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大学基準協会 平成28年度に受審大学の評価結果報告書から見る指摘事項について

 大学基準協会のホームページで、平成28年度の評価結果報告書を見る事ができます。

今回、その報告書に目を通していて、気になった指摘事項のメモを公開します。

 なおこのメモについては、努力が求められているものだけではなく長所となりうるものも一緒に記載しています。

理念目的 ・学生に対して、全ての新入生に建学の精神と創設の気概を記した『~~~~』を配布
・建学の精神や目的を学生が理解している(卒業生アンケートから確認)
教育研究組織 ・全学共通教育センターでの、全学の共通教育及び学部の壁を越えた融合教育が展開。専門教育と有機的に結びついた体系的な教育の実現を図るものである
教員・教員組織 ・教員の教育研究業績に関しては、過去5年分の業績の一覧が発刊されているので、今後は、それを適切に評価し、教育・研究活動の活性化に努めていくことが望まれる。
・各学部・研究科で専任教員の定期的な業績評価は行われていない。
・FDが1年に1回程度で学内研修会のみである。
・業績評価はHPで公表するに留まっている
・教員評価システムは教員の意識を高めることに有効に機能しているが、教員評価の結果を本人に知らせない場合があることから、運用方法の検討を期待したい
・博士の学位を取得している教員数は、大学全体の半数(単位修得満期退学含む)であり、さらなる教員の資質向上に努めるよう改善が望まれる
助教の資格基準に学校教育法で助教に求められている知識能力に関する内容が定められていない
・「全学共通カリキュラム」を中心に担う教員を配することで、学科専門教育とのバランスに配慮した教員編成としている
・教員の教育研究活動の業績について、「教育研究活動状況調査」を実施し、学部長が全体を総覧し、問題があれば専攻主任及び学長が注意・指導を行っている
教育内容・方法・成果 ・各学科のDPに、課程修了にあたって修得しておくべき学習成果が示されていない
・1年間に履修登録できる単位数の上限が設定されていない。
・学士課程の全学共通科目のうち、日本語表現、言語活用、コンピューター活用の各科目は学生の能力・意欲に応じて、高いレベルの内容を履修できる体系性を備えた仕組みになっている。
・ボランティア活動や国内外のインターンシップから構成される「体験教育科目」
・○○大学とのダブルディグリー制度(相互派遣をし、毎年ダブルディグリー取得者を輩出している)
・CAP制度が上限50単位以上
・「成績評価の適正・厳格化と本学における新ガイドライン」の策定と、成績分布に関する一定の目安の提示。
シラバスのチェックについて、教員によってばらつきが見られる為、チェック体制の充実を図るように改善したい
・大学院でリサーチワークとコースワークが組み合わされているといえない。
・全学FDと学生FD団体との連携。(学生FD団体との意見交換会で意見聴取を行う)
・学期ごとに行う「学習成果実感調査」(授業評価アンケート)で自身の成長を振り返ることができるようにしている。
・教育目標・年次ごとの到達目標と科目群を対応させたマトリックス型にカリキュラムを編成することで、科目ごとに涵養する技術能力を明確にしている。
・○○学科において(授業アンケート・在学生意識調査)、シラバス通りに授業が展開されているとの回答率が他学科に比べて低かった。
・成績評価方法において「出席」が含まれている科目がある、また不明瞭な科目や記載内容に課題がある。
・各学部の4年次や転入・編入学生等に1年間に履修登録できる単位数の上限が設定されていない
・PBLやサービスラーニングをコア科目として実施、サービスラーニングターム制度の創設
・学生の主体的学習の促進と学外でのさらなる学びのサイクルの実現と、卒業時での学生の修得した力の実感
・「共愛コモンルーブリック」を用いて、学習成果を可視化するためのシステムの運用
・GPAによるCAP制度上限引き上げについて、学生の大半が基準をクリアしている
・卒業生を対象に「学修成果アンケート(卒業生満足度アンケート)」を実施
・授業アンケートの結果をもとにした授業改善報告書の提出が義務化されていない。授業改善に結びついているか把握できていない
・時間割の関係等で自校の開講(必修)科目を履修することが出来ず留年となることを防ぐため、再履修として放送大学の科目履修を通じて単位を認定していることは適切ではない
・手引には再試験は行わないとしているのに、実際には実施しており、学生の混乱を避けるために方針を明確にする
・日本語リテラシー科目(必修)で担当教員が大学独自の「担当者指導要領」に基づいた統一的な指導により、各クラスが均質的な授業内容を実施することで、大学教育に必要な日本語運用能力を涵養している
・日本語リテラシー科目の履修後の経過調査を通じて、科目の成果を検証し、指導要領の改善に努め、積極的な教育内容の改善・充実を行っている。
・○○学科において、上限は48単位であるが、一部(12単位)を制限対象から除外している
・FDワークショップでは、グループディスカッションだけでなくロールプレイを取り入れるなど、教員が学んだことの理解を定着させるための工夫がなされている。
・成績評価・単位認定は全学で統一した基準で実施、また学部長は成績評価の分布状況の確認し、明らかな偏りがある場合には成績評価の見直しを求めている。
・大学の建学の理念、教育理念、教育精神に基づくユニバーシティ・アイデンティティ科目(全学部、選択必修科目)
シラバスの全学統一と、作成の手引きの配布、確認体制による教育の質保証
