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平成26年度私立大学等改革総合支援事業タイプ1 設問毎・回答毎から見る傾向について

既にご存知の方も多いとおもいますが、今年度の私立大学等改革総合支援事業に採択結果が発表されました。

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

 

今年度採択結果は非常に細かく公表されております(タイプ別や都道府県別など)のでここで取り上げることはありません。今回は公表されている、「設問毎・回答毎の該当件数」という資料から、今後の私立大学の改革の方向性について考えてみます。

 

Ⅰ.どの大学も取組まれている事項

まず、本補助金の説明会で「平成25年度の私立大学等改革総合支援事業において、ほとんどの大学が実施している項目については、配点を見直しました」と言われていました。そこで今年度において、ほとんどの大学で実施している項目、もしくは申請校と選定校の実施率はあまり変わらないものについて見ていきます。

 

上記の条件に当てはまる設問は5つになります。(一部省略)(申請校706校、選定校314校)

  ①ディプロマポリシーを作成し、ホームページで公表しているか?

     ・公表している 4点

   ・該当しない  0点

   4点の割合 申請校95% 選定校99%

  ②全学的なマネジメント体制の構築

   ・構築されている  10点

   ・構築されていない  0点

   10点の割合 申請校82% 選定校99%

  ④教育課程形成・編成にあたり、職員が参加する仕組みがあるか

   ・全学部である   5点

   ・一部の学部にある 2点

   ・設けていない   0点

   5点の割合 申請校86% 選定校99%

  ⑦シラバスに到達目標の明記を求めているか

   ・全学部研究科等で実施   4点

   ・一部の学部研究科等で実施 2点

   ・実施なし         0点

   4点の割合 申請校94% 選定校99%

  ⑫FD実施のための組織の設置とFDの活動を3回以上行っているか

   ・全学部等で実施      4点

   ・一部の学部等で実施    2点

   ・実施していない      0点

   4点の割合 申請校93% 選定校100%

いずれも重点項目ではありませんが、ほとんどの大学が取組みを行っている事項になります。次年度以降は、①現状維持、②設問がなくなる、③配点を減らす、④内容は同じでも求めるハードルを高くする、などが想定できます。

特に重点項目の大学マネジメント体制の構築については、配点が減る可能性があるのではないでしょうか。

最後に教育課程の形成・編成にあたり、職員が参加する仕組みですが、仕組みだけあっても職員が事務仕事ではなく、教学に関する知識や経験を踏まえて参画が必要です。

 

Ⅱ.文科省が定める重要事項について

文科省がタイプ1で定めている重要事項の設問と結果が以下の通りです。(一部上記と重複)

  ②全学的なマネジメント体制の構築

   ・構築されている  10点

   ・構築されていない  0点

   10点の割合 申請校82% 選定校99%

  ⑥シラバスに準備学修等の時間や内容を記載しているか

   ・全学部研究科等で実施   10点

   ・一部の学部研究科等で実施  5点

   ・実施なし          0点

   10点の割合 申請校79% 選定校95

       ⑨学修時間や学修行動の把握

   ・全学部かつ複数の学年    10点

   ・一部の学部、一つの学年のみ 3点

           ・行っていない

   10点の割合 申請校72% 選定校96

  ⑩学生による授業評価結果の活用

   ・全学部で授業改善の組織的な取組みの実施    10点

   ・全学部で授業選択の参考として結果を学生に開示  5点

   ・一部の学部で授業改善の組織的な取組みの実施   3点

   ・全学部で結果を開示し自主的な改善を促しているか、

    一部の学部で授業選択の参考として学生に開示   2点

   ・上記4つには該当しないが、一部の学部で評価結果を開示 1点

   ・該当しない                  0点

   10点の割合 申請校43% 選定校71%

重点項目は、授業評価結果以外は、選定校の実施率は高いです。個人としては「学修時間や学修行動の把握」が高いのは驚くべきことだと思います。このへんはIRとしても関連があるところですが、学生調査の項目の一つとしてやっているのか、それとも学修行動調査等のそのものの調査を実施しているかも興味深い所です。調査は、抽出でもいいとされているので、申請の基準日までに調査を実施した大学もあるのかもしれません。

⑥は、単位の実質化を踏まえての設問かと考えられます。数年前、シラバスの様式を変更する際に様々な大学のシラバスを見てみましたが、準備学修に関する標記があったシラバス(様式)は少なかった印象があります。この数年でだいぶシラバス改革が進んだとも捉えられます。

またⅠでも述べましたが、授業評価以外は、選定校は実施率が高いですので、来年は配点が変わる可能性も否めません。

 

Ⅲ.その他(IRの取組みについて)

 このブログでもよく取り上げているIRの設問を最後に見てみます。

  ③大学内にIRを専門で担当する部署を設置、専任の教員か職員の配置

   ・専門の部署を設置、専任の教員か職員を配置   5点

   ・専任の教員か職員の併任による委員会方式を設置 3点 

   ・該当しない

   5点の割合 申請校15% 選定校27%

   3点の割合 申請校31% 選定校47%

IRを専門に行われる部署の設置は、今回の申請大学の中では15%(109校)あり、委員会方式とあわせると半数以上がIRについて取組んでいると考えられます。IRの人材育成についてはまだ模索の段階かと思いますが、他大学との事例交換だけではなく、大学としてIRにどのような目的にするか、そして何を目指すかを明確にし、人材育成や確保をどうするかといったことの議論が必要かと思います。

(IR≠学内の情報や学生情報を自由に使えて研究できるではないということも踏まえる必要があると考えています)

 

また平成26年度私立大学等教育研究活性化設備整備事業の採択校についても案が文科省のホームページに出ております。こちらについても、私立大学等改革総合支援事業の結果と併せて今後見ていきたいと思います。

私立大学等改革総合支援事業委員会:文部科学省

※資料8、資料9をご参照下さい