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私立大学は補助金で何をしないといけないのか~試行として図解版~

私立大学の収入は、学生からの納付金(学費等)だけではなく、補助金や寄付金などもあります。補助金は常に一定の額が配分されるのではなく、算定基礎によって算出されますが、近年は大学の取組みによって補助額がだいぶ変わるようになりました。

例えば、本ブログでも書いている私立大学等改革総合支援事業の選定結果や教育の質に係る客観的指標によって、+αがされたり、一定割合が増減されるようになりました。
それも取組みをすれば増えるのではなく、一定額が減らされ、頑張って補助金は現状維持や+αになっています。

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 そこで私立大学は、大学(全体)として教育に関する取組みをきちんと行っていかないとならないと判断する大学も多くあるでしょう。

では2019年度において私立大学等改革総合支援事業タイプ1の「特色ある教育の展開」と教育の質に係る客観的指標のために大学としてどのような事をやらないといけないのでしょうか。

補助金と大学の教育に関する取組みイメージ

概要のみですが、どのような事を大学は取り組むのかを簡単なイメージ図にしてみました。(図が見にくい人は本記事の一番下にあるPDF版をご覧下さい)

2019年度私立大学 補助金

これはイメージ図なので、組織間の関係性などは大学によって異なります。また赤枠のものは経常費補助金の交付に係る「教育の質に係る客観的指標」に関する事業や組織です。

さてIRが大学内の調査を担っているとこの図ではしておりますが、そうするとIRは補助金の中で重要な位置であると言えるかもしれません。

また産業界(地域社会)も点検評価への参画や、学修成果に関する協議、データ分析を用いたPBLの実施、関連として実務家教員の教育課程編成への参画が求められています。

学部等においては、様々な制度や仕組み、取組が求められるようになりました。ただ中には一部の学部や科目でもいいというものもあります。これだけの事をやらないといけないのかと思う人もいるでしょうが、既に制度がある、取り組んでいるというものも数多くあるはずです。

改革総合支援事業と客観的指標の図解PDF

上記の図のPDFはこちらから閲覧が出来ます。

 

令和元年度「私立大学等改革総合支援事業」タイプ1「特色ある教育の展開」に関するメモ(暫定版・9.26追記)

8月下旬に令和元年度「私立大学等改革総合支援事業」の調査の依頼が来ました。
そこで昨年度の私立大学等改革総合支援事業のタイプ1の変更点と気づいた事をまとめます。なおQ&Aが出ていないので、暫定版であり、今後随時追記修正します。

なおこの事業のタイプ1は一昨年まではマイナーチェンジで、昨年は大きく変わり、今年はさらに大きく変わっています。そしてその内容も大学の現場にかなり踏み込んできているものになります。

 

令和元年度「私立大学等改革総合支援事業」タイプ1の概要について

今年度のタイプ1は概要もだいぶ変更されています。まずは概要を昨年度と比較して見てみます(表1)

      表1 私立大学等改革総合支援事業タイプ1概要

  2018年度 2019年度
名称 教育の質的転換 特色ある教育の転換
説明 全学的な体制での教育の質的向上に向けた取組を支援。 教育の質向上に向けた特色ある教授・学習方法の展開を通じた教育機能の強化を促進。
選定予定校数 175大学 200大学
満点 84点 89点

選定校数が減っているのは毎年度の事ですが、今年は175大学とだいぶ少なくなってきました。

また特に顕著なのは、教育の質的転換という名称ではなくなり、「特色ある教授・学習方法」となっている事ではないでしょうか。もう教育の質に関する取組みは当たり前でこれからは特色を出している大学に配分する流れですね。なお、前者は経常補助の教育の質に係る客観的指標に移ったとみていいのかもしれません。(2019.8.29ではまだ判断出来ていません。9月頭に指標が出たそうですがこれから確認します。)

また今年から収容定員規模別の要素が加わる事も新たな点ですね。

さて次は各設問が昨年度と今年度を比較し、どうなったかを示した図です。

令和元年度私立大学等改革総合支援事業タイプ1

2018年度(左列)の赤字設問が2019年度の設問からなくなったもの、2019年度(右列)の青字が今年から新しく加わったものです。また赤字で太字の箇所は令和元年度教育の質に係る客観的指標に移動している設問です。

大きな特徴としてFDやSDに関するものは殆どなくなっている、データサイエンス関連や社会との連携が大幅に増えていることでしょうか。特にFDについては昨年度は具体的なFDの内容が指定されていましたが今年は客観的な指標はFD組織と参加率のみとなっています。

1.教育の質向上

ここから各項目について気づいたことや昨年度との変更など個人的なメモをまとめていきます。

①IR情報を活用した教育課程の検証

昨年度は教学体制とされていた箇所です。ただ内容、要件等は変更ありません。ここでのIR情報の定義も「学修時間・学修実態、授業評価結果、学修成果、資格取得実績、就職等進路実績、卒業生調査」と同様です。

ただ基準日は平成31年4月1日ですので昨年度以前にやっていない場合は、ここは諦めるしかない項目です。昨年度の設問毎・回答毎の結果を見ると申請校(622)では52%、選定校(207)では82%が検証をしていると回答をしています。

大学としては、学長や学部長を含めた教育課程編成に関する組織で半期に1度は委員会を行い、点検評価の中でIR情報を使って行えばいい設問ですね。

②IR機能強化

今までIR担当をする教職員は専門的なプログラムを受講している事が最高得点でしたが、その項目はなくなりました。(大学によってはIR担当者を履修証明プログラムに参加させていたところもあったかと思います。)

その代わり、「IRに関する外部研修会に講師として派遣した実績がある」が出ています。これ、かなり難しい設問ですよね。私が知っている限りでは全国にそう多くはないはずです。また依頼もIR担当者個人に依頼されたものだと証明する書類が中々ないので、他組織から当該大学組織(学長など)に依頼状があるのがベストかと思います。

また要件から削除された内容として法人部門という内容の削除、IR情報の公表がなくなりました。なお変わらないものとしてIRに関する研修の定期的な受講ですが、根拠資料として示されているのは研修報告書等なので、研修先の印などはなくても問題ないはずです。また今年は自学が主催・共催する研修会も含むと要件に記載されています。

※基準が9月末なので他大学と連携して出来ない事はないですね。例えばコンソーシアムがある地域ではコンソーシアムが音頭をとって研修会を行い、各会員のIR担当を講師として招聘するとか。ただ自学にIR担当部署があること、それなりの実績がある事が前提ですが…。

③卒業時アンケート調査

昨年度から出されたこの項目により、卒業時調査を実施した大学も結構あると聞いています。この設問で大きなネックが回収率によって点数が異なる事です。最高得点を取るには回収率が80%以上である必要があります。そして今年からの変更が回収率のみならず調査分析結果を公表しているかどうかです。

また卒業見込みの段階で調査する必要がありますが、どこで卒業見込みとするかです。例えば卒業見込み証明書を出せるようになったらいいとする人もいます。ただ卒業見込証明書はかなり早く出せたりしませんか?ここは検査院が来ると怖いので、私は後期の成績が出てからの時期に卒業時調査を実施するようにしています。

なお公表の深度については「調査分析結果」とありますが、こういうのもいいですかね?(過年度比較が望ましいとしていますが、昨年度初めて実施した大学はそれは出来ないですね)

www.kansai-u.ac.jp

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④アクティブ・ラーニング

アクティブ・ラーニングについては、大きな変更はあまりありません。アクティブ・ラーニングの要素に「反転授業」が含まれた事ですね。講義及び演習の授業でPBLやディスカッション、グループワーク等の文言が授業形態や各授業回に含まれているかをチェックします。

ただ昨年も困ったのは、「討論、討議、ディスカッション、グループディスカッション、グループディスカッション」というように微妙に表現が異なるケースがあるので、最後は目視で確認しないといけない科目がある事ですね。

この設問は昨年度もありましたが、今年の要件の追記として、開講科目の定義や単一科目で複数の担当教員での実施の一例などについてです。

⑤情報リテラシー科目

この事業での情報リテラシーの定義はちょっと疑問を感じなくもないのですが、今年は全学部あるいは一部の学部で実施しているかが追加されています。ただ個々の設問は情報リテラシーというより初年次教育科目の要素が入っている印象があります。図書館の利用法は初年次教育科目で、レポート・論文の書き方はライティング科目でやる事もあります。

ただ用語解説や確認表を見ると「授業全体を通して情報利活用能力を養成する教育」とあるので情報科目が全学部必修化されていれば良さそうです。(昨年度は1つの学部でも必修科目として情報リテラシー科目があればよかったのですけどね。なお、正課科目であり、休講でない事も今年は明記されています。)

