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IRと大学職員㉔連携IRの可能性

 IRというと「意思決定支援」だけではなく、データを情報へ変換しそれを報告すると事も言われています。

 そもそもかなりの私学においては、私立大学等改革総合支援事業のタイプ1においてIRを担う人を置くか委員会などを置くかで配点され、そこで「学修時間・教育の成果等に関する情報の収集・分析を行い、大学自身が客観的な状況を収集分析した上、学内外に情報の提供が求められてきました。

 そして、今年からはタイプ5の「プラットフォーム形成」において、プラットフォーム形成大学等で共同でIRを実施しているかが問われています。

 このタイプ5の要件としては下記となります。(平成29年度 私立大学等改革総合支援事業(タイプ5)調査票 入力要領より)

本設問における共同で実施するIRとは、大学等の教育改革、教育改善につなげるために、プラットフォーム形成大学等が共同で、大学等の様々なデータを収集・分析し、内外に対して必要な情報を提供するものを指す。この場合の様々なデータとは、学習時間、教育の成果等の教学面に関するデータ等や、その他大学運営に関するデータ(入試、経営、財務等)に関するデータ等なども可とする。
基準時点 平成28年9 月1 日~平成29年10月31 日
根拠資料 協定書、プラットフォームとしての決定がわかるもの、議事録、IR報告書等

 これを見ていると、共同でIRとはどうなのだろうと考えてしまいます。まず大前提として、プラットフォームは県や市町村といった任意の統一地域でのプラットフォームが原則です。つまり、近隣でライバル大学もプラットフォームに入る事もある訳です。

 ライバル大学に教育成果や特に大学運営に関する情報をお互い公表できるのでしょうか?(まあタイプ5が将来、大学合併を見越しているという解釈なら、公表しても差し支えないだろうと思うのですが。)

 さてようやく本題です。あくまで私見ではありますが、連携してIRを行う場合、どのような疑問や問題が考えられるかをメモしてみました。

 

○IRを連携して行う意味や目的は何であろうか?

 例えばIRコンソーシアムでは、共通の学生調査を行い、共通のデータベースにデータを入れることによって、自大学の学生が他大学と比較してどうであるかといった事が把握できます。例えばこれは、大学の点検評価や認証評価、さらには強み弱みを見ることができます。ただ連携して行うという事は、比較するのか?、それとも学生数が少ない大学同士(もしくは共通の学問分野)でデータを合わせてモデル構築や分析集計を行うのか外部からの評価に活用されるのかというように、何を目的とするのかを予め明確にしておく必要があります。

 

○どのレベルのデータや情報を使って、IR活動を行うのか?

 大学は情報公開が義務化されていますので、学生数といった定められたデータや情報は大学ホームページ等において公開されています。おそらく既に公表されているデータであればあまり問題にはならないのではないかと推察します。

 問題は、例えば教学システムから出したローデータを扱うといった場合です。この場合は、①どこがデータを扱うのか?、②どのようにデータが使われるとともに適切な保管管理をするのか?、③学生には予め承諾を取る必要があるかといった懸念点があります。また学部によっては、その領域の個人情報や倫理の考え方により、学生情報を使う事は難色を示す所もあるでしょう。

 いずれにせよ、どのようなデータを扱うかによっても、大学間で契約書などを交わしておいたほうが無難なのではと思います。

 

○データ定義はどうなのか?

 学習時間と例示されていますが、各大学は何をもって学習時間を見ているのでしょうか?他にはGPAをとっても、GPAの算出方法がもしかしたら異なるかもしれない中で、出たデータや情報を複数大学で1つにまとめて、集計・分析はいかがなものか・大丈夫なのかと思います。同時にデータの精度も問題になるでしょう。

 

○そもそもデータはきちんと集まるのだろうか?

 IRを担当している方を話をすると、データは学部事務が握っていて、都度、データをリクエストする必要がある場合も聞きます。既にデータが一元管理されていたり、データベースが整備されていればいいのですが、適切な時期に適切なデータが集まるのかは疑問ではあります。

 

 どうもデータや情報を、取り合えずゴミ箱に入れて、出てきたデータを報告書にまとめる。つまり、作業をやり報告書を作成した事に意味があり、報告書は何も使えないという事にならないようにしないといけないのではと感じます。

 また、IRを共同でやる事が目的ではなく、そこから見えてくるものを各大学がどう活用するかが重要であって、とりあえず分析する事は、補助金エビデンスにしかならないのですよね。そして中には、そこのコストが大幅にかかって、改革総合で補助金がプラスされても、あまり意味がないという状況も想定できる訳です。

 連携してIRを行うというよりは、まずは各大学の教育研究を踏まえ、何ができるかを探っていく、そして共通の調査の実施やデータ定義などすり合わせをしていきながら、徐々に意味のある連携出来ていくのだと思います。