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卒業要件の厳格化②~考えるべきは評価とリテンション~

 前回のブログ記事で、卒業要件の厳格化について記載しました。

 

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卒業要件とディプロマポリシー

そもそも殆どの大学は、卒業要件は規定の単位数を取得することが多いです。そして今回の卒業方針は次の通りです。 

 学生の「卒業方針」は、各大学が学生に身に着けさせる学問やスキルを示し、社会に送り出す具体的な卒業生像

 前回はディプロマポリシーについても触れましたが、ディプロマポリシーに基づいたカリキュラムが整備され、カリキュラムマップを作成している大学は既に卒業生像はできているでしょう、また国家資格取得を目指す学部や理系の一部の学部も同様に考えられます。

また卒業生像が出来上がると、入学した学生が卒業生像となるレベルになっているかといった評価も求められると考えています。 

アセスメントポリシー

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 以前、アセスメントポリシーについて触れましたが、このあたりが関連するのでしょう。ただアセスメントポリシーは、ホームページで公開している大学は東北福祉大学など限られた大学だけですので、事例を探すのは難しいです。(私見として補助金獲得要件に入るのではないでしょうか)

 

さて、議論の一つとして卒業要件の厳格化を行うと退学者が出るといった話も聞きます。退学の要因分析や予防を行っている大学も多々ありますが、私としては如何に退学させないかより、どうやって学生リテンション率向上を挙げるのかに注目しています。(リテンションは日本ではあまり聞かない言葉ではありますが、学生をどう大学に繋ぎ止め、大学に留めておくかという意です。)

近年は様々な大学特集の雑誌で、各大学の退学率が出ていますが、正直その数字だけではどの学部学科がいつ退学したのか、4年間の卒業率はどれぐらいなのかは分かりません。

アメリカでは大学のホームページでリテンションのレポートが公開されており、ここから該当の大学の学生の動向の一部を読み取ることが可能です。

https://www.iu.edu/~uirr/reports/standard/retention/

http://www2.humboldt.edu/irp/retention_report.html

 

またリテンション率を上げるため、アメリカの大学は様々な方策を実施しています。

「Student Retention in Higher Education」(David Harwood,2014)では、4大学にリテンションの方策についてインタビュー調査を実施しており、各大学のリテンションの方策を紹介しています。例えば、コミュニティーカレッジのデルタ大学は、全ての学生に入学を許可する大学ですが、リテンション率向上の為、アセスメントテストの活用、学生情報を入力し一定条件を満たすと学生に問題や大学への相談を促すメッセージを送るシステム、低所得者が勉強するための保育、またミシガンセントラル大学では「Map-Works」と呼ばれるシステムの使用、学習センターやライティングセンター等の設置等が挙げられています。

日本の大学でも既に同様の取組みがされている大学も少なくないですね。

日本中退予防研究所所長の山本氏(日本中退予防研究所)も言っておられた事ですが、中退への対応をするのではなく、予防することが重要であり、さらには中退ではなく入学した時から学生をどう大学に留めておくのかといった方策こそが必要だと思います。

このあたりはIRや、またリテンション率向上のためのプログラム作成は職員も大きく役割を果たす事が必要かと思っております。