⑥ICT利用

昨年度を大きく変わりません。全学部等の記載もありませんので、一部でやっていれば問題ないかと考えています。(クリッカー・ポートフォリオ等があればいいですが、電子黒板等もシラバスや授業内容によっては該当するかもしれません)

⑦GPAの活用

学修成果の議論の中で直接評価の話題としてGPAの活用がたまに出てきます。今回、GPAの活用について、昨年度までの個別指導だけではなく、進級判定又は卒業判定に用いていることも項目として挙げられています。

なお、授業科目履修者に求められる成績水準や成績評価基準の平準化は一部の科目でも構わないとされていますので、FD等でやっているかも確認する必要がありそうです。そしてここは全学部等の条件はないので、一部は学部単位でやっている、一部は一部の科目でもやっていれば点が取れる設問ですね。(ただ全学部でGPAが導入されていることが必須です)

ただ「エ 教員間もしくは授業科目間の成績評価基準の標準化」はGPAを無理やり標準化するのではなく、成績評価を適切に厳格化し合わせることが必要なのですよね。単にある授業科目だけGPAが高いから成績は低めにやってはいかんと感じます。

(参考 学士課程答申用語集 「GPA」)

【GPA:Grade Point Average】(p20,26,27等)
アメリカにおいて一般的に行われている学生の成績評価方法の一種,一般的な取扱
いの例は次のとおりである。
① 学生の評価方法として,授業科目ごとの成績評価を5段階(A,B,C,D,F)で評価し,それぞれに対して4・3・2・1・0のグレード・ポイントを付与し,この単位当たり平均(GPA,グレード・ポイント・アベレージ)を出す。
② 単位修得はDでも可能であるが,卒業のためには通算のGPAが2.0以上であることが必要とされる。
③ 3セメスター(1年半)連続してGPAが2.0未満の学生に対しては,退学勧告がなされる。
(但し,これは突然退学勧告がなされるわけではなく,学部長等から学習指導・生活指導等を行い,それでも学力不振が続いた場合に退学勧告となる。)
なお,このような取扱いは,1セメスター(半年)に最低12単位,最高18単位の標準的な履修を課した上で成績評価し,行われるのが一般的である。

⑧成績状況とCAP制度

昨年とほぼ変わらないです。(なお要件にCAP制度を超えて履修させる仕組みの詳細な説明が今年は記載されました)

気になるのは「学生の成績状況に合わせて、緩和あるいは厳格化させる制度」で厳格化とある事です。昨年度は学修者への支援と書いてありましたが、そのうちGPAが一定以下は履修制限という事が書かれています。(後者の制度を取り入れている大学はあまりないのではないでしょうか。単位が取れなかったから、次の学期はもっと履修させたいと真逆の要望も聞きます)

⑨ティーチング・ポートフォリオ

昨年は義務付けとなっていましたが、今年は導入し活用する仕組みがあることが問われています。(仕組みがあることなので、今年は活用している根拠資料までは求められていないのが要点ですね。という事はそのうち活用して結果まで求められる可能性があるわけですね。)また研究業績書がティーチングポートフォリオではありません。

少し参考になるものとしてこんなものがあります。

harp.lib.hiroshima-u.ac.jp

⑩TA等の教育サポートスタッフ

これは昨年度とまったく変わらない内容です。TAがいない大学の場合はSA等で対応している大学もあります。なお説明会はダメで資質向上等を目的とした研修である必要と書かれています。

⑪学修成果等の可視化

学修成果の可視化としてディプロマサプリメントが出てきました。これもやっている大学は少ないと思います。(どんなものでも大学がディプロマサプリメントと言い張ればいいかもしれませんし、これを機に企業の人がシステムの売り出しをしてきそうですね)

www.daigaku23.com

なお通常の学位記等では該当しないとあります。

⑫学修成果に関する産業界等との協議

今まで3つの方針等について産業界等の意見を聞く設問はありましたが、学修成果については初めてではないでしょうか。

ただ産業界等と「学修成果として含めるべき内容及び学修成果に関する情報の示し方」についての協議なので基準日である9月末までには対応できる設問です(例えば既に包括協定と結んでいる産業界等の団体と行うといった事もOKな気がします)

大学によっては地元自治体と包括協定を結んでいたりしますが、公共団体はダメとの事なので、企業に時間を取ってもらって協議するのが最善ですね。

また学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知):文部科学省

は除くとあるので、学校法人が出資している会社はダメそうですね。(逆にこれに該当しない関連法人ならいけるとも解釈できます)

2.高大接続

高大接続に関しては昨年度から発展した内容が多い印象です。

⑬一般入試における多面的・総合的な評価

一般入試に加えて、小論や絵性、面接等の多面的・総合的に評価する入学者選抜をしているかが問われている設問です。

ここでの変更点は「2科目以上の出題科目による学力検査に加えて」の点です。昨年度はこの表記がなかったので1科目受験でもいいという判断ができました。またきちんと多面的・総合的な評価について検査内容が分かる資料が必要です。

⑭一般入試における記述式問題の出題

「思考力・判断力・表現力」を評価するため、記述式問題を出題していることを募集要項に明記しているかで、昨年度より設問が1つ増えています。

ここでは次の2つが問われています。

  1. 特定の科目で記述式問題があるか(教科や内容は問わない)
  2. 科目限定はないが、記述式総合問題を出題しているか

ただ募集要項等で記述式問題の出題の意図や評価すべき能力などの明示も必要との事です。

⑮AO・推薦入試における基礎学力把握

昨年はAO入試や推薦入試で大学独自に実施する調査を全ての学部でやっているかが問われていました。つまり、AO入試が複数回あってもどれかでやっていれば、やっていると大学として判断するという事も出来ました。

しかし今年は全ての学部&全てのAO入試及び推薦入試となりました。ただAO入試で面接や口頭試問などをやっていないという事はあまり想定出来ない気がします。

⑯アドミッション・オフィサー

今年は教員まで対象になったのが大きな変更ですね。ただ教員と職員のアドミッション・オフィサーが関わっている、教職協働でないと最高得点は取れないようになっています。

これは教員の扱いが難しいですね、授業は除くけどその業務に専従するものとすると小規模大学だとそんな教員はいないでしょう。(こういう入試関連は委員会で担当とかが多いような気もします。それだと今の解釈では該当するかが難しい判断ですね)

⑰入学前教育の実施

昨年は全ての選考方法で実施しているかでした。ただ3月入試の実施や昨年度は3月28日ぐらいまで合格を出すという事も多くの大学で行われたいたせいでしょうか、12月以前の入学手続きを取る入学予定者に課題の提出の義務付けとなりました。

ここはあまり詳細に書かれていないのですが12月以前に入学手続きしたもので1月以降に入学前教育の提出義務付けの通知をしていたのでもよさそうですね。

⑱高大連携強化

今年は高校と連携した入学前教育、つまり推薦を行った高校の指導のもとに入学予定者に対して大学入学までの学習計画を立てさせ、取組状況を高校を通じて大学に報告するというものが追加されています。

あとは大学と高校の定期的な協議体制、人事交流や合同研修、高校生の大学の学習経験の提供などなので例年と変わらずです。

3.データ活用による教育展開とデータ活用人材の育成

今年から加わった設問が多いです。はっきり言って小手先では対応できないものも多く、大学としてもその分野に資産を投入しないといけないものもあります。

⑲IRに係る専門職の配置

新規のような以前のIR機能強化から派生したもののような設問の気もします。今回はIRの専門性を有する専門職を置いているかが問われています。

例えば研究をしている、統計解析業務経験、統計解析関連学位、授業を1学期以上しているなどですね。特任のIRerとして採用している場合はこれでいけそうですが、専任の場合は実績などの根拠資料を積み重ねていくしかないのかなと感じます。(そもそも職員しか置いていないところは、ちょっとハードルが高い設問です)

⑳卒業後アンケート調査等と活用

卒業後アンケートが発展版となり、卒業生の就職先等の進路先の意見聴取までやっていないと最高得点が取れなくなりました(ただ回答率や数が書いていないので、今後のQ&Aなのでの見解が出てくるかもしれません。)なおこれも調査をやるだけではなく、結果を公表することが求められるとともに、その結果を教育改善に結び付ける仕組みの構築が必要になりました。

就職先に関する調査は「学部等卒業生の就職先組織数以上」とあるのでそのまま解釈すれば卒業生が就職した組織全てにアンケートを送れよという無謀な話ですね。まともにやったら、企業側には多くの調査票が届く事になるでしょうし。