・すべての博士論文の「審査委員会」に外部の有識者を加えることを規程化している
・○○学科に試験履修という制度があり、特定の科目群について、不合格であった科目を次年度以降は試験に合格することで単位を認定している。授業を受講せず試験に合格することのみで単位を認定することは適切ではない
・多くの科目でアクティブ・ラーニングを導入している
履修登録の制限は年間48単位だが、夏期集中講義やコンソーシアム互換単位制度の講義科目を対象として上限単位数を超える履修登録を認めている
・教育開発センターで各科目の出席状況、成績、授業評価アンケートをもとに、教育内容・方法について定期的に検証する。また各試験の成績について分析
・PBLをカリキュラムに組み込みなど、学生が主体的に学習するための指導
・成績優秀者(85%以上がS又はA評価、GPAが3.4以上)に対して、所属学系長と相談の上、翌学期に上限を超えて履修することを認めている
・学部によって成績優秀者に該当する学生の割合が多く、CAP制度上限緩和に対して、GPAの基準を見直す必要がある。
・再履修科目や在学中1回に限り、GPAなどに関わらず特別に上限緩和を許可する制度等について別途設定していることは、単位制度の趣旨をふまえ制度の検証のもとでの改善が望まれる。
理工学部情報工学科のルーブリックの活用とコンピテンシー育成
・入学前の既修得単位の認定について、認定する単位数を定めた規程が整備されていない
・授業の上限人数の設定(大教室、中教室、小教室をバランスよく配置している)
・全教員から成績評価報告書を提出させ、これを全教職員に公開し、教員別の優良可及び不可の成績分布を明らかにしている
・学内公募により大学における教育改革の推進を目指した取組みに対して「学長助成金」による支援を行っている
学生の受け入れ ・障がいのある学生の受け入れについては、受験の段階からの規則が設けられていない
学生支援 ・クラスアドバイザー制度により専任教員が一丸となり、保健室や学生支援課等各部署と連携しながら、出欠状況の確認のみならず、学生生活全般の支援を継続して行っている。
・面談等を学生カルテに記載し、情報共有と円滑な引き継ぎを行っている。
・先輩学生(オリター)による新入生に援助・指導を行う「オリター制度」を設け、新入生プログラム、授業や資格取得のサポート、友達づくりの大学生活に関する払拭
・教職協働の学生支援と近年の留年者、休・退学者の割合も非常に低い
・就職先企業における卒業生の評価でも、親和力、協働力、行動持続力などに関して総じて高い評価を得ていることはキャリア支援の成果として、評価できる
・学生アシスタントと協働して取組む、図書館の取組みと学習支援
教育研究等環境 ・設備・備品の補充には優先順位を定めている
・研究倫理教育について、研修制度や取組状況が教員・事務職員ともに不十分であり、大学院生に対しては呼びかけのみで、受講状況の把握も行われていない
・「施設設備の中長期更新、改修計画に基づく事業の推進」「キャンパスアメニティ向上等のための施設設備の更新」「情報インフラの全体最適化による教育・研究活動及び学生生活の支援」の3つを定めている
・専任教員等はいずれも個人研究室が確保されている
・備品等購入用が40万円、学会出張等旅費が20万円まで認められており、予算消化率は90%をこえている
社会連携・社会貢献 ・保健福祉実践開発研究センターにおいて、地域貢献事業研究費を設け、地域社会における保健医療福祉の知の還元に貢献
・学部の特性と活かして地域の専門職の資質向上に貢献している
・学生の課外体験と大学での学びを結びつける工夫としつつ展開している点は教育理念と合致している
管理運営・財務 ・中・長期的な財政計画で年度ごとの進捗状況を点検・評価する仕組みの整備
(中・長期的な財政計画)具体的な数値目標が設定されていない
科研費の実績ややや低調であり外部資金の獲得への努力が必要
・帰属収支差額比率は大学部門では「文他複数学部を設置する私立大学の平均」を上回っているが、法人では下回る状況である(中長期財政計画の策定)
・教職員が委員として過度に重複配置されている
・財政シュミレーションは策定しているが、年度ごとの決算額に基づく最新数値への修正は行っていない
・SDとして、学内での研修に加え、多くの外部研修に参加しており、職員の能力及び資質向上に向けて積極的に取組んでいる
・大学の教育研究を実現するために必要な財政基盤が十分に確立されていない
内部質保証 ・大学運営委員会と自己点検・評価委員会の役割分担が明確でない、改善のと取組みも充分でない
・HPへの情報公開と、「財政公開デー」を学生ラウンジで開催し、職員による説明を随時行い、学園の財政を周知。
・自己点検・評価委員会の役割分担が不明確であり、委員会の開催が認証評価時のみである
・大学評価委員会のもとに、大学評価推進委員会、組織別評価委員会、分野系評価委員会の3委員会を設置し、多角的な視野から自己点検・評価を行い、各委員会が密接な連絡・調整を実施
・内部質保証を機能させるための「大学内部質保証/点検・評価シート」により各学部等が点検評価を行う

 中には、「何故、この制度をやってるの?」と思うものもあります。そういうものは大学職員は法令や解釈を理解して、調整するべきなんでしょう。

 また認証評価結果の概況や長所については、おそらく近日中に認証評価機関連絡協議会に掲載されるのではないかと思います。

jnceaa.jp

 認証評価結果の報告書に目を通すだけでも、その大学の特色が分かります。今回は大学基準協会のみでしたので、時間がある際に別の評価機関もチェックしていきます。