大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

大学や高等教育関連、法令の解説が中心のブログ

【スポンサーリンク】

SD(Staff Development)の混乱

 「大学設置基準等の一部を改正する省令」(平成28年文部科学省令第18号)が平成28年3月31日に公布され,平成29年4月1日から施行されます。内容としては御承知の通り、SDの義務化に関するもので、次のように記載されています。(大学関連のみ引用しました)

大学設置基準等の一部を改正する省令の公布について(通知):文部科学省

第1 改正の概要
1 大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)の一部改正
大学は,当該大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため,その職員に必要な知識及び技能を習得させ,並びにその能力及び資質を向上させるための研修(第25条の3に規定するものを除く。)の機会を設けることその他必要な取組を行うものとすること。(第42条の3関係)

(一部略)

第2 留意事項
(一部略)

2 対象となる職員について
「職員」には,事務職員のほか,教授等の教員や学長等の大学執行部,技術職員等も含まれること。

3 「機会を設けること」について
(1)  今回の改正は,個々の職員全てに対して一律に研修の機会を設けることを義務付ける趣旨ではなく,SDの具体的な対象や内容,形態等については,各大学等において,その特性や実態を踏まえ,各職員のキャリアパスも見据えつつ,計画的・組織的に判断されるべきこと
(2)  SDの機会については,各大学等が自ら企画して設けるほか,関連団体等が実施する研修に職員が参加する機会を設けることなどが考えられること。

4 「その他必要な取組」について
SDを効果的・効率的に実施する観点から,各大学等において,その実情に応じ,例えば職員の研修の実施方針・計画を全学的に策定するなどの取組を行うことが期待されること。

  まあSDの義務化については、外部セミナーやら大学が集まる会とかで議題になっている訳なんですが、どうもSDについていくつか混乱があるかのように思っています。

それでは何が混乱されているかを少しまとめてみます。(なお、あえて分けておりますが、下記に入れたものはいずれもつながっております)

 

①SDの適切な内容が不明瞭

 「大学設置基準等の一部を改正する省令の公布について(通知)」の中で「教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るための、必要な知識及び技能を習得させ、並びにその能力及び資質を向上させるための研修」とありますが、何をすればいいのかが分からないという声も聞きます。

 各大学の文脈に基づいて、各大学が判断してSDを実施してねと言われているわけですが、一方でSDの内容について国から事例を出してほしいという声があるという事も聞いています。(自分たちで自己点検をしながら策定すべきなのでしょうが、上から言われたものをやったほうが楽なのでしょう)

 

②SDの対象の変更

  今回の義務化により、SDの対象を大学職員としていたものを、「事務職員のほか,教授等の教員や学長等の大学執行部,技術職員等も含まれる」となりました。 

③FDとSDの違いは何か

  FDは教員が授業内容・方法を改善し、向上させるための取組みです。しかしSDが、今回教員も含むとなり、FDとSDの違いを明瞭にしていなかったり、学内で周知していない場合は混乱がおきるようです。

 

④外部のセミナーに出るだけでもいいのだろうか

 これは、判断がつきにくいのですが、「SDの機会については,各大学等が自ら企画して設けるほか,関連団体等が実施する研修に職員が参加する機会を設けることなどが考えられること。」とあります。まず各大学で企画するともありますので、外部の研修会に参加する機会を設ける事は必要ではあるが、大学もそれぞれが必要なSDについて検討していく必要があります。

 

⑤(私立大学は)学校法人本部と大学でSDの考え方が違うかもしれない

 これについても過去記事参照。 

www.daigaku23.com

 

  法人本部の職員の育成(人事制度や自己啓発支援制度)をSDと呼んでいる場合は、同一法人でも定義の齟齬が出てくる場合があります。(1法人1大学であれば、あまり問題ないかもしれませんが、総合学園だと色々問題が出てきそうです。)

 

⑥私立大学等改革総合支援事業におけるSDの取組みに関する設問内容との差異

私立大学等改革総合支援事業のタイプ1「建学の精神を生かした大学教育の質向上」にはSDの実施に関しての設問があります。

④ 昨年度又は本年度に、SDの実施方針・計画を全学的に策定し、以下の取組を実施していますか。

ア 3つのポリシーに基づく大学の取組の自己点検・評価と内部質保証に関するもの  

イ 教学マネジメントに関わる専門的職員の育成に関するもの

ウ 大学改革に関するもの

エ 学生の厚生補導に関するもの

オ 業務領域の知見の獲得を目的とするもの(総務、財務、人事、企画、教務、研究等)

 

(得点)

1 4つ以上実施している。 4点

2 3つ実施している。 2点

3 上記以外。 0点

要 件 等 「SD」とは、大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、その職員 に必要な知識及び技能を習得させ、並びにその能力及び資質を向上させるための研修 のことをいう。また、基準時点内で全学的に実施方針・計画を策定し、かつ実施して いることを要す。 この設問における「厚生補導」とは、学生の人間形成を図るために行われる正課外の 諸活動における様々な指導、援助等のことをいう。 一部の職員を対象として実施している場合でも該当するものとする。

基準時点 平成 27 年 4 月 1 日~平成 28 年 8 月 31 日 根拠資料 実施方針・計画を策定した会議の会議録、SDの開催案内、研修資料、開催記録等

  補助金を得るために、私立大学でこの項目に当てはまる取組みを行った大学も少なくはないかと思います。ただ大学設置基準のSDと少し内容が違うのではと思われるものもありますので、この辺りも少し混乱する原因ではないかと思っています(平成29年度の私立大学等改革総合支援事業はどうなるか分かりませんが…。)

 

SDが混乱する原因等について思いつくものを6点にまとめてみました。まずやらないといけないのは、各大学が構成員にきちんとSDとは、FDとはを明瞭に周知することから始めないといけないのかなと思っています。同時に各大学が教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るために何が足りないのか、もしくはブラッシュアップするには何が必要かを分析していく必要があるのでしょうね。(どうも、今年あたり、企業やらコンサルタントが貴学について分析し、的確なSDプログラムを構築しますと営業が増える気がしてなりません)