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H27私立大学等改革総合支援事業タイプ1 選定結果を見て気になる6点

11月18日に平成27年度私立大学等改革総合支援事業の採択結果が公表されました。

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

今まで本ブログでは私立大学等改革総合支援事業について、様々な視点からの記事がありますが、今回はタイプ1(教育の質的転換)の結果を見て思う事・懐疑的な事について整理してみます。

 

①採択ラインの大幅な上昇

タイプ1の採択ラインはH25は68点、H26は78点、今年度の採択ラインは88点となり、毎年10点アップしています。とは言え、配点はH25及びH26は100点、今年度は106点となっていることは留意が必要です。

②学内にIR担当部署及び専任教職員の設置は選定校で32%

IRの関連の集まりでは、この補助金で私立大学にIR担当セクションが出来始めているという事は聞きます。しかし全体から見るとそんなには多くはないようです。以前、コストについての記事をあげたことがありますが、IR担当者の人件費と天秤をかけたらどうなんでしょうか? 

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 ③選定校では99%が教育の質的転換に関するSDをやっている

選定大学の大部分は取組んでいる教育の質的転換に関するSDですが、実は一部の職員を対象として実施しているものでも「実施している」とみなすことができます。実はハードルがあまり高くはない項目です。

シラバスに準備学習の明記を求めているか

申請校では88%、選定校では99%が出来ていると答えていますが、個人としては非常に懐疑的な結果です。シラバスは原則公表されていまして、きちんと記載されている大学は金沢工業大学などが挙げられますが。シラバスはシンプルな様式の大学は少なくないと思います。

<参考 金沢工業大学シラバス

学習支援計画書の照会

 ただ根拠資料がシラバスの作成要領や教員への依頼文であり、教員へ依頼している事を問われていると解釈できますので、実際にシラバスに書いているかどうかは実は別のようです。事前事後学習をきちんと指示している大学のシラバス様式は一度どのようなものがあるか、調べなければならないなと感じます。

⑤アクティブラーニング型授業の実施

この補助金でいうアクティブラーニングは、学外の特定の組織と連携して課題解決に学生に主体的に関与させることが目的といった解釈のものであり、PBLというほうが近しいです。選定校での実施はH26は50%でしたが、今年度は29%とタイプ1の項目で実施率が下がっている唯一の箇所です。まあPBLは非常に準備や調整に労力がいるものであり、例えば組織が想定する学生像と実際の学生像との乖離があったりします。

⑥履修体系図・ナンバリングは選定校で79%も出来ているのだろうか

ナンバリングは履修体系図がないと実施は難しいとは思いますが、そもそも79%も履修体系図を本当に整備しているのでしょうか?履修体系図は公表していない大学も多いですので確認する術はありませんが、履修モデルや樹形図と混同していないかは不安です。 

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 補助金の説明会で再三言われている事ですが、私学事業団の監査が随時行われていると聞いています。私学事業団の年間計画を見ると次のように記載されています。

大学等の補助事業の実施状況について実地調査を行うとともに申請事務等の指導・助
言を行う。
なお、「私立大学等改革総合支援事業」に係る調査を引き続き文部科学省と協力して
実施する。 

http://www.shigaku.go.jp/files/g_27keikaku270629.pdf

補助金を取ることは私学にとって重要な事である事には間違いないのですが、例えば改革総合支援事業のように項目の解釈次第で得点と出来てしまうこともあり得ます。大学職員は、「適切な方法で確認を行う」という仕事は重要な仕事であると思っておりますので、例えば答申を改めて見直したり、私学事業団に電話して確認を取るといった事が必要です。某省に電話するならともかく、私学事業団に電話することは怖くありません。必要であれば色々問い合わせてみる事も必要です。