㉑選抜方法の妥当性の検証

昨年度は入学者の追跡調査で全ての選別方法で実施が必要でしたが今年は具体的に入学後の学習状況等調査をそのクロス分析が必要になっています。(ただあまり大きな変更点はないようです)

㉒数理・データサイエンス教育

統計や数学、コンピュータサイエンスに関する科目を全学部or一部の学部で必修か選択(全学部のみ)が問われています。

例えば全学共通教養教育にこれらの科目があれば話は早いのですが、カリキュラムに関することなので9月末までに対応は難しい設問です。なお、授業の一部の回で取り扱うのはNGのようです。

㉓データサイエンス教員FD

FDの実施or行員の派遣で点数が取れますが、出来そうなのはFDの実施でしょうか。ただ中々難しいですね。他大学と共催で行ってしまうのが簡単な気がします。
(講師派遣はその分野の教員がいないと難しいですし、相手があっての事ですから)

㉔情報教育における実践教育の実施

企業からの実際の課題や実データを用いて、データ分析を行っていることがシラバスから確認できればいいみたいですが、これ、社会科学系のプログラムでやっている気がします。

ただデータサイエンス教育なのか、例えば経営からみたPBLなのかとか、アプローチが色々とある気がするのですよね。そもそもこういうのはデータサイエンス教育ではなくて、ゼミとかでやってそうです。

多様な教育体制と社会との連携

一言でまとめると既に取り組んでいる大学の「ボーナスステージ」です。

㉕分野・学部等横断的カリキュラム検討体制

昨年はカリキュラムコーディネーターが求められていましたが、今年はリベラルアーツやSTEM教育、分野・学部等横断カリキュラムについて総合的に検討を行う組織が求められています。本学だとカリキュラムを検討する委員会や〇〇センター(例えば大学教育センターみたいなセンター)あたりでしょうか・。

ただ不思議なのは、文部科学省の別でSTEAM教育(STEAM=Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)と言っているのに合えてSTEM教育としたかですね。

www.mext.go.jp

㉖インターンシップ科目

インターンシップで企業と提携して2週間以上しているか、さらに必修として開講して実績があるかどうかです(専門職大学ですかね?)なお資格取得の実習はダメとの事なのでかなり厳しい条件です。

㉗実務家教員の教育課程編成への参画

高等教育の修学支援制度では実務家教員の実務経験は何年でも大丈夫でしたが、この事業では実務経験が5年以上となっています。

この実務家教員が全員教授会やカリキュラム委員会に参加出来ていればいいわけですが6単位以上の授業科目となるとどこまで含むのでしょうか?

※追加のQ&Aで非常勤教員も含むと見解が出ました。この対応として今年度は無理ですが、次年度以降も見据えると非常勤教員全員を集める会議を教育課程編成に関する会議にしてしまうしかないかなと思っています。

この疑問については大学設置基準第10条の2「専攻分野における実務の経験及び高度の実務の能力を有する教員」に同じ内容があります。なお、第10条の内容は専任教員についてなので実務経験5年以上かつ年間6単位以上の授業科目を持つ教員という事になります。

設置基準では「実務家教員について~努めるようにする」とありますが、補助金で実質強制をしている訳ですね。

㉘主専攻・副専攻制等

主専攻・副専攻の義務付けとありますが看護とか資格系の学部はがっちりすぎてそんなのを入れる余裕を取るのが困難な学部もありますね。

㉙学事歴の多様化

今回からの新規項目で3学期制あるいは4学期制を入れているかが増えました。もしくは秋入学でも可みたいですが、制度としてあることが必要なようです。(制度としてあればいいので実績はなくてもよい)

㉚オープンエデュケーション

自学の教育リソースを広く提供しているかどうかですが、MOOCに参加している大学は該当しますがそれ以外だと自学のHP等でやっているかどうかですね。

 

終わり~所感~

全体としてカリキュラムに関わる設問が増えて、すぐに対応できるものは少なくなりました。言い換えると小手先では対応しにくくなったという印象もあります。

点検評価の観点からだと、補助金により点検評価として参考にしなければならないものや方法が決められてきたかと思います。また以前は小規模中規模大学が少し頑張れば得点が取れる印象でしたが、今は全学として行える、専門職を雇えるなど、もともとの財産がないと厳しいものも出てきているなと感じますね。

私立大学等改革総合支援事業のタイプ1「教育の質的転換」に応募する事の是非

平成25年度から始まった私立大学等改革総合支援事業ですが、特に教育の質的転換型(タイプ1)は全学での教育改革や取組を要求するものが多く、大規模大学では申請をしにくく、小規模大学や単科大学では比較的取組をすると点数に直結しやすく選定されやすい事業でした。

つまり全学での改革がしやすい小規模中規模大学にとっては、私立大学等改革総合支援事業は補助金を増額する絶好の事業とも言えました。

ただ平成30年度の私立大学等改革総合支援事業の結果を見る限り、どうも小規模中規模大学にとって、だいぶ厳しい状況になってきていると感じます。


私立大学等改革総合支援事業タイプ1と大規模大学

平成30年度の私立大学等改革総合支援事業の選定状況を見ると、全てのタイプに選定された東京都市大学をはじめ、東洋大学や芝浦工業大学などの大規模大学もタイプ1「教育の質的転換」に採択されています。

今後は教育改革を進める大学が増えると、規模が大きい大学の採択も増えてくるかもしれません。一方、私立大学等改革総合支援事業の選定校数は年々少なくなってきており、選定をされる為の競争、どうやって点数を取っていくかは情報戦であり、より厳しくなっています。

 

私立大学等改革総合支援事業からプラスされる補助金

「私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準」を確認すると選定された場合、一般補助による増額と特別補助による補助金の増額があります。

一般補助による増額は、その大学の一般補助(ただし除外あり)から定められた割合の金額が加算されます。こちらは大学によりますが、大規模大学程一般補助は多いので、改革総合支援事業に選定されると増額が大きい事は言うまでもありません。

特別補助の増額

一方、特別補助ですが、改革総合支援事業のタイプ1の定められた区分の合計点で増額分が異なります。平成30年度の算定方法は下記となります。

〔算定方法〕
① 私立大学等改革総合支援事業調査票の「タイプ1」の「1.組織運営の活性化」、「2.教育内容・教育方法に関する取組」及び「3.教職員等の質的向上に関する取組」で掲げた取組内容について、当該大学等の取組状況を基に算出した点数に応じ、表1により得た額を(A)とする。
② 私立大学等改革総合支援事業調査票の「タイプ1」の「4.高大接続改革の推進」で掲げた取組内容について、当該大学等の取組状況を基に算出した点数に応じ、表2により得た加算額を(B)とする。
③ (A)及び(B)の合計額を増額する。

 私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準(平成 31 年 3 月)より

また特別補助の額は下記となります。

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出典: 私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準(平成 31 年 3 月)

今年のタイプ1は満点は84点、選定ラインは55点となっています。最低でも550万円は特別補助として出ます。この額が多いか少ないかについては大学によって異なると思います。

また昨年の場合はどうであったかを見てみましょう。なお算定方法は平成30年度とさほど変わりませんが、平成29年度は95点満点、選定ラインは79点でしたので、下記の表を見ると、おそらく特別補助で二千万近くは出ることになります。

う~ん、今年は設問が大幅に変わってかなり苦労したのですが、特別補助ががくんと落ちてしまっています。

f:id:as-daigaku23:20190319153856j:plain

出典: 私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準(平成 30 年 3 月)

なお、平成28年度は平成29年度よりは低い特別補助額になっています。

(ただ平成30年度は、教育の質の指標もあるので、タイプ1の分の補助金はそっちに行ってしまったのかもしれません)

私立大学等改革総合支援事業のタイプ1に申請する意味はあるか?

特別補助額だけを昨年と比較すると、だいぶ下がっている事が分かります。これだけで申請する意味があるかどうかは論じる事は難しいですが、改革総合支援事業に選定を受けるための大学側のコストは人件費なども考えるとかなり大きいです。

その為、補助金が欲しいだけでは、補助金増額の恩恵にあずかりにくい規模の大学としては改革総合支援事業の選定を目指す事はモチベーションを保つ事は難しくなりつつあるのではないかと感じてもいます。

むしろ、改革総合支援事業に応募をする・選定をされるという事について、大学として何らかの意味付けをしないといけないのではないでしょうか。 

平成30年度私立大学等改革総合支援事業の選定状況の所感

平成31年(2019)年2月26日に私立大学等改革総合支援事業の選定結果がようやく文部科学省のホームページに掲載されました。

前年度の公表が平成30年2月5日でしたのでいつもより大分遅めの公表です。しかも今まで出ていた選定の内示も各大学にはありませんでした。

 

平成30年度私立大学等改革総合支援事業は私立大学等改革総合支援事業の委員長所見によると「635校(大学・短期大学・高等専門学校)の審査を行い、278校を支援対象校として選定」しているそうです。

 

タイプ1「教育の質的転換」について

このタイプ1は募集時は200校の選定が予定されています。タイプ1の得点分布をみると84満点中55点が選定ラインですので約65%を取っていればよかったですね。70%あれば安心と思っていましたが、この見立てで間違いなかったようです。

ただ文部科学省の2019年度予算案から次年度の改革総合支援事業のタイプ 1 「特色ある教育の展開」 175校程度とされていますので、選定はもう少し厳しくなりそうです。2019年度は設問が一切変わらないとしても70%以上でようやく選定に手が届くぐらいですので、安心のマージンを取るなら85%ぐらいは点数を取っておきたいですね。

なお、今年は満点が2大学おりますが、どんな大学なのか、どんな根拠資料なのか、どんな解釈なのか非常に興味あります。

複数のタイプに選定されている大学ですが、下記のようになります。なお、下線はタイプ1の教育の質的転換に採択されている大学です。

4つのタイプに選定されている大学

東北公益文科大学芝浦工業大学東洋大学法政大学金沢工業大学、同志社大学、関西大学、神戸学院大学福岡工業大学、長崎国際大学

全てのタイプに選定されている大学

東京都市大学

規模が大きい大学が複数選定されているのが非常に気になる所です。またその中でもタイプ1に選定されている大規模大学があります。

今までタイプ1は全学部でやっているかどうかが問われる設問が多く、小規模・学部数が少ない大学が有利と考えていましたが、今年はどうやらそうでもないようです。

各設問ごとの特徴

ここではいくつか設問毎・回答毎の該当件数から、特色があるものをピックアップしてみます。

どういう設問があるかはこちらをご覧下さい。また本ブログの関連記事は下記となります。

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設問1(3つのポリシーの点検評価)及び設問2(教学マネジメント体制)

この2つは、選定校の大学はどちらの設問も80%以上が得点を取っています。今までの改革総合支援事業や経常費補助の教育の質の指標と関わりがあるとの、これは取組自体は難しいものではないのと、設問1では短期間で対応しやすい事もあるでしょうね。

点検評価にあたって学生の代表者の参画は、例えば自己点検評価委員会に入っていただき、意見を聴取すればいいだけですから、対応自体は難しい事ではありません。(難しいのは、適切に自己点検評価をしているか、その点検評価に学生の意見聴取をどう組み込むかです)

設問3(IR)

IRの最高得点である、IRの企画や実施方法等に関する専門的な高等教育プログラムを履修した者を配置についえは、選定大学では18%、申請校では12%となっています。

これは個人の学修にも大きく左右される設問でもありますし、履修証明プログラムや学位などを必要としますので、短期間で対応できない設問でもあります。

今後はIRに関する履修証明プログラムなども出来るでしょうが、それでもすぐの対応は難しいですね。早いのは学内で該当する学修する人をIRに据えるか、外から持ってくるのですかね。

設問5(卒業時アンケート)

選定校では67%が80%以上の回収率・実施率で実施している事になっていますが、これ驚くべき数字かと思います。また申請校でも47%の大学が80%以上の回収率・実施率だそうです。

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4年の秋とか冬にやった調査を根拠資料にしていたりしませんかね。このあたりは卒業予定の定義の解釈にもよりますが、 これはちょっと疑義があります。

設問11(履修系統図・ナンバリング)

履修系統図やナンバリングの作成や公表ですが、今までにも履修系統図やナンバリングの作成がありましたし、公表は難しくなかったので、殆どの大学が出来ていますね。これは次年度は教育の質の指標に組み込まれる気がします。

設問12(GPA)

GPAの活用で成績水準の設定や成績評価基準の平準化は難しいだろうなと思っています。結果を見る限りは出来ている大学と出来ていない大学が別れていますね。

教育、それも成績評価に関わるものは慎重にならざるを得ないので、妥当だとは思います。

設問14(学修成果等の活用)

全学部で出来ている大学の割合として、選定校では86%、申請校では52%となっています。これは私が想像するより高い数値です。

きちんと仕組みと活用実態を示す根拠資料があればいいですが、私自身はかなり慎重になった設問です。仕組みをどう示すかや実態をどう示すかは、判断が難しいので、結果は驚きでしたね。

設問15(カリキュラム編成にかかる教職員)

カリキュラム編成のための専門的知識を有する専任職員が、選定校では半分の大学にカリキュラム編成に参画しているようです。

ただこれも個人の学修に頼る部分もある設問なんですよね。

設問21(SD)

意外とSDの参加率が100%の大学多いですね。選定校で約72%もあります。ただハラスメント研修や学生の厚生補導に関わる研修もあるなど、定義が幅広い事もあるでしょう。

設問23-24(高大接続関連)

これはどの設問も点数を取れている大学が増え、昨年から安定している結果のように感じます。そろそろ、これらは教育の質の指標に移るかもしれませんね。

おわりに

今回、かなり頑張っている大学があるのではというのが設問毎の結果を見ていて感じる第一印象です。もし自分が監査や会計検査院の人間だったら、設問5、14、15あたりは厳しくチェックするだろうなと思います。

4年生は卒業予定だから、4年生の秋に調査をやったものは卒業時調査として根拠資料にしているとか、学修成果の活用で仕組みだけで実態がないとかありそうな気がしています。 

教学マネジメント特別委員会の議論のまとめと気になる点のメモ

2018年11月に文部科学省の中央教育審議会で出された「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)(中教審第211号)」は、2040年の展望や高等教育が目指す姿、教育研究体制、そして教育の質保証と情報公開について記載がされています。

そして2018年12月に中央教育審議会の大学分科会に「教学マネジメント特別委員会」が設置されました。この委員会の所掌事務は「各大学等における教学マネジメントの確立に向けた方策(学修成果の可視化や情報公表の在り方を含む)について専門的な調査審議を行う」とされ、2019年1月16日時点で第1回は12月18日、そして第2回は1月16日と2回開催されています。

議論は平成31年度3月以降も続くようですが、この特別委員会で審議された内容は、大学にさせる為に、私立大学であれば私立大学等改革総合支援事業に盛り込まれる可能性は十分あります。

 

教学マネジメントに係る指針と気になる点

教学マネジメント特別委員会の第2回の資料を見ると、「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項の全体像(案)」や今後の特別委員会の審議ロードマップがあります。

この指針については既にグランドデザイン答申に記載されています。

その上で、各大学の教学面での改善・改革に係る取組を促していくために、必要な制度改正に加え、各大学における取組に際してどのような点に留意しどのような点から充実を図っていくべきかなどを網羅的にまとめた教学マネジメントに係る指針を、大学関係者が参画する大学分科会の下で作成し、各大学へ一括して示す

               ~略~

【参考】教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき事項の例
・プログラムとしての学士課程教育と三つの方針の策定、全学的な教学マネジメント
の確立について
・カリキュラム編成の高度化(ナンバリングや履修系統図の活用、編成における外部
人材の参画等)、アクティブ・ラーニングやICT を活用した教育の促進
・柔軟な学事暦の活用、主専攻・副専攻の活用、履修単位の上限設定(CAP 制)の適
切な運用、履修指導体制の確立、シラバスにおいて標準的に期待される記載事項の
提示、成績評価基準の適切な運用、学生個人の学修成果の把握、学修時間の確保と
把握、学生による授業評価
・FD(ファカルティ・ディベロップメント)の高度化、SD(スタッフ・ディベロップ
メント)の高度化
・教学IR 体制の確立
・情報公表の項目や内容等に係る解説 等

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そして今回の教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(案)は下記になります。

  1. 学修目標の具体化
  2. 授業科目・教育課程
  3. 成績評価
  4. 学修成果の把握・可視化
  5. 教学マネジメントを支える基盤(FD・SDの高度化、教学IR体制の確立)
  6. 情報公表

上記6個について、気になる点をまとめます。

1.学修目標の具体化

三つの方針の策定が義務化となり、2017年度から大学は学位プログラムごとに方針を策定しています。この三つの方針の中で「卒業認定・学位授与の方針」所謂ディプロマポリシーは学生の学修目標として機能し、「具体的かつ明確な目標を示す必要」と指摘されています。

試しにいくつかの大学のディプロマポリシーを検索してみてください。大きくまとめた(ふんわりとした)ディプロマポリシーが散見されるかと思います。これを「具体的に示しなさい」、その際は「「学生は~することができる」という記述で能力を規定することが原則として必要」と指摘しています。

そうすると、大学によってはディプロマポリシーの見直しが必要です。でも「~することができる」だと、規定するものが多くなり、ディプロマポリシーはかなり長文になりそうな気がします。

またディプロマポリシーは産業界のニーズだけではなく、国際社会や地域社会も含むニーズを見る必要があるのと、方針を産業界や地域社会といった外部の関係者の意見をふまえて作成する必要とも言っています。

ただ私立大学等改革総合支援事業のタイプ1や教育の質に係る客観的指標では三つの方針の点検評価に学外の参画が条件になっていますね。

2.授業科目・教育課程

教育課程は体系性と順次性が学士課程答申などからも言われています。そのためにカリキュラムマップについて言われてきました。今回の委員会では、「(カリキュラムマップを)学生に分かりやすい形で提示されること」や「学内外に教育課程の体系性を明らかにする観点から「ナンバリング」を実施すること」の必要性が指摘されています。

さらにカリキュラムの編成は、体制を整えて大学及び学位プログラム全体で組織的に行われる必要とありますので、教授会で議論したからカリキュラム変更が出来るという事ではなく、専門の委員会などでカリキュラムについて検討する必要があるかもしれません。
なお、これは私立大学等改革総合支援事業タイプ1の②「教学マネジメント体制」にも同様の内容があります。

またこれから起こりそうな事として、キャップ制度が機能していないと指摘がされていますのでキャップ制度の厳格化(半期で〇単位まで)もありそうです。(ただし認証評価ではおおよその目安はあります)

3.成績評価

成績評価は厳格化というキーワードでまとめられると考えています。ただ「成績評価について、事後に意図されたとおりの成績表が行われたか検証を行うことも重要」とあるのは引っかかります。

4.学修成果の把握・可視化

今回、きちんとディプロマポリシーと学修成果を結びつけるように書かれています。また今後学修成果等の情報は公開が義務化されるでしょうが、これらについては「ベンチマーク等が可能となるように共通理解となるような形で指針において示す必要がある」そうです。またディプロマサプリメントの作成と活用についても指摘されています。

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5.教学マネジメントを支える基盤(FD・SDの高度化、教学IR体制の確立)

高度化とは何でしょうか?「教員の参加状況は必ずしも十分とは言えない」や「教学マネジメントに係るPDCAサイクルの一環として有効に機能するように」と言われています。
例えばPDCAサイクルで課題が出た場合に、その課題に対するFDを行うという事でしょう。


また授業アンケートを用いたFD(既に私立大学等改革総合支援事業タイプ1に設問あり)やFDとSDが合体したPD(professional development)のキーワードも挙げられています。

こういうPDとか出てくると、また一部で混乱するので、きちんと定義づけをしていただきたいです。


⑥情報公表

こちらはグランドデザイン答申や情報の公表の今までの議論をみたほうがいいですね。

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ただ情報公表については

公表義務付けが考えられる情報又は一定の指針を示すことが考えられる情報の定義や数値の算出方法、わかりやすい形での公表方法等について、各大学の実態等を踏まえつつも、ベンチマーク等が可能となるように共通理解となるような形で指針において示す必要がある

とされていますので、今後指針が出てくるでしょう。

 

終わりに

今回見た限りではそんなに目新しい事はありません。また2018年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1の設問とほぼ同様の内容もあると思われます。

ただ2019年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1は、選定校予定数がさらに減る見込みです。つまり補助金によって、文部科学省や国側は政策誘導しにくくなりますので、このような指針や法令改正で誘導するのでしょうか。

なんか、今回の事項を見ていると大学設置基準の大綱化前のように雁字搦めになりそうな将来が彷彿します。 

2019年以降の私立大学の支出抑制と行く末

18歳人口が2018年以降から減少する2018年度問題は、大学の学生募集や大学経営で大きな問題です。大手私立大学や有名ブランド大学ではない小中規模大学や地方に立地している大学は、数年前から2018年度問題に戦々恐々としていました。

ただ関東近郊の小規模中規模私立大学、そして中堅の私立大学は大学の定員超過抑制の政策の為に、入学者数が回復した例もかなりあったそうです。

でも、大学(特に東京23区内や地方都市の中心にはない小規模中規模大学)は冬の時代というより終わりのない氷河期に突入していくと考えています。

 

大学の現状

大学の今、直面している現状や今後起こるであろう社会の内容として、定員超過の抑制や厳格化、消費税が10%にアップ、補助金等の傾斜配賦などが挙げられます。

定員超過をどうするか?

私立大学等経常費補助金の観点から

平成27年7月に通知された「平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」は私立大学に大きな衝撃でした。この時は入学定員充足率が1.0倍を超える(例えば100名の入学定員があると101名となる)と、その分の補助金を差っ引くよという内容でした。

平成31年度から、入学定員充足率が1.0倍を超える入学者がいる場合、超過入学者数に応じた学生経費相当額を減額する措置を導入する。現在の一般補助における教育研究経常費等の算定の中でも、学部において収容定員充足率が1.0倍を超えている学生分は措置していないが、平成31年度からは、入学定員充足率が1.0倍を超える入学者に見合う額をさらに減額する予定である。一方で、定員管理の適正化に向けた努力をする中で、結果として定員を下回ることも考えられることから、入学定員充足率が0.95倍以上、1.0倍以下の場合には、一定の増額措置を行う予定である。

今まで大学は、入学定員1.29倍近くの入学者受入れをしていた大学も少なくはなく、「補助金を減らされてはいかん!」と入学定員超過をあまりしませんでした。つまり、今まで入学できていた高偏差値帯の受験者がつまって、ところてん式に中堅大学やさらにその下の大学にまで受験者がきたのです(※大学によっては入学辞退を見込んで合格を出したのに、辞退をせずに、入学定員を超える入学者数となってしまった大学・学部もあります)

 

そして平成30年9月の「平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の
取扱について(通知)
」で上記の引用部分について「当面実施を見送り、後記措置の実施状況及び効果等を検証しつつ、3年後を目途に実施の要否を検討」と変更されました。

ただ、定員管理適正化に向けた入学定員充足率が1.0倍を下回る場合は増額措置があります。

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入学定員充足率と私立大学等経常費補助金

出典: 平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)

今回、1.0倍を超えた事による減額措置がなくなった事で、私立大学側は少し安堵しているかと思います。特に小規模大学だと数人程度で入学定員超過率が大きく変動しますので、合格者数やどれぐらい辞退しどうかを読むのが非常に難解になっているのです。

ただ、大規模大学は入学定員1.0倍を超えたことにおる減額措置がなくなり、定員より少し多い入学者受入れをすると、その下の大学は入学者数が減るという事も十分あり得ますね。

設置等に係る認可の基準と入学定員超過

学部学科を新しく設置する時は、どういう時でしょうか?例えば、大学の外部環境が変わって、社会のニーズに合わせた学部学科が必要になった時が挙げられます。(言い換えると、募集しても上手くいかなくて定員割れをしているから、学部学科を変えて、テコ入れをしようですね)

ただ大学側が学部学科等を設置する場合は、学部単位で平均入学定員超過率が一定値未満である必要があります。

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大学設置申請と平均入学定員超過率

出典:平成30年度大学設置等に係る事務担当者説明会資料(その1)

学部の規模に応じて数字は異なりますが、平均入学定員超過率を1.05倍~1.15倍未満にしておく必要があるのです。これは大学側は「数年間は学部等の設置はしない!」としていればいいですが、何かの際に学部学科等の設置をする、収容定員を増やす申請は出来なくなります。

消費税10%への対応

2019年10月1日から消費税率及び地方消費税率が引き上げられます。

大学に払う入学金や授業料には消費税はかかりません。ただ言うまでもなく大学が支出するものについては消費税がかかります。つまり、来年の10月から支出は増える事になります。

一方、学生の授業料や補助金で大部分を占めている収入については、学費を値上げしない限り、急に増える事はありません。(附帯事業収入は除きます。)

2014年に消費税が5%から8%となり、学費を上げた大学ばかりではありません。小規模中規模で地方の大学は、「学費を上げると学生募集に影響があるのでは?」と考え、経費を削って対応した大学もあるでしょう。

そして消費税10%となり、支出は増えて収入は据え置きの大学だと財政はかなり厳しくなります。

補助金の配分

2019年1月14日、文部科学省の「2019年度文部科学省 予算(案)の発表資料一覧」が公表されました。今回は、奨学金事業の充実や授業料減免等の充実に関する予算がかなり増額されて出されています。

私立大学への支援などの私学の振興についても、私立大学等経常費補助は微増ですが教育の質に係る指標が本格導入されることや、私立大学等改革総合支援事業は選定予定校数が減少するなど、補助金を取っていくのはかなり難しくなっています。

補助金を取るには、地域や研究など分野特化したり、大学改革に勤しむ事が求められています。

 

2019年(年度)以降の大学の支出抑制

学生は多くとれなくなった、学費は値上げできない。さらに補助金も取りにくく(もらいにくく)なった事により、収入はほっておくと下がります。

一方、消費税増税に加えて、最近はキャンパスのICT環境整備や少人数教育、学習環境の構築などで、ひと昔前の大人数講義が中心だった時代と比較して、支出が増えています。

そうすると必要になるのは何を減らすか?です。

事業を減らす?

大学は様々な事業を行っています。例えば地域連携、国際、正課外などです。事業があるという事は、予算や人員のリソースを注ぎ込んでいるとも言えます。

でも、なぜか「大学は事業廃止が苦手だよな」と思っています。前年主義が強く残っている組織や人に要因がある場合や、その事業をスタートさせたときの人の想いが強く残っている場合もあります。特に事業をスタートさせた人が学内にいる場合は、なかなか事業を廃止できない場合が多いです。

(でも、その人が定年や他の組織に行ってしまうとあっさりと事業がフェードアウトしてしまう事もあります)

予算を減らす?

収入が少なくなるのなら、その分予算を減らすという選択肢も手っ取り早い方法です。例えば学生の教育に直接関わらない管理系の予算の削減から始まります。

そして次が教育関連の予算や人件費です。教育系の予算は何とか死守したい所ですが、本部から総額で〇%は予算削減と言われると昨年度若干余った予算から減らしていきました。

人件費を減らすと早いでしょうが、おそらく人件費削減に着手された場合は余程の時ですね。

教育のコストの見直し

大規模大学はともかく、小規模大学だと教育にかかるコストの見直しも視野に入れて動いているでしょう。例えば、兼任(非常勤)教員が担当していた科目を専任教員が担当したり、開講科目・授業数の見直しといった事も行わないといけなくなるかもしれません。

施設の見直し

施設は維持するだけでお金がかかります。一方、教室が足りないという声も本学内ではあります。教室規模ごとの最低限の数はどれぐらいか?、時間割を最適化して、みっちりつめるとどうなるかなど、教育のコストの見直しと同時に施設のコストを出来るだけ下げようという動きも出てくるでしょう。

 

支出抑制について

大学で働いている者として、教育研究のカットする事は出来るだけしたくはないと思います。でも、管理系の予算を削るのにも限界があります。

そうすると、学生の授業料や補助金以外に、寄付金を集めたり、事業収入を増やしていくのが1つの解になるでしょう。 

 

高等教育無償化に向けて、大学が確認・検討すべき事項(メモ)

高等教育の無償化が2020年度から始まります。ただ、これは給付が2020年度から始まるという事です。

無償化には、①無償化の支援対象者が要件を満たし、②該当の大学が無償化の対象となっている必要があります。なお、大学側は高等教育の無償化の対象大学となる場合は申請をする必要があるとの事です。

大学側が確認・検討する事項の個人的チェックリストをまとめました。このリストは、大学の今までの教育等の取組み状況によっては、関係ない項目、さらに必要な項目もあります。

おそらく某外部の〇〇〇〇院の検査の時に確実に詳細に見られる所ですよね。

なお高等教育無償化の詳細は、下記の平成30年11月22日をご覧ください。

高等教育段階の教育費負担軽減:文部科学省

 

チェック・検討リスト

学生の支援者の要件に関する事項

・既存のGPAの活用と今回の制度の整合性の確認・検討

・出席率や修得単位数について、迅速な把握や対応できる仕組みの構築

・(可能であれば)在学生で対象となる学生の割合見込みの算出

大学側の要件

実務家教員の配置

・全教員の職歴と担当科目の関係

・シラバスに実務経験のある教員によるシラバスの項目(検索できるようにしておく)か、「実務経験のある教員による授業科目一覧」を作成し、大学のHPで公開する。

・念のため、学科単位での実務家教員が担当する単位数の確認。

 

外部人材の理事の任命

・外部理事の現状の確認

・外部理事に期待する役割の明確化(法人としての考えの明確化)

・外部理事の担当する職務内容について

厳格な成績評価の実施・公表について

・毎年度の学生の学習状況を確認するシステム・制度

・2019年度(平成31年度)のシラバスに、授業の方法及び内容、到達目標、成績評価の方法・基準の項目があるか

・成績の客観的指標(GPA)についての確認

・GPAの算定についてのHPの公表

・GPAの活用状況についてのHPでの公表

・成績分布状況の資料(IRに依頼?)

・上記項目の記載について、シラバスのガイドラインを定めているか。また公表はどうするか

・実務家教員の科目の記載欄はあるか

・単位の認定について明確(ポリシー化等)を行い、シラバス等で明らかにしているか(もしくは関連規程があるかを確認)、公表はどうするか

・既存のGPAの活用と今回の制度の整合性の確認・検討(再掲)

・出席率や修得単位数について、迅速な把握や対応できる仕組みの構築(再掲)

 

・学生の学修状況に係る参考情報の公表(学修行動調査、卒業時調査等の報告書公表も該当?)

財務・経営情報の開示

・情報開示のURLと適切に開示されているか

 

チェックリストを考える上でのメモ

大学進学後の学生の支援者の要件と大学の対応

高等教育の無償化の支援の対象となっても、学習状況について一定の要件が支援対象者に求められています。具体的には以下のものです。

 

○ 具体的には、以下のいずれかに該当する場合には、直ちに支給をしないこととする。

ⅰ 大学等により、退学・停学その他の処分を受けた場合

ⅱ 修業年限で卒業できないことが確定したと大学等が判断した場合

ⅲ 1年間に修得した単位数が年間の標準的な修得単位数の5割以下の場合

1年間の出席率が5割以下であるなど学習意欲が著しく低いと大学等が判断した場合

 ○ また、毎年度の確認において、次のいずれかに該当する場合には、大学等が「警告」を行い、それを連続で受けた場合には支給をしないこととする。

ⅰ 1年間に修得した単位数が年間の標準的な修得単位数の6割以下の場合

ⅱ GPA(平均成績)等の客観的指標が学生の所属する学部等において下位4分の1に属する場合

ⅲ 1年間の出席率が8割以下であるなど学習意欲が低いと大学等が判断した場

 まずここから確認すべきは、標準的な修得単位数の5割以下です。例えば、大学や該当学部の標準的な年間の修得単位数の平均なのか、キャップ制度(履修登録の上限)の半分かでも対象学生は異なります。

また出席率が5割や8割以下とありますので、出席状況を迅速かつ確実に把握する事が求められるでしょう(最近は、学生証にあるICチップを読み取ってシステム上で出席率を管理する大学も増えましたね)

GPAについては、下位4分の1とありますので、成績全体・出席率などを包括的に把握し、警告までするシステムを大学側は構築する必要があります。

課題として、平成30年度の経常費に関わる「教育の質に係る客観的指標」に「GPA制度の導入、活用」の設問があります。これは平成29年度以前の私立大学等改革総合支援事業にあった内容の為、GPAが〇以下(おそらく固定値)であれば退学勧告に用いると規定している大学もあるでしょう。

今回の無償化でのGPAは「学生の所属する学部等において下位4分の1に属する場合」とあるので、既に規定しているGPAの活用との整合性をどうするかを検討しなければなりません。 

あと「出席率8割以下など学習意欲が低い」との記載が気になります。

「国側は、授業は全部出席するもの」という事なのでしょう。ただ「試験規定などで3分の1以上欠席すると試験出来ない」という大学も多いので、学生からすると3分の1までは休んでもいいというのが昔からありましてね、今回の無償化の要件で、3分の1休むと学習意欲が低いとみなし、警告をしなければならないのですね。

  

高等教育の支援措置の対象となる大学の要件と対応

実務経験のある教員による授業科目の配置

まずは言葉の定義を確認します。

 

             言葉の定義

実務経験のある教員

学外での勤務経験だけではなく、担当する授業科目に関連した実務経験を有している者

実務経験のある教員による授業科目

実務経験を十分に授業に活かしつつ、実践的教育を行っていること

 

今回はオムニバスや学外のインターンシップや実習・研修が授業の中心などの実務的教育から構成される授業科目も該当します。

 

さて、どれぐらいの単位数を実務家教員に配置すればいいかですが、卒業に修得が必要となる単位数の1割以上ですので、大学であれば124単位の13単位以上となります。(ここは、各大学が定める卒業要件の単位数ではなく、各設置基準を基準とするようです)

 

実務経験のある教員による授業科目か否かについては、授業計画(シラバス)等で明記する必要があります。これは誰が明記するか、本人の実務教員という申告か、どこかの会議体で該当の教員の職歴や業績を見ながら実務教員科目とシラバスに明記するか、おそらくここは外部の検査の対象となると思いますので、授業担当教員の自己判断だけではなく、どこかの会議体できちんと確認をすべき事項だと思います。

 

資格系科目が中心の学部であれば、担当する授業科目に関連した実務経験を有している教員は多いですので、あまり心配はしていません。また実学等を従事する大学や学部であれば、専任の実務家教員はいるかと思うので、その教員が担当する科目単位数を合わせれば何とかなりそうです。

私立大学等改革総合支援事業や教育の質に係る客観的な指標を初めて担当する際の根拠資料に関する留意点

「私立大学等改革総合支援事業(以下、「改革支援事業」)」や経常費補助金の「教育の質に係る客観的な指標(以下、「教育の質指標」)」をはじめ、補助金は設問に対し、各部門や部署をまわり根拠資料をそろえます。

そのうえで問われている事項について行っていれば実施していると回答します。

 ただ補助金の業務、特に改革支援事業や教育の質指標に関する業務が初めてだと、設問を読み解くだけで一苦労です。

 

今回は、初めて改革支援事業や教育の質指標に関する業務をやる、もしくは今後行うかもしれない人を対象に、申請の根拠資料を集め確認する際の留意すべき点についてをまとめました。

 

基準時点の確認

平成30年度の改革支援事業は基準時点が設問によって異なります。例えば昨年度内に行った事業(シラバス作成に関するFD)である事といった条件もあれば、平成30年9月末現在という条件もあります。

 

例えばIR担当者が研修に行く際に基準時点内に2回以上行っていればいいですが、基準時点内に1回と平成30年10月1日にいった研修の根拠資料をそろえても、IR担当者が基準時点内に定期的に研修に行っているかには該当しません。(下の最後の行のケースですね)

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根拠資料の判断

どのような根拠資料をそろえればいいかは、各設問の「根拠資料」欄に例示が出ています。ただ、この例示すべてを真に受けると「〇〇の規程」とあるのに「本学は規程がない、規程を作らないといけない」と暴走する人がいます。 

根拠資料の例示には最後に「等」が必ずついています。決して、例示されている根拠資料をそろえろというのではなく、「該当する設問をやっている根拠資料としてこんなものが考えられます」という意味です。

該当の規程はなくとも、申合せがあったり、実施要領があるかもしれません。

ただ留意すべき点として、大学側は設問に書かれている内容をやっている事を示すために根拠資料をそろえますが、外部からの監査や検査があった時に根拠資料が適切かどうかが判断するのは先方です。

自分達が、自分たちの持っている常識でこの根拠資料は正しいと訴えても、ダメなものはダメなので、監査や検査をする側がどういう判断をするかも考えながら、根拠資料を揃える必要があります。決して、「ちょっと根拠資料がここは弱いけど該当しているで出してしまえ」と無理はしてはいけません。万が一、某所から検査が入って「この設問は該当しませんね。はい、補助金返還ね」と言われたら一大事です。

 

接続詞に注意する

よく間違えやすいのは、並列なのか選択なのかです。

並列だと「また、および、ならびに」といった表現があります。一方、選択だと「または、あるいは、もしくは」といった表現がありますね。 

「A及びBが必要」とあればAとBの両方の根拠資料が必要ですが、「AもしくはB」であればどちらかの根拠資料を揃えればいいと読み取れます。

 

改革支援事業タイプ1を担当する場合は教育の質指標の設問も必ずチェック。逆も同じ。

教育の質の指標は、平成29年度の改革支援事業タイプ1の設問内容になっていますが、平成30年度の改革総合支援事業のタイプ1の基礎要件になっているとも言えます。 

つまり共通に使える根拠資料が沢山あります。大きい大学だと、改革支援事業と教育の質指標は担当が別々という事も聞きますが、担当外の所まで見ておかないと根拠資料を二重に揃える事になり、申請の負担が過大になる可能性があります。

また改革支援事業の設問やQ&Aでは解釈が難しいけど、教育の質指標を見ると解釈が載っているケースがありました。例えば平成30年度でいうとアセスメントポリシーの解釈ですね。

 

終わりに 

最近の改革総合支援事業と教育の質の指標については、近年は情報戦になっていると感じています。他の大学はどのような根拠資料としているか、どれぐらいの点数なのかといった情報を集め、自大学の戦略はどうするかといった事を考えないといけません。

この辺りはSNSやインターネットでは出てこない情報ですね。

もちろん補助金を取る為だけの教育改革はあまり意味がありませんので、大学としてどのような判断をするかもきちんと考える必要があります。

大学の情報公開の現在までとこれから~法令と補助金の視点から~

大学は、自身の透明性を確保する為、また説明責任やステークホルダーに情報提供する為に情報公開を行っています。この情報公開について平成30年度は大きな変革が進みつつあります。

 

そこで、情報公開に係る近年の法令改正や高等教育政策の中での議論を踏まえ、今後の大学の情報公開について取り上げます。

 

 

1.大学の情報公開に関する法令の改正

大学の情報公開は、2011年度までは大学設置基準第2条により次のように定められていました

第2条

大学は、当該大学における教育研究活動等の状況について、刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によつて、積極的に情報を提供するものとする。

ここで定められていたのは、情報を積極的に提供する事のみとなります。

 

情報公開に関する学校教育法施行規則等の一部の改正

2010年6月に学校教育法施行規則の改正に関して通知が出されました。

学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(通知):文部科学省

 

ここでは「大学等が公的な教育機関として,社会に対する説明責任を果たすとともに,その教育の質を向上させる観点から,公表すべき情報を法令上明確にし,教育情報の一層の公表を促進すること」を目的として、情報公開に関して第百七十二条の二が加えられてます。

第百七十二条の二

大学は、次に掲げる教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとする。
一 大学の教育研究上の目的及び第百六十五条の二第一項の規定により定める方針に関すること
二 教育研究上の基本組織に関すること
三 教員組織、教員の数並びに各教員が有する学位及び業績に関すること
四 入学者の数、収容定員及び在学する学生の数、卒業又は修了した者の数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況に関すること
五 授業科目、授業の方法及び内容並びに年間の授業の計画に関すること
六 学修の成果に係る評価及び卒業又は修了の認定に当たつての基準に関すること
七 校地、校舎等の施設及び設備その他の学生の教育研究環境に関すること
八 授業料、入学料その他の大学が徴収する費用に関すること
九 大学が行う学生の修学、進路選択及び心身の健康等に係る支援に関すること
2 大学は、前項各号に掲げる事項のほか、教育上の目的に応じ学生が修得すべき知識及び能力に関する情報を積極的に公表するよう努めるものとする。
3 第一項の規定による情報の公表は、適切な体制を整えた上で、刊行物への掲載、インターネットの利用その他広く周知を図ることができる方法によつて行うものとする。 

この法令改正では、大学はどのような情報を公開するのかが定められ、クローズドではなくインターネットなどのオープンな場で情報公開する事が義務付けられました。

 

併せて、大学設置基準第2条の「情報を積極的に提供する事」は削除されています。

 

この法令改正に合わせて、各大学はホームページに「情報公表」や「情報公開」のページを作り、毎年度の5月1日の数字や昨年度の状況について情報を公開しています。

 

2010年の時に話題になったのは「卒業又は修了した者の数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況に関すること」、つまり就職率を公表をして大学の受験生の募集活動に影響を与えないかの不安がありました。

 

ただ、現在は就職率の公表は当然のようになっていますね。それで就職率ランキングが作られるという事もありますね。情報が独り歩きをしてしまうのは、大学としは困った状況でもあります。

 

「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」での情報公開

2017年度に文部科学省中央教育審議会大学分科会制度・教育改革ワーキンググループで教育の質保証の観点から情報公開について議論がされました。

 

ここでの論点は「質保証と情報公開」であり、学修成果や教育成果の情報公表について議論がされています。これらの議論をうけ、平成30年6月28日に出た「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(平成30年6月28日 将来構想部会)」では教育の質に係る情報公開について述べられています。 

今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(平成30年6月28日 将来構想部会):文部科学省

 

この中間まとめの中では、学修成果について「大学教育の質の向上に係る情報を積極的に把握・公表していくことが重要である」とされています。併せて次の項目が例示されています。

【参考①】把握・公表の義務付けが考えられる情報の例
(学修成果・教育成果の可視化に係る情報)
単位の取得状況、学位の取得状況、進路の検討状況等の卒業後の状況(進学率や就職率など)、学修時間、学生の成長実感・満足度、学生の学修に対する意欲等

(大学教育の質に係る情報)
入学者選抜の状況、修業年限期間内に卒業する学生の割合、留年率、中途退学率、教員一人当たりの学生数、学事暦の柔軟化の状況、履修単位の登録上限設定の状況、授業の方法や内容・授業計画(シラバスの内容)、早期卒業や大学院への飛び入学の状況、FD・SDの実施状況等

【参考②】把握や活用、公表の在り方について一定の指針を示すことが考えられる情報の例
(学修成果・教育成果の可視化に関する情報)
・アセスメントテストの結果、TOEICやTOEFL等の学外試験のスコア、資格取得や受賞、表彰歴等の状況、卒業論文・卒業研究の水準、留学率、卒業生に対する評価等

(大学教育の質に係る情報)
・ナンバリングの実施状況、履修系統図の活用状況、GPAの活用状況、IRの整備状況、教員の業績評価の状況等

ここでは、公開の義務付けが考えられる情報例と指針を示す情報例が示されています。前者は今後、法令等で情報公表について義務付けがされていく事も考えられるでしょう。ただ教員一人当たりの学生数などは、既に学生数と教員数が公表されていますので、計算すればいいような気もします。

 

また各大学は、これらの情報について既にホームページなどで公表しているかを確認し、学校基本調査などを活用しながら 、情報公開について備えていく必要があります。

 

2.大学の情報公開や補助金との関連

 大学は、法令による義務付けに対応する為、各大学のホームページで情報を公表しています。また「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」(以下、「中間まとめ」)では、公開が義務付けらが考えられる情報について提示がありました。

 

ただ平成30年9月上旬の時点で気になる2点があります。

  • 大学の教育情報の公表・活用のための共通的な仕組みである大学ポートレートの公表項目に入っていないかどうか
  • 補助金等による設問で示されている情報の公表はどうか

 

補助金等による設問とは、特に平成30年度の私立大学等改革総合支援事業のタイプ1の「教育の質的転換」や、私立大学等経常費補助金の「教育の質に係る客観的指標」に情報の公表に関する記載があります。 

 

           <過去関連記事>

www.daigaku23.com

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ようやく本題ですが、そこで中間まとめで示されている情報公開項目の例示を次の項目と対応させました。

  1. 現在の学校教育法施行規則の情報公開項目
  2. 大学ポートレートの公表項目、
  3. H30私立大学等改革総合支援事業タイプ1の設問内にある情報の公表を求めている内容
  4. H30 私立大学等経常費補助金の「教育の質に係る客観的指標」の設問内にある情報の公表を求めている内容

 

把握・公表の義務付けが考えられる情報の例について

大まかではありますが、中間まとめで示された把握・公表の義務付けが考えられる情報の例を次のようにまとめました。

3の私立大学等改革総合支援事業タイプ1の△は設問に回答するための前提条件の為に、△と標記しています。

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既に、「学修成果・教育成果の可視化に係る情報」については、中間まとめでの例示は、平成30年度の補助金の中に含まれている事が分かります。

 

改革総合支援事業のタイプ1を申請するかなりの大学は、これらの項目について情報公表の対応ができている大学もあるのではないでしょうか?

 

一方、大学教育の質に係る情報については、既に法令や大学ポートレートで公表されているものもあるでしょうが、留年率や退学率など、大学側が公表を渋る情報もありますね。

 

ただFDやSDの状況は、情報公開より、大学の活動報告に載せている場合もある気がします。

 

把握や活用、公表の在り方について一定の指針を示すことが考えられる情報の例

情報の把握や公表について義務付けではなく、在り方の指針についてです。こちらも先ほどと同じように改革総合支援事業は、設問に対し情報の公表が前提になっているものは△、設問になっているのは〇にしています。

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把握や活用、公表の在り方について一定の指針を示すことが考えられる情報の例については、学修成果・教育成果の可視化に関する情報は、改革総合支援事業や経常費補助の教育の質の客観的指標とだいぶ重複しています。

 

一方、大学教育の質に係る情報は、改革総合支援事業で一部のみです。

 

情報の公表に関するH30.9時点の状況とまとめ

中間まとめでは、教育の質に係る情報についての公開及び項目の例示がありました。しかし、実は平成30年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1と経常費補助の教育の質の客観的指標にはいくつか情報公開をする項目が含まれ、公開しなければ補助金を取るための点数が取れないようになっています。

 

これらの補助金に対応している大学は「大学教育の質に係る情報」の項目についてどうするかと検討していけば良さそうです。 

 

ただ、昨年度と今年度の改革総合支援事業や経常費補助を見ていると、教育の質に係る情報を公表しないと、補助金を取るための点数がマイナス扱いになるとかもありえそうな気がしてなりません。

平成31年度文部科学省概算要求等から見る私立大学等改革総合支援事業

平成30年08月30日に文部科学省のホームページで概算要求の発表資料が掲載されました。

2019年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧(2018年8月):文部科学省

 

事前にニュースにあった通り、私立大学研究ブランディング事業は今回ありませんでした。

 

さて、概算要求を見る限り、来年度も私立大学等改革総合支援事業(以下、「支援事業」)はあるようです。そこで概算要求の発表資料から、支援事業がどう変わるかを見ていきます。

 

2017年度から2019年度の私立大学等改革総合支援事業

まずは2017年度(平成29年度)から2019年度(平成31年度)までの支援事業のタイプの変更の流れを図にしました。

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なお、平成30年度から平成31年度は私の見立てですので、公式な資料に掲載はされていません。さて、今回の概算要求では、大きな変更点がいくつかあります。大きくは平成30年度まであったグローバル化に関するタイプの消失ですね。

各タイプの名称の内容の変更や追加

今回、いずれのタイプでも名称が変更されています。この名称の変更により内容がどこまで変わるかは現状では分かりません。ただ資料を見る限りはタイプごとに次の点が気になります。

タイプ1【特色ある教育の展開】

学修成果の可視化に基づく教育方法の改善

・文理横断的な教育プログラムの開発

タイプ2【特色ある高度な研究の展開】

・これは概要を見る限りは平成30年度のタイプ3の大学の分野連携の研究部分のみが含まれているようです。

・社会的要請の高い課題解決に向けた研究

・研究を基軸とした特色化・機能強化(もしかするとブランディング事業の継承でしょう?)

タイプ3【地域社会への貢献】

・概算要求段階だから記載していないかもしれないが、プラットフォームについてスタートアップ型と発展型がないですね。もしかして、区分けがなくなるのでしょうか?(平成30年度予算の概算要求には区分けは記載されている)

今年はタイプ5のプラットファームの申請を見送って、次年度にスタートアップ型で申請しようとしていた地域もあったかと思います。

・地域と連携した教育課程の編成

タイプ4【社会実装の推進】

・概要を見る限りは、平成30年度のタイプ3「産業界との連携」を変わらないのではと思います。

 

私立大学等改革総合支援事業の選定予定校の減少

選定校数については、教育の質に関わるタイプ1が年々減っているのが顕著です。

 

しかし、産業界との連携や社会連携は選定予定校数は増えています。

 

さて、平成31年度の支援事業に関する事で非常に気になるのは、今年から実装された一般補助の教育の質に係る客観的指標ですね。

今年、取り組みが多かった設問について一般補助へ流れていくのであれば、大学によっては補助金が減る可能性もあります。(特に大規模大学でしょうか?)

 

資料には「教育の質保証や経営力強化に向けたメリハリある配分を本格導入する。」とあります。またタイプ1が次年度メジャーアップデートするのであれば、今年はあって来年は支援事業から消える設問は一般補助にまわされる可能性もあります。

 

そうすると今年度の支援事業のタイプ1は、申請をしない大学であっても、準備はしておかないと一般補助が多少減る可能性もあるでしょう。

 

国は、大学の改革の取組度合いによって補助金を変える政策誘導が近年行われています。ただ今までは私学からすると+αのイメージでした。しかし、これからはやらないと取れるはずの補助金がなくなるという事態になるかもしれません。