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面倒見の良さと入学前教育に関する私見

 先日、教育学術新聞を読んでいた時に倉部史記氏が寄稿された記事の進路指導に関した記事で「面倒見の良さ」について言及されていました。(該当の記事は、教育学術新聞の2月28日号か、倉部氏の公式サイトを参照して下さい)

kurabeshiki.com

 この記事については自分も共感するところであり、何を持って、何をみて「面倒見が良い」とするかは疑問を持っている所です。ただふと思いついたのは入学前教育との関連はどうなのだろうと思っています。 

 

 そもそも入学前教育は、例えば9月にAO入試などで合格した高校生が勉学以外に興味関心を持ち、主に2月に行われる一般入試を受ける高校生に影響を与えないように課題を出すとか、大学への適応のための取組といった意味があります。(ただ入学前教育は、リメディアル教育や初年次教育といった意味を持たせたり、各大学や学位プログラムによって異なるかと思います)

 また、文部科学省が2017(平成29)年7月に発表した「高大接続改革の実施方針等の策定について(平成29年7月13日)」の中の「大学入学者選抜改革について」において入学前教育の課題と対応について下記のように言及しています。

 <参考>

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/07/__icsFiles/afieldfile/2017/07/18/1388089_002_1.pdf

【課題】
○ 入学前教育については、既に平成23年度実施要項から「各大学は、入学手続をとった者に対しては、必要に応じ、これらの者の出身高等学校と協力しつつ、入学までに取り組むべき課題を課すなど、入学後の学習のための準備をあらかじめ講ずるよう努める。」旨盛り込んでいる。
○ 大学で入学前教育を実施する割合は「AO入試」で69%、「推薦入試」で86%となっており、何らかの形で高等学校と連携する割合は「AO入試」で99%、「推薦入試」で33%となっている。 しかし、早期の合格後の学習意欲の維持は、高等学校・大学双方において大きな課題となっており、高等学校における適切な指導と併せ、入学前教育の実質化を図る必要がある。
【対応】
① 入学前教育について、特に12月以前に入学手続をとった者に対しては、「積極的に講ずる」ことを実施要項に盛り込む。各高等学校においても、大学と連携し学習意欲を維持するための必要な指導を行うよう努める
② 学校推薦型選抜の場合、高等学校による推薦段階だけでなく、合格決定後も、推薦を行った高等学校の指導の下に、例えば、入学予定者に対して大学入学までの学習計画を立てさせ、また、その取組状況等を高等学校を通じ大学に報告させるなど、高大連携した取組を行うことが望ましい

 ここで述べられているのは学習意欲や高校と大学の連携が主となります。ただ入学前教育に関する事例や論考を見る限りはあまり高校と大学の連携を主眼に述べられているものは少ないようです。(入学前教育の事例や、1年次の成績や中退などを比較した成果などの論考などは多く見受けられます)

 さて、話は戻りますが「面倒見のよい大学」に関する印象と入学前教育の実施や内容は関係性があるのではと思っております。これは私見ですが、入学前教育は生徒から大学がどのように関わっているか、面倒をみているかを直接聞くチャンスが多いわけです。また現在進行中の取組を各生徒聞いていれば他大学との入学前教育の比較も容易に可能です。

 一方、入学前教育については例えば次のような不安や疑問もあります。

・高校と大学の連携が可能か?高校側は大学に全てをお願いして報告だけが分かればいいなど、互いのニーズ等がマッチしているか。

・アドミッションポリシーとの関連や関係はどうであるか。

・募集だけではなく、カリキュラムや初年次教育との連結はどうなのか。

 (募集活動は募集部署で、入学前教育は別の部署が担当し、それぞれの考えが共有されずに入学前教育が実施されていないか)

 

 もうすぐ高大接続改革の大波がきて、入試制度が変わります。その際は、入試のみならず、募集~入試~入学前~初年次教育やカリキュラムといったトータルコーディネートをしなくてはならないと思っています。さらにそのコーディネートも、大学として一括ではなく、高校ごと、もしくは個人ごとに行う必要もあるかもしれません。働く上で忙しいこともあり、自分の仕事だけを見るのはやむをえないかもしれません。しかし、募集だけではなく入学前やカリキュラム、入学前教育だけではなく募集や初年次教育といったように隣接・関連のところもきちんと踏まえておかないといけないと思っています。