大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

大学や高等教育関連、法令の解説が中心のブログ

【スポンサーリンク】

大学職員とIR~職員がIRを関わる意味とは~

私立大学等改革総合支援事業でIRの組織(専任の教職員がいること)や委員会について、点数の配分がなされ、各大学でIR室を設置された大学もあるかと思います。

 

私が勤める大学も、IR室を設置して専任の教職員を置くことについて話は出ているようです。私はIR室所属でもないのですが、どちらかというと教学IRの業務を一部やっておりますので、このようなブログタイトルにしております。

 

さて、先週今週とIR関連のセミナーが開催され、今月も21日に私学高等教育研究所の公開研究会がIRをテーマに開催されます。


私学高等教育研究所 :公開研究会|日本私立大学協会

 

私もいくつか参加させていただきましたが、その中で思った事や考えた事(例えば職員としてIRについてどのように関わるのかが自大学や私自身の課題)について何点か挙げてみたいと考えています。(まあ本学がこれからやらなければならないことでもありますが…。)

 

①大学がIRに何をするのか目的(ヴィジョン)を明確にしているか

 データを集めるだけであれば、実は学校基本調査等で既にどこかの部署でできていることです(おそらくは総務などの部署が多いのでしょうか)データを集めるだけではなく、例えば教学関係の評価や政策の意思決定の支援なのか、大学経営政策の意思決定の支援といったものがないと、その大学でのIRの役割は何でも屋(魔法の杖)になってしまうのではと危惧しています。

 

②大学ポートレート=IRの業務ではない

 大学ポートレートは、データもありますので、IR組織も(IR組織のヴィジョンに応じて)関与はする場合があるでしょう。まもなく大学ポートレートが私学が見られるようになりますが、数値ばかりではなく、教育の取組など様々な情報を文章で記載する必要があります(自学のホームページのリンクを貼るだけという方法もありますが…。)これらはIR組織の仕事かと言われると疑問が残ります。ちなみにポートレートは、高校生なども対象にしているため、500字前後入力できていても、高校生が読みやすいと思う工夫(文章を短くするなど)をしたほうが良いとの事です。

 

③学内の情報がどこにどのような状態(様式、形式等)でどのような情報を閲覧する権限があるのかを明確にする。

  データウェアハウスなどの導入はどうですかとか、企業からも売り込みが最近多くなっておりますが、まずはここからであると思います。また大学によって個人情報保護法にしたがって、学内で個人情報の取り扱いについて規程を定めている大学もあるかと思いますので、そのあたりのチェックも必要です。(たまに個人情報にアクセスする権限がなく、必要な手続きさえ踏んでいないで個人情報を使用しているケースはないでしょうか?)

 

ここからは特に職員としてです

④まずはデータの保管やデータベースの作成、そしてエクセルの使い方

 IRというと統計学を駆使してというイメージもあるかもしれませんが、まずはデータをクリーニングできることが重要だと思います。そしてSPSSやRなどを覚えないといけないという事もなくはないのですが、エクセルでもできる事は多いですので、まずは表だけではなくエクセルの機能を理解し使えるようになる事が重要ではないかと思います。(もちろん基本的な統計は理解しておく必要はあるとは思います)

 

⑤プレゼンテーションや報告書作成のスキルを高める

 執行部といっても、教員出身だけではなく外部の方がいらっしゃる場合があります。統計学や難しい表やグラフを駆使したプレゼンや報告書を提示しても意味がわからないと言われればそれまでです。相手に伝わるプレゼンテーションや報告書作成のスキルは非常に重要であると思います。(あとは、難しい用語をいかにわかりやすく噛み砕いて説明できるかでしょうか)

 

⑥高等教育政策、自学の状況を理解する

 職員としてこれが一番重要ではないかと思います。特に自学の状況については、職員も中期経営計画に関わったり(もしくは立案したり)、各種数字を目にする事が多いと思います。先生方と職員とでも自学への捉え方は違うと思いますので、職員として見えている大学の状況を踏まえてIRの業務に携わるというのが、IRが執行部の意思決定の支援、特に大学経営の部分に大きく寄与できるのではないでしょうか。

 

 IRについては、国内でも徐々に研究が進められておりますが、先日の九州大学の高田先生が「IRは研究のように普遍的知見の追及ではない」とおっしゃっていたのが非常に印象的でした。アメリカではIRは専門職として確立されておりますが、日本ではこれからどうなるのかは、大学教職員(特に職員)のキャリアモデルの観点からも興味深い所ではあります。