がありません(また第三条の中に専攻課程が記載されています)
大学の設置等に係る提出書類の作成の手引きのQ&A
設置基準の紹介だけではよく分かりませんので、平成28年度大学の設置等に係る提出書類の作成の手引きのQ&Aから関連する質問について抜粋してみます。今回は「学部・学科・コース」に関して記載されているQ36を少しまとめました。
大学に関して法令上規程されている組織上の最小単位は「学科」。その下に設定する「専攻」「コース」「プログラム」等は、学科の専攻分野の範囲内で教育上の目的から一部の科目の履修方法を指定するなどにより設定される、学生の「履修上の区分」に過ぎない。よってコース等に定員を設定することはできない。コースの設定は授与する学位の分野の範囲内においてのみ可能である。
短期大学の場合は、法令上規程されている組織上の最小単位は、「専攻課程」であり、教育上特に必要があるときは、学科内に専攻課程を設け定員を設定することができます。ただし授与する学位の分野と異なるものについては、専攻課程として取り合うことはできない。
大学の最小は学科の為、新しく学科を設ける場合は、文部科学省に認可申請か届出をする必要があります。
コースを設ける場合
それではコースを設ける場合はどうするかですが、次の事が考えられます。
①学部学科を新たに申請しコースを設ける場合は、コースは設置の趣旨に記載する必要がある。認可申請の場合は、特にそのコースの教育研究や教育の体系性などが出来るかどうかの審査がされる。
②既に完成年度(例えば(何も問題がない)学部であれば、認可申請がされてから5年目以降)が過ぎてコースを設ける場合、学科そのものを変更しないのであれば、カリキュラムの変更のみで、コースを設ける事ができる。(言うまでもなく、既存のカリキュラムでもコースとする事はできます)
なお、カリキュラム変更は学則変更でできますので、学科の認可申請や届出をするより、かなり楽です。
ちなみにコースの場合は教員数は次の通りです。
Q17.学科の中に複数領域を設ける場合の専任教員数の基準について
A.原則は1学科としての教員数を適用する。しかし、認可申請の場合に、審査の課程で領域ごとの教育研究を行うのに必要な教員数が適切に配置されているかを確認する場合がある。
大学の最小単位は学科なので、学科で計算するということですね。
まとめ
さて、つらつらと書いてしまいましたがまとめです。
①大学の最小単位は学科(コースではない)
②コースを作る場合は、認可申請や届出が必要ない場合があるので、簡易的に出来る(場合がある)。
③必要に応じて設置しやすい。(柔軟に対応しやすい)
④新たに学科を作ると教員が必要で人件費増えるけど、コースの場合は学科設置と比較して必要な教員数は少ない。
⑤きちんとそのコースにあった教育が出来ているかの検証が必要。
(という事は、1学部1学科で、多様な領域を含む学問分野にしてコースをたくさん作ると